KDDIのモバイルWiMAX
KDDIは、今年2月に大阪市内で実施したモバイルWiMAXのデモ(バス・ツアー・デモンストレーション)を紹介した。これは基地局3局(心斎橋局・堀江局・南堀江局。各セル半径約1km)と、大阪府福島のネットワークセンターを結び、時速30kmで移動するバスと街角に取り付けたビデオ・カメラの映像を、2GHzの周波数帯によるモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)を用いて送受信したもの。
街角やバスからのカメラ映像は、瞬時にコンテンツ・サーバーに送信され、ホテル会場やバス車内の端末でそれぞれ受信した。途中、ハンド・オーバー(基地局の切り替え)の際に、音声・画像が乱れることはあったものの通信は終始途切れず、通信速度は端末1台あたり下り5Mbps、上り3Mbpsを達成した。今後、スループット理論値(下り13.2Mbps、上り4.4Mbps)にどれだけ近づけるかが課題となるが、同社の提唱する「ウルトラ3G」構想の一環として2008年後半のサービスインを目標に技術開発を続けるという。
WiMAX関連では、YOZANが2005年12月に日本初のWiMAXサービスとしてスタートさせた「WiMAXダイレクト」(法人向け)や「BitStand」(個人向け)をアピール。ブースにはWiMAX用無線アンテナの実物を展示し、多数の来場者が足を止めていた。
以上のほか、WiMAX基地局開発用のRF製品メーカーなども多く出展するなど、WiMAX周辺の動きはこれからさらに加速化しそうだ。
広帯域化と広域化を両立するBBRide
NECは、無線LANカードなど最大16個の通信インタフェースを搭載可能なモバイル・ルータ「BBRide」を参考出展した。これは「Mobile Inverse MUX」と呼ばれる多重化技術により、2G/3Gの携帯電話網やPHS網、無線LANなど複数の異なる回線を束ねることで広帯域化を実現し、さらに異なる通信事業者の無線サービスを束ねることで広域化を実現するもの。
同社が高速バス車内で行った実験によると、各社の3G回線を7本使用した場合、時速80〜100kmの高速移動環境においては、通信速度下り約700〜1,000kbpsを実現したという。首都圏の通勤路線では3G回線を10本束ねて最大下り約2Mbpsを達成した。既存の無線インフラを利用できるため、公共交通機関における広帯域性と広域性を両立したインターネット接続の低コストな導入につながるものと期待される。
クアルコムのMediaFLO
クアルコムは、同社が推進する携帯電話機向けマルチメディア配信サービス「MediaFLO」を前面に押し出した。ブース裏に設置した8chコンテンツ・サーバーから、展示台に置かれたサムスン、LG、Pantech & Curitel、京セラのMediaFLO対応端末デモ機に、ビデオ映像を配信した。MediaFLOの「FLO」とは「Forward Link Only」(サーバーから一方向の伝送、すなわち放送)の意味で、同社はMediaFLOを新たな「放送」サービス形態として位置づけ、積極的に展開中。
すでに100%子会社のMediaFLO USAを立ち上げ、今年10月には米国でのサービスを開始する予定のほか、2007年の第1四半期中を目指すMFN(複数周波数ネットワーク)に対応した第2世代のチップセット(UBM:Universal Brosdcast Modem)の投入によって、アナログ放送が終了する2011年以降の正式な周波数跡地割り当てを待たずに、日本でのサービス開始の可能性を模索しているとのこと。なお、このチップセットは、MediaFLOのほか、ワンセグおよびDVB-H(欧州方式)にも対応し、日本でのサービスが実現すれば放送・通信融合の格好の事業例となりそうだ。
MediaFLO対応端末(写真は京セラ製)
NTTドコモ、HSDPA対応へ
NTTドコモは、W-CDMAをベースとした高速データ通信規格「HSDPA」対応の端末「N-902iX HIGH-SPEED」(NEC製)と、PC用のデータ通信カード「M2501 HIGH-SPEED」(モトローラ製)を出展、大きな注目を集めた。HSDPAは、8月下旬頃にサービスを開始する予定で、当初の通信速度は下り最大3.6Mbps、最終的には最大14Mbpsにまで高速化させる。
「802.11nドラフト版準拠」の無線LAN をデモ
アセロス・コミュニケーションズは、今年5月に作成されたIEEE 802.11nドラフト1.0準拠の高速無線LAN用「XSPANチップセット」を用いて、無線のストリーミング伝送によるHD(ハイビジョン)映像を大型ディスプレイに映し出し、来場者の視線を集めた。
ZigBee関連の試作品目立つ
無線PAN(Personal Area Network)標準規格のひとつ、ZigBee(IEEE 802.15.4)は、2004年初頭から急速に注目を浴び始めたが、アプリケーションの開発も進み、今回の会場にはZigBee関連の試作製品の出展が目立った。その中で沖電気工業は、物理レイヤからアプリケーション・レイヤまでを一貫してサポートし提供すると発表、ZigBeeの双方向の通信性能を活用したホーム・ネットワーク機器の試作品などを展示した。写真の試作リモコンは、HDD/DVDレコーダーとテレビ、ホーム・シアター用のアンプを、1回のボタン・プッシュで連続して起動できる。
次世代PoCの「Push to Show」
ドイツに本拠を置く大手半導体デバイスメーカーのインフィニオンは、PoC(Push-to-Talk over Cellular)の次世代規格として、3GPPとOMA(Open Mobile Alliance)で標準化作業中の「Push to Show」(通称。PoCの映像版)機能を搭載した自社試作端末を実演していた。
以上、速報的に今回のトピックをレポートしたが、ワイヤレスジャパン2006は、展示会だけでなく、120件を越える講演を揃えたカンファレンスも充実している。WBB Forum編集部では、注目の講演を追ってレポートする予定。