[スペシャルインタビュー]

NGNの展望と課題を聞く(6):NGNの次は?NWGN(新世代ネットワーク)の展望

2007/02/09
(金)
SmartGridニューズレター編集部

NGN時代を迎えて、次世代ネットワーク(NGN=NXGN=Next Generation Network)と新世代ネットワーク(NWGN:New Generation Network)の混乱、NGNとインターネットの関係、NGNによるIPTVも含めたトリプル・プレイ・サービスの可能性、NGNと通信・放送の融合など、新しい課題の整理が求められています。そこで、現在慶應義塾大学 教授および独立行政法人情報通信研究機構(以下NICT)のプログラム・ディレクタとして、新世代ネットワーク・アーキテクチャなどの研究を進める青山友紀氏にお話をお聞きした。
≪テーマ1≫:次世代ネットワーク(NXGN)と新世代ネットワーク(NWGN)の違い
≪テーマ2≫:NGNは、アナログ電話網、ISDN、ATMによるB-ISDNに次ぐ4回目のチャレンジ
≪テーマ3≫:インターネットの課題とNGNのねらい
≪テーマ4≫: NGN実現へのアプローチ:IPv6ベースへの拡充・発展か、IPベースの新ネットワークか
≪テーマ5≫:NGNのオープン化と放送・通信の融合
に続いて、今回は、
≪テーマ6≫:NGNの次は?NWGN(新世代ネットワーク)の展望
について語っていただきました。(文中、敬称略)
聞き手:インプレスR&D 標準技術編集部

NGNの展望と課題を聞く!

NGN(NXGN)から新世代ネットワーク「NWGN」へ

—研究者のお立場から、NGNの次のステップをどのようにお考えか、お話いただけますか

青山 これまで次世代ネットワーク(NGN)についてお話してきました。ここで、次世代ネットワークの次にくる新世代ネットワーク(NWGN:New Generation Network)のイメージはどうなるか、これについて簡単にお話しましょう。

図1は、「新世代」というものを考えるときに、そのネットワーク・アーキテクチャを決める技術要素として、3つあることを示しています。1つ目は、光ネットワークや無線ネットワークなど、いわゆる物理層としてのネットワーク技術の進歩です。2つ目は、非常に高度なアプリケーションからの要求条件です。3つ目は、接続される端末装置など、すなわちアプライアンスの性質です。これらの3つの性質をよく考えて、新世代ネットワーク(NWGN)のアーキテクチャを検討していく必要があります。

図1 新世代ネットワーク(NWGN)を決める3つの要素
図1 新世代ネットワーク(NWGN)を決める3つの要素(クリックで拡大)

このポストNGNとしてのNWGN(新世代ネットワーク)のアプライアンスとしては、極めて多彩なデバイスがあります。例えば、RFIDやセンサーから携帯電話、HDTVなどによるホーム・シアター、グリッド・コンピューティング(※1)などのコンピュータ・システム、スーパーコンピュータによる地球シミュレータのような、超高速コンピュータによるシミュレーション結果を可視化する超高精細タイルド・ディスプレイ(タイルを並べたように多くの画面を組み合わせた大きなディスプレイ)まで、非常に多様なアプライアンスが接続されます。

用語解説

※1 グリッド・コンピューティング (Grid Computing)
各所(大学や研究所等)に分散して設置されている複数のコンピュータを、高速なネットワークで結ぶことによって、仮想的に実現された高性能な処理能力をもつコンピュータ・システムのこと。

これらの端末・装置から出力される情報も、センサーから出てくるような100ビット・クラスの極小容量のデータから、DVDの数ギガバイト・クラス、さらにデジタル・シネマのような数百ギガバイト・クラスの極大容量のコンテンツが出てくるということを考えると、これはスケール・フリーなネットワーク(超低速から超高速まで対応できるネットワーク)である必要があります。

—「スケール・フリーなネットワーク」のイメージをもう少し具体的に説明していただけますか

青山 それを絵に描くと図2のようになります。図2は、ユビキタス社会においてネットワークに流通する情報の全貌を示しています。

図2 ユビキタス社会のコンテンツの全貌 — 極大から極小まで:べき法則
図2 ユビキタス社会のコンテンツの全貌 — 極大から極小まで:べき法則(クリックで拡大)

図2左から、

B2B(Business to Business):シネマ配信、デジタル配信、HDTV中継
P2P(Peer to Peer):コンテンツ交換、SDTV中継
B2C(Business to Consumer):Webの発展、インターネットTVガイド
S2M(Sensor to Machine):センサー・ネットの発展

の順に情報量の概略的な大小を示しています。

青山友紀氏

図2の横軸は、そのデータのアクセス頻度、縦軸はそのひとつの端末装置から出てくるデータの容量と考えてください。センサーとか、RFIDなどからの1個1個の情報量は、極めて小さな情報(例えば100ビット)ですが、膨大な数が接続されているようなイメージです。極端な場合、例えばセンサーから1秒に1回100ビット程度のデータが発信されるが、総センサー数は将来全世界で何十億、何百億個存在するというようなことがあるかもしれません。

一方、図2の左端は、その放送からデジタル・シネマ、ODS(Other Digital Stuffの略、映画以外のミュージカル、コンサート、オペラ、演劇・歌舞伎、ゲームなどの映像)から、さらに科学技術研究上の映像コンテンツまで、アクセス頻度やユーザー数はそんなに多くないけれども、1個、1個の情報の容量が膨大(例:数百ギガバイトからテラバイト)なコンテンツが存在します。極端な場合、1システムで1億画素(ピクセル)のような膨大な情報量を扱うタイル・ディスプレイも登場していますが、この場合、情報容量は、テラバイト(Tera:1012 )級となります。

新世代ネットワークは、このようにスケーラブルな情報・コンテンツを流通させる環境に対応できる必要があるのです。

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