JXTGエネルギー、千代田化工建設、国立大学法人東京大学、クイーンズランド工科大学の4者は2019年3月15日、水素の貯蔵や運搬の際に必要な有機ハイドライドを低コストで製造し、水素を取り出す技術検証に成功したと発表した。従来、水素を貯蔵、運搬する際は、水素をタンクの貯蔵し、有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH:C7H14)に変換して運搬する必要があった。今回は水(H2O)とトルエン(C7H8)から直接MCHを製造する「有機ハイドライド電解合成法」を使用し、従来に比べて貯蔵と運搬の工程を大きく簡略化した。いずれは、MCH製造に必要な設備にかかるのコストをおよそ50%削減できるとしている。
図 水に電気をかけると電気分解で水素と酸素が得られる(左)。今回開発した特殊な電解セルを使用すると、トルエンと水に電気をかけることで、MCHと酸素を得られる
出所 JXTGエネルギー
有機ハイドライド電解合成法では、特殊な電解セルでトルエンと水に電気をかけることで、MCHと酸素を得る。電解セルはJXTGエネルギーなどが開発した。貯蔵、運搬前に一旦水素を生成する必要がなくなるため、関連する機器を減らし、水素の生成から貯蔵、運搬、販売までの流れでかかるコストを大きく圧縮できる可能性がある。
そして今回の技術実証では、有機ハイドライド電解合成法に必要な電力をクイーンズランド工科大学にある太陽光発電設備で発電した電力でまかなった。再生可能エネルギーを活用し、製造時にCO2を排出しない「CO2フリー水素」約0.2kgの製造に成功した。
今後は、今回実証した手法の普及に向けてさらなる開発を続けるとしている。