2015年8月31日、東京都千代田区のアーバンネット大手町ビルにおいて、楽天株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷浩史、以下「楽天」)と丸紅株式会社(本社: 東京都千代田区、代表者 取締役社長:國分文也、以下「丸紅」)による、低圧需要家向けの電力小売事業での業務提携についての記者説明会が開催された。
同説明会では、楽天 エネルギー事業長の菅原雄一郎氏と、丸紅 国内電力プロジェクト部長の福田知史氏が登壇し、同提携の目的と今後のロードマップなどについて説明が行われた。
写真1 楽天 エネルギー事業長 菅原雄一郎氏 写真2 丸紅 国内電力プロジェクト部長 福田知史氏
楽天は2016年4月から始まる電力小売全面自由化後の低圧需要家向け電力小売サービスへの期待の高まりを受け、国内外において電力トレーディングを含む多角的な電力事業経営の実績やノウハウを有している事業者との提携を模索してきた。
一方、丸紅は、全世界23カ国で電力事業を運営しており、総計10GW超の持分発電容量を保有している。国内においては新電力会社として、長野、山梨、福島県などにおける水力発電事業や福島県における洋上風力発電実証事業などの再生可能エネルギー電源の開発推進に加え、火力発電所の保有や新規開発も進めるなど、積極的に自社電源の確保ならびに電力小売事業の拡大に注力している。
両社は2014年10月にエネルギー需要開発の協業を開始して以来、楽天のプラットフォームを活用した電力受給取引拡大や、機能を絞る代わりに低価格で導入しやすくした簡易的HEMS注1の共同開発などに取り組んできた。インターネットサービス大手の楽天と、総合商社であり、かつ日本最大級の発電事業者でもある丸紅との異業種企業間の組み合わせは、電力市場のなかで、自由競争を促進する原動力となる可能性を秘め、需要家に新たな選択肢を提供するものになると判断し、今回の合意に至った。
今後は、2016年4月より、沖縄を除く国内の低圧電力を使用している「楽天市場」の出店事業者や「楽天トラベル」に加盟する宿泊施設などに対して、丸紅が保有する再生可能エネルギー電源などからの電力供給と、「楽天スーパーポイント」やポイントを活用した決済サービス、および簡易的HEMSを活用した新たなサービス開発を進めていく。
楽天の菅原氏によれば、電力需要が集中するピーク時に、電力の使用を控えて需要抑制に協力した事業者に対しては、通常よりも多くポイントを発行するなどのインセンティブを付与し、電力需要のコントロールについても行っていきたいという。
両社は、本提携を通じ、従来の需要家との多面的な関係に基づく新たな電力小売ビジネスモデルの開発に積極的に取り組み、引き続き健全な電力市場の発展に寄与していくとしている。
▼注1
HEMS:Home Energy Management System、スマートハウスにおける中核的な装置で「宅内エネルギー管理システム」と言われる。HAN(ホームネットワーク)に接続され、IT 技術を使用して家庭内に設置された各機器を効率的に運用するための装置。