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再エネ水素を需要家敷地で製造、岩谷産業ら3社

2030年の事業開始目指し年1600トン供給
2025/10/03
(金)

水素のオンサイト型モデルを2030年開始へ

 岩谷産業株式会社(以下、岩谷産業)、豊田通商株式会社(以下、豊田通商)、株式会社ユーラスエナジーホールディングス(以下、ユーラスエナジー)の3社は、再生可能エネルギー由来の電力を活用して低炭素水素を、需要家の敷地内で製造・供給する「オンサイト型モデル」事業の構築を共同で進める(図1)。2030年頃の事業開始を目指す。2025年9月30日に発表した。

図1 岩谷産業、豊田通商、ユーラスエナジーによるオンサイト型低炭素水素製造供給事業のスキーム

出所 岩谷産業株式会社 ニュースリリース 2025年9月30日、「豊田通商、ユーラスエナジー、岩谷産業が愛知製鋼にてオンサイト型低炭素水素製造供給事業開始を検討」

水素社会推進法を活用し、製造コストの課題克服へ

 岩谷産業、豊田通商、ユーラスエナジーの事業は、愛知製鋼株式会社(以下、愛知製鋼)の知多工場の敷地内に水電解装置を設置する。同装置には、トヨタ自動車株式会社製のスタック注1を用いた千代田化工建設株式会社が製造・販売するものを採用する予定である。ユーラスエナジーが所有する風力発電所の電力を利用して水を電気分解し、オンサイトで低炭素水素を製造・供給する。

 製造した水素は、愛知製鋼の鋼材加熱炉の一部で現在使用されている都市ガスの代替燃料として活用される。これにより、製造工程の二酸化炭素排出量を削減するという。

 3社は2027年3月に合同会社を設立し、設備の設計・設置を進める。2030年を目途に事業を開始し、年間約1600トンの水素を製造・供給する体制を構築する計画だ。

 同事業は、中部圏で水素/アンモニアの社会実装を進める中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議と連携して進める。また、2024年10月に施行された、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)」に定められる「価格差に着目した支援注2」に認定されている。この制度は、低炭素水素の製造費用と、既存の化石燃料との価格差を国が補填するもの。

 3社は本事業を通じて、オンサイト型低炭素水素製造・供給モデルの構築と、水電解技術の性能と機能の向上に取り組む。


注1:スタック:水を水素と酸素に分解する「電解セル」を多数積み重ねて構成される構造体。
注2:価格差に着目した支援:認定を受けた低炭素水素等供給事業者が、認定計画に従って継続的に供給を行うため、低炭素水素等の価格と既存の原燃料の価格との差額を15年間にわたり国が支援する制度。

参考サイト

岩谷産業株式会社 ニュースリリース 2025年9月30日、「豊田通商、ユーラスエナジー、岩谷産業が愛知製鋼にてオンサイト型低炭素水素製造供給事業開始を検討」
 

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