[ニュース]

ベテラン農家の「経験」や「勘」をデータ化し後進に引き継ぐ、土壌データ収集システムが登場

2017/04/21
(金)
SmartGridニューズレター編集部

SenSproutは、農地の土壌環境を検知し、データとしてクラウドに蓄積するシステム「SenSprout Pro」を発表した。

SenSproutは2017年4月20日、農地の土壌環境を検知し、データとしてクラウドに蓄積するシステム「SenSprout Pro(センスプラウト プロ)」を発表した。5月上旬から順次出荷開始の予定。

図 SenSprout Proのセンサーを設置した農地

図 SenSprout Proのセンサーを設置した農地

出所 SenSprout

SenSprout Proを構成する要素は3つ。1つ目が土壌環境を検知し、データとして無線通信で送出する「土壌センサー」。2つ目が土壌センサーからの無線通信を受け取って、3G/LTE回線でクラウドのサーバーに転送する「ゲートウェイ」。3つ目が、土壌センサーが送ってきたデータを蓄積し、グラフなどの形で見やすく表示したり、事前に設定したしきい値を超えたら警告を出すなどの機能を提供する「クラウドサービス」。

以上3つをセットにして、直販価格は19万9600円(税込;以下同様)。土壌センサーとゲートウェイは単体販売も受け付ける。直販価格はどちらも9万9800円。クラウドサービスはまだベータ版として提供しているので、10月までは無料で利用できる。ベータ版としての提供が終了したら、土壌センサーとゲートウェイの台数に応じた利用価格を設定する。現在のところ、土壌センサー、ゲートウェイ1台につき、月額1000円での提供を予定している。

SenSprout Proはベテラン農家の「経験」や「勘」による作業を定量化した「データ」とすることを目指した商品。農作物の出来を大きく左右する水やりや施肥の頻度は、目に見える土壌や作物の状態で決めていることがほとんどで、その判断には「経験」や「勘」といった説明できない要素が入り込むことが多い。これまでの農家は、ベテランの農家と作業しながら、長い時間をかけて経験や勘を身に付けてきた。

しかし現在の日本では、そのような方法で農業の技術を伝えていくことが難しくなりつつある。農業従事者の高齢化は深刻なレベルまで進み、今では農業従事者のうちおよそ65%が65歳以上となっている。また、農業から離れる人も増えており、農業従事者は減少する一方だ。

そこで、農作業の成果を定量的に説明できるデータがあれば、経験や勘の部分をデータとして次世代に伝えることができる。SenSproutはこのシステムを発表する前に、国内20カ所以上の個人農家や農業生産法人などに試作品を設置して、実証実験を続けてきたという。その結果、ハウスごとに異なっていた作物の収穫量や品質の差をデータで説明することに成功したという。さらに、それぞれ水はけ条件が異なる農場における灌水の効果測定にも成功している。

このシステムで、農場に直接触れてデータを集める役目を果たすのが土壌センサーだ。使い方は簡単。土壌に手で差し込んで、電源を入れるだけだ。電源は単3乾電池2本。最大でおよそ1年の連続稼動が可能だという。

図 土壌センサー

図 土壌センサー

出所 SenSprout

土壌センサーを見ると、土壌に差し込んだときに深さ10cmになる位置と、20cmになる位置にセンサーが付いている。この部分の土壌水分量と、地表付近の気温を測定する機能を持つ。測定した結果は、920MHz帯を使うIEEE802.15.4g無線通信技術でゲートウェイに送信する。ゲートウェイ1台に対して、半径150mの範囲に最大で99台の土壌センサーを設置できる。

そして、この土壌センサーは土壌に差し込む板状の部分を本体から引き抜くことができるようになっている。SenSproutは今後、測定深度や測定点数、測定項目などが異なるさまざまなオプションを発売することを予定している。そのときは、本体から板を引き抜いて、別売りのオプションと差し替えることで、異なる条件、異なる項目を測定できるようになる。

クラウドサービスでは、土壌センサーが送ってきたデータを蓄積して解析し、グラフなどの形で値の推移を確認できるようにする機能を提供する。また、土壌に変化があったときに警告を出す機能もある。このサービスを利用することで、水やりや施肥などの作業をデータを確認しながら進めることが可能になる。さらに、農場を見回る回数を減らして、管理コストを下げることができるというメリットもある。

土壌センサーの土壌に触れる板状の部分には、印刷技術で電子回路を作る「プリンテッドエレクトロニクス」を利用しており、小ロットでも低コストで製造が可能だという。今後は様々な要望に答えるセンサーを投入していきたいとしている。


■リンク
SenSprout

TOPに戻る

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...