BMW Groupは2017年11月24日(ドイツ時間)、ドイツ・ミュンヘンに「BMW Group Battery Cell Competence Centre(蓄電池セル研究センター)」を建設すると発表し、起工式を開催した。2019年初期に開設予定で、それまでにBMW Groupは合計で、2億ユーロ(264億円:1ユーロ=132円で換算)を投資する。
図 BMW Group Battery Cell Competence Centreの完成イメージ
出所 BMW Group
新たに開設予定の研究センターには、BMW Group各社が持つ蓄電池の研究成果を製造ノウハウなどの情報を集中させるとしている。その上で研究を重ね、独自設計の蓄電池セルを開発、試作し、各種試験でその性能をさまざまな側面から検証する。
BMW Groupはこうして開発した独自仕様、独自設計の蓄電池セルの生産を外部業者に委託する方針だ。その際には、製造業者に独自設計製品の設計情報を渡し、生産のみを委託する「build-to-print(ビルドトゥープリント方式)」を利用するとしている。独自設計、独自仕様の高性能蓄電池セルの生産を外部業者に委託して、研究開発の成果を短期間で製品に反映させることで、他社に対して技術的優位を保ち続けることが狙いだ。BMWの取締役会の一員であり、製造現場の責任者であるOliver Zipse氏は「BMW Group独自の研究成果などの知的財産は、私たちにとって非常に大切なものだ。蓄電池セルを自社で製造しても、外部業者に製造を委託しても、知的財産が大切であるという事実は変わらない」とコメントしている。
そして、この研究センターが開発する独自仕様の蓄電池セルは、BMW Groupが現在開発を進めている第5世代の電動駆動機構(ドライブトレイン)の一部となる予定だ。このドライブトレインを電気自動車(EV)に組み込んだら、1回の充電による走行距離はおよそ700kmまで伸びる。プラグインハイブリッド車に載せれば、蓄電池だけによる走行距離をおよそ100kmまで伸ばせるとしている。
第5世代の電動ドライブトレインでは、モーターと変速機に加えて、電力を制御する電子回路(パワーエレクトロニクス)を一体化し、小型化する。ドライブトレインの小型化によって、車両内の設置スペースを節約できる。その結果2020年以降にBMW Groupが発売する新車種すべてに搭載できるようになる見込みだ。さらにこの新しいドライブトレインは、モジュール構成となっており、必要に応じて柔軟に拡張できる。
図 開発中の第5世代電動ドライブトレインの試作品(右)。現行品(左)と比べると明らかに小さくなっている
出所 BMW Group
また、このドライブトレインで採用するモーターは、高価な希少金属(レアアース)を一切使わず、容易に比較的安価で手に入る材料で製造する。BMW Groupはモーター生産のために各所を飛び回ってレアアースを確保する必要がなくなり、安価で大量生産が可能になる。
BMW Groupは開発中の第5世代電動ドライブトレインを実用化することで、増加を続ける電動車両の需要に応えるとしている。そして、2025年には電動車両の需要が年間4~50万台まで増加すると見ているそうだ。
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