Teslaは2017年5月12日(米国時間)、バーモント州でVPP(Virtual Power Plant)サービスを開始すると発表した。バーモント州をサービスエリアとする電力事業者Green Mountain Power社(GMP社)と共同の事業だ。GMP社はTeslaの大型の定置型リチウムイオン蓄電池「Powerpack 2」をサービスエリア内に設置し、家庭用定置型リチウムイオン蓄電池「Powerwall 2」をサービスエリア内の世帯に提供する。そして、GMP社のサービスエリア内に設置したTeslaの蓄電池群をネットワークで相互に接続し、1つの大きな蓄電池として扱う。GMP社はピークシフトや、太陽光発電システムの出力変動吸収などを目的として、蓄電池の電力を利用する。
図 Teslaの家庭用定置型リチウムイオン蓄電池「Powerwall 2」
出所 Tesla
GMP社はVPPのネットワークを広げるために、特別な条件でPowerwall 2を提供する。Powerwall 2に蓄電した電力をGMP社が利用しても良いという条件に同意した世帯を対象に、1500ドル(17万1000円:1ドル=114円で換算)という破格の値段で提供するのだ。月々15ドル(1710円:1ドル=114円で換算)ずつの分割払いも受け付ける。この価格で停電時に使える非常用電源が手に入るとなれば、かなり安いと言えるだろう。
しかも、GMP社は各世帯の蓄電池の電力を活用して、電力単価が高い時間は系統からの電力でなく、蓄電しておいた電力を供給することで、電気料金を下げるように制御してくれる。風力などの再生可能エネルギー発電所の接続数も増え、再生可能エネルギーによる電力を安価に利用できるようになる。さらに蓄電池に充電した電力を集めて、ニューイングランド地方(メイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネチカット州)の電力卸売市場で販売し、利益を得る。その利益の一部は電気料金値下げなどの形で、利用者に還元する。
TeslaとGMP社の共同事業は始まったばかりだが、Teslaは世界中の電力事業者、送電事業者などを相手に、Teslaの定置型リチウムイオン蓄電池を活用したサービスを共同で始めるために協議を続けているという。Teslaは、同社の定置型リチウムイオン蓄電池の設置が進めば進むほど、再生可能エネルギーを利用した発電所をより多く系統につなげるようになると予測する。そして、老朽化した送配電設備を低コストで改修でき、その結果送電ネットワークは弾力的な運用が可能になり、消費者は安価な電力を安定して得ることができるようになるだろうとしている。