Q21:デジタル放送における新しいビジネス・チャンスは?
デジタル放送では、どのような新しいビジネスの可能性が生まれるのでしょうか?
答えるのに大変難しい質問です。もし新しいビジネス・アイデアがあったとしても、それを公にすることは、他人にビジネス・チャンスを無償で与えることになります。ですから、事実上、この質問に答えることは困難です。しかし、いくつか思いつくままに挙げてみましょう。
デジタル放送は媒体を選びません。それゆえ、新しい媒体を利用した放送サービスが可能になります。携帯電話で地上デジタル放送を受けることはすでに現実のものとなりつつありますが、その他の媒体や端末はどうでしょうか。PDA(Personal Data Assistants、携帯情報端末)はどうでしょうか? ウェアラブル・コンピュータはどうでしょうか? カーナビ装置はどうでしょうか? その他にもたくさんあるはずです。
≪1≫ターゲットとなる消費者のみに流すCM
蓄積型放送もしくはサーバー型放送を利用して、視聴者に応じてコマーシャルを入れ替えるというのはどうでしょうか。例えば、自分が住んでいる近所に某スーパーマーケットがないのに、某スーパーマーケットのコマーシャルを見るのは無駄なことですし、その宣伝を流している某スーパーマーケットにとっても無駄な行為です。
商品を買ってくれそうな人にのみ、集中的にそのコマーシャルを流すほうが効率が良いでしょう(図1-5)。そうなってくると、従来のテレビ局を支えてきたコマーシャルによる無料視聴のビジネス・モデルはどうなるのでしょうか。そもそも、コマーシャルによる無料視聴ビジネス・モデルというのは、私達にとってありがたい番組提供方法なのでしょうか。
コマーシャルにかかる費用は結局のところ、商品を買う人が負担しているわけです。しかも、商品を買う人は、商品を絶対買わない人に対して流されているコマーシャル分の料金も負担しています。これが、唯一の無料放送のビジネス・モデルでしょうか。
≪2≫シームレスな視聴環境
通信と連携するサービスを考えると、さらに幅が広がるはずです。ここで言う通信は、もちろん、インターネットです。インターネットによるコンテンツ配信と、電波による放送配信を継ぎ目なく行うことができるでしょうか。例えば、通勤電車内で携帯電話を利用して視聴していたコンテンツを、家に帰った時には自宅のテレビに継ぎ目なく映せるでしょうか。あるいは、その逆はどうでしょうか。
この他にも新しいビジネス・アイデアはたくさんあるはずです。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(下)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。