伊藤忠商事は2018年10月24日、同社が販売している家庭用定置型蓄電池に、AI(人工知能)を活用した遠隔制御に対応する機能を持たせた製品を11月から発売すると発表した。発売する蓄電池は伊藤忠商事が2017年5月から販売している「Smart Star L」(参考記事)。この製品に、AIを利用した運転指示を受け付け、蓄電池を制御するソフトウェアを組み込んだものを販売する。
図 伊藤忠商事が販売する家庭用定置型蓄電池「Smart Star L」。蓄電容量は9.8kWh
出所 伊藤忠商事
各家庭に設置した定置型蓄電池を遠隔制御する技術には、イギリスMoixa Energy Holdingsが開発販売している「GridShare」を利用する。GridShareは、個々のユーザーの電力需要や発電量、気象予報などのデータを学習し、1つひとつの蓄電池の充放電を遠隔地から制御し、蓄電池だけでなく太陽光発電システムの利用効率を高める機能を持つ。ちなみにMoixaは2017年4月、東京電力ホールディングスから50万ポンド(7200万円:1ポンド=144円で換算)の出資を受けている(参考記事)。
図 各種データをAIで分析した結果に応じて、1つひとつの蓄電池を遠隔地から制御する
出所 伊藤忠商事
伊藤忠商事は2018年1月、GridShare用クライアントソフトウェア「GridShare Client」の国内独占販売権を取得し、日本国内の各種仕様に適合させる作業を続けてきたが、この作業が完了したことで、今回の発表となった。ちなみにGridShareとGridShare Clientは、エヌエフ回路社のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)遠隔制御システムで接続し制御信号を送る。
伊藤忠商事の家庭用定置型蓄電池新発売の発表に合わせて、小売電気事業者のTRENDEは、この蓄電池を導入した家庭専用の電気料金プラン「あいでんき」を11月1日から提供すると発表している。提供エリアは東北、東京、中部、関西、中国、九州の各電力会社管内6エリア。あいでんきでは、深夜時間帯を「蓄電タイム」と設定し、電力単価を低く設定する。この時間帯に蓄電池に充電し、ピーク時間帯は可能な限り蓄電池の電力を利用することで、電力コスト低下の効果を実感できるとしている。
伊藤忠商事は定置型蓄電池とGridShareの組み合わせを利用したVPP(Virtual Power Plant)事業や、送配電事業者向けの送電周波数安定化サービス、需給バランス調整サービス、一般需要家間で電力を直接取引(P2P:Peer to Peer)を可能にするサービスなど多様なサービスを展開する方針を示している。