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岩谷産業が水素研究設備を一新、極低温と超高圧の環境で国内最高レベルの試験が可能に

2018/08/28
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

岩谷産業は、同社の中央研究所(兵庫県尼崎市)の水素研究設備を更新したと発表した。

岩谷産業は2018年8月27日、同社の中央研究所(兵庫県尼崎市)の水素研究設備を更新したと発表した。中央研究所は2013年4月に開所した研究施設で、開所時に-253℃の環境で試験が可能な「液化水素研究設備」と「超高圧水素ガス研究設備」を導入している。しかし、今後の水素ステーション普及に向けて配管などに使う金属材料など安全性の検証や建設コストの低減、水素社会の各種環境整備に向けてさらに高度な評価試験が必要になり、設備更新に至ったとしている。

図 兵庫県尼崎市にある岩谷産業の中央研究所

図 兵庫県尼崎市にある岩谷産業の中央研究所

出所 岩谷産業

今回の設備更新では、「液化水素研究設備」と「超高圧水素ガス研究設備」それぞれの仕様や構成を検討し直し、より高度な試験が可能な設備を導入した。具体的には試験環境が再現できる圧力を最大85MPaから最大135MPaに引き上げ、金属材料の水素に対する脆さ(脆性:ぜいせい)を検証できる「水素適合性材料評価研究設備」を新たに投入した。これで、極低温と超高圧のどちらの環境でも国内最高レベルの試験が可能になった。

新たに導入した試験設備は4種類。1つ目は「熱サイクル試験」の設備。試験対象物質の塊(試験片)を置いた試験設備内の温度を-253℃から常温、さらに-253℃と繰り返し変化させて、試験対象物質が大きな温度変化を受けた後で、どれほど劣化しているかを評価できる設備だ。2018年8月時点で国内では唯一、岩谷産業の中央研究所のみが導入しているものだという。

2つ目は「液化水素浸漬試験」の設備。試験片を長い期間に渡って液化水素に沈めて物質がどのように変化するかを評価できる。液化水素運搬船などに使用する材料の長期信頼性の検証が必要になって導入した。

3つ目は「水素暴露試験」の設備。試験片を設備に投入して設備内の温度を最低で-153℃まで、圧力を最高で100MPaまで高める。その環境に長期間試験片を入れておき、低温・高圧の水素ガスの中で、試験片の歪みや割れの有無を確認できる環境だ。材料に強い力をかけた状態で、金属疲労がどれほど進行するか、水素ステーションの施工時に材料を溶接する際に、どれほどの強さの溶接に耐えられるかを評価する必要があって、新たに導入した。温度―150℃、圧力100MPaで試験が実施できる設備は国内最高レベルのものだ。

4つ目は、「水素脆性評価試験」の設備。高圧低温の水素ガスで満たした環境で試験片をゆっくりと引っ張る。ヘリウムで満たした環境でも試験片をゆっくりと引っ張り、材料の水素に対する脆さを調べる設備だ。水素ステーションの建設コスト低減のために、ステーションの設備に使える新しい、安価な材料を探すために導入した。さまざまな材料をこの設備で評価し、安価で水素に対して強く、溶接部の信頼性も高い材料を探す。この設備も、温度―150℃、圧力100MPaの、国内最高レベルの環境で試験が実施できるものだ。

ほかにはバルブやフレキシブルホースなどの部品に液化水素を流して動作を確認し、部品の性能を検証する設備である「液化水素流通試験」の設備を改良し、従来は一方向にしか液化水素を流せなかったものを、双方向で流せるようにした。また、バルブやフレキシブルホースなどの部品を、水素を満たした環境で加圧減圧を繰り返す「加圧脱圧(インパルス)試験」の設備を改良し、従来は最高で85MPaまでしか圧力を挙げられなかったところを最高で135MPaまで圧力をかけられるようにした。さらに、樹脂材料やシール材を高圧水素環境で加圧し、水素ガスが材料から透過したり、漏れたりしないかを確認する「気密・透過試験」の環境でも、最大圧力を85MPaから135MPaまで高めた。どの設備も、水素ステーションの充填ホースなど、加圧減圧を繰り返す環境でしようする部品や材料の信頼性を確かめるために改良した。


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岩谷産業

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