実サービスへの課題と京セラのチャレンジ
〔1〕需要家間で相互融通させるデモ環境も構築へ
今回の京セラの実証実験は、蓄電池と連携させたP2P電力取引という、他に例を見ない新しい取り組みである。
同社は、今回の検証により、太陽光発電によって生み出された電気を、需要家間で相互に融通させるデモ環境も構築していくとしている。
さらに、今後は、現在の送配電網を利用して需要家側リソースの取引がどこまで可能か、その利用シーンの拡大にもチャレンジするいう。
しかし、これらを実サービスに展開するためには、現状の日本では、30分値同時同量、託送料金、計量法など法律の改定が必要であることに加えて、新しい電力ネットワークの構築や、P2P市場を誰が管理するのかなど新たな枠組みも決めなければならない。それには、かなりの長い時間と議論を必要とするであろう。
〔2〕新たな可能性へのチャレンジ
「自身で蓄電池を所有(投資)して自己のリソースを有益に活かしたいというポテンシャルの高い需要家の“超プロシューマ”に向けた新しいサービス、例えばそれが、株のトレーディングのように簡単にできるものだったらどうだろう、という発想で、新たなサービスの可能性にチャレンジしているのです」(京セラ株式会社 経営推進本部エネルギー事業戦略室エネルギー事業開発部責任者 草野 吉雅氏)。それには、「図1に示すアグリゲーションコーディネーター(例えば東京電力や関西電力など)と連携して、現状の法制度上で使えるサブシステムの中で、P2Pの電力取引など、新たな仕組みを作っていけるのではないかと思っていますし、トライしていきたい」と草野氏は続ける。
再エネ利用の拡大を目指した、国の「需給一体型のサービスへの模索」には、京セラのような積極的にチャレンジする企業がどんどん増えることが重要であろう。同社の今後の検証の成果に期待したい。
◎取材協力(敬称略)
草野 吉雅(くさの よしまさ)
京セラ株式会社 経営推進本部エネルギー事業戦略室エネルギー事業開発部責任者
古川 貴士(ふるかわ たかし)
京セラ株式会社 研究開発本部 先進技術研究所 アドバンスシドステムラボ プラットホーム研究課