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東北大学と前川製作所、太陽光で発電した電力を蓄電池と水素に分けて貯蔵し72時間連続稼働

2018/10/25
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

国立大学法人東北大学と前川製作所は、「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を72時間(3日間)連続で稼働させることに成功したと発表した。

国立大学法人東北大学と前川製作所は2018年10月25日、「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を72時間(3日間)連続で稼働させることに成功したと発表した。このシステムは蓄電池などを利用した電力貯蔵システムと、水素を貯蔵するシステムを組み合わせたもので、必要に応じて電力を供給し続ける。

図 「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」の概要

図 「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」の概要

出所 国立大学法人東北大学

電力・水素複合エネルギー貯蔵システムでは、電力を水電解装置で水素に分解し、水素吸蔵合金あるいは液化水素タンクに蓄積し、必要に応じて燃料電池を稼働させて電力を出力する。そして、消費電力量と受電量の変動に合わせて、長周期で変動する電力は水素貯蔵システムから供給し、短周期で変動する分は電力貯蔵装置から供給する。電力貯蔵装置では、リチウムイオン蓄電池のほか、電気二重層キャパシタ、SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage:超電導エネルギー貯蔵装置)を使用することを想定している。

今回の試験システムは仙台市水道局の茂庭(もにわ)浄水場(仙台市太白区)に構築した。システムに合わせて電源となる太陽光発電システム(合計20kW)と、模擬的に電力負荷をかける装置(最大20kW)も設置した。試験システムの蓄電機構には電気二重層キャパシタ(出力15kW)を使用した。

図 仙台市水道局の茂庭浄水場に構築した試験用システム

図 仙台市水道局の茂庭浄水場に構築した試験用システム

出所 国立大学法人東北大学

稼働中は、電力貯蔵システムと水素貯蔵システムのそれぞれのエネルギー貯蔵量を常時測定し、どちらもエネルギー貯蔵量が目標範囲内に収まるように制御した。2017年8月から大規模自然災害による長期停電を想定した試運転を繰り返してきた。そして今回、72日間(3日間)の連続運転に成功した。太陽光発電システムや消費電力が不規則に変動する環境でも、品質が高い電力を長期間安定供給できることを実証できたとしている。

図 試験用システムの機器構成

図 試験用システムの機器構成

出所 国立大学法人東北大学

東北大学と前川製作所は今回の成果によって、電力・水素複合エネルギー貯蔵システムが実用可能なものになったとしており、今後は大規模自然災害発生時の避難所となっている学校、下水処理場、浄水場、病院、ビルなどでの実用化が期待できるとしている。ちなみにこの研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/非常用電源機能を有する再生可能エネ ギー出力変動補償用電力・水素複合エネルギー貯蔵システムの研究開発」事業の委託を受けて実施したものだ。


■リンク
国立大学法人東北大学
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

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