京セラの実証実験が目指すもの
表1 京セラのプロフィール(敬称略)
※産業・自動車用部品、半導体関連部品、電子デバイス、コミュニケーション、ドキュメントソリューション、生活・環境/その他、研究開発等
出所 https://www.kyocera.co.jp/company/summary/company_profile.html
〔1〕京セラのプロフィール
産業・自動車用部品や電子デバイスなどの部品事業、ソーラーエネルギー関連やスマートフォンなどの通信端末、通信モジュールを含む機器・システム事業に至るまでグローバルに事業展開する京セラ(表1)は、同社の横浜中山事業所(神奈川県横浜市)に、VPP高度化技術実証に関する実験設備(写真1)を整備し、2019年2月28日から、LO3と共同で実証実験を開始した。
同実証実験は、P2P電力取引プラットフォームを使用した技術検証とブロックチェーン技術の活用を目指したもので、P2P電力取引プラットフォームは、LO3から提供されている。
写真1 京セラ・横浜中山事業所入り口に設置された実証設備(太陽光パネル等)
出所 編集部撮影
〔2〕調整力電源の制御精度の向上を目指す
図1 京セラ・横浜中山事業所内におけるLO3のブロックチェーン技術を活用した実証実験のイメージ(図中の各用語は表2を参照)
京セラは、すでに、2016年度から政府が推進するVPP構築実証事業(2016年度〜2020年度。本誌2019年5月号特集参照)に参加し、VPPに関する実証・研究を重ね知見を深めてきている。
これらをベースに、脱炭素社会に向けて、同社が開発し販売している太陽光発電システムや蓄電池などの製品を活用し、温室効果ガス(CO2)を排出せず、かつ燃料費がゼロであるクリーンなエネルギーを活用した実証事業を推進している。
今回の実証実験では、一般送配電事業者が電力の需給調整などに使用する調整力注1電源の制御精度を向上させることを目的として、IoTセンサーによる家電分離技術注2を用いた制御技術の確立を目指している(図1、各用語については表2を参照)。
また、LO3のブロックチェーン技術(TransActiveGridプラットフォーム)を使って、1対1または1対複数の場合の電力取引における、需要家側リソースの利用実績を管理する技術の有効性なども検証する。
表2 図1の用語解説
出所 各種資料をもとに編集部で作成
▼ 注1
調整力:電力システム(系統)において、周波数(50MHzあるいは60MHz)を安定的に制御する、あるいは電力の需給バランスの調整に必要となる能力(電源)のこと。調整力の調達は一般送配電事業者が担っており、公募によって行われる。
▼ 注2
家電分離技術:ディスアグリゲーション(Disaggregation)技術とも言われる。株式会社エナジーゲートウェイが提供するIoTセンサー(電力センサー。分電盤に設置する)がもつ技術。住宅全体の電気の使用状況から、電子レンジや洗濯機など各家電製品の電気の利用状況を個々に取り出して分析することができる。