≪1≫NGN構築のための通信機器メーカーはどう選定されたか?
■それでは次に、英国のカーディフ(南ウェールズ地方)で商用サービスが開始された21CN計画に基づくNGNを構築するために、世界のどのような通信機器メーカー(ベンダ)が参加されたのか、教えていただけますか。
キム 図12に示すように、NGNを構成するネットワークの要素を5つの戦略的な領域に分けました。左から
(1)アクセス網系〔富士通(日本)、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術、中国)〕
(2)メトロ〔アルカテル(現:アルカテル・ルーセント。仏)、シスコ(米)、シーメンス(独)〕
(3)コア(幹線網)〔シスコ(米)、ルーセント(現:アルカテル・ルーセント。仏)〕
(4)これらをつなぐ伝送システム〔シエナ(米)、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術、中国)〕
(5)サービスを制御するIMS(IP Multimedia Subsystem、IPマルチメディア・サブシステム)〔エリクソン(スウェーデン)〕
となっています。BTではIMSの部分を「iノード」(i:IMS)と呼んでいます。
また、コアを担当するアルカテル・ルーセントからはジュニパーネットワークス製のルータが供給されています。
アクセス (MSAN) |
メトロ (アクセスとコアを結ぶネットワーク) |
コア (幹線網) |
トランスミッション(伝送) | iノード (IMS) |
---|---|---|---|---|
富士通 | アルカテル・ルーセント | シスコシステムズ | シエナ | エリクソン |
ファーウェイ・ テクノロジーズ |
シスコシステムズ | アルカテル・ルーセント | ファーウェイ・テクノロジーズ | |
シーメンス |
NGN関連機器 | 内 容 |
---|---|
アクセス・ノード | MSAN(Multi-Service Access Node、マルチ・サービス集約機器)を指す。BTの既存の各種のアクセス・ネットワーク(電話網、xDSLなど)を集約し、エンド・ユーザーから21CNのコアIPベースのネットワーク間を接続する。当初は音声とデータを送信するサービスを提供する(エッジ装置ともいわれる)。 |
メトロ・ノード | アクセスとコア・ネットワークを結ぶメトロ・ネットワークの通信機器。音声、データ、動画などのマルチメディア・データを統合した21CNネットワークのルーティング機能とシグナリング(信号制御)機能を提供する。 |
コア・ノード | NGNの中核的な幹線網用の通信機器。高機能かつ大規模なルータであり、メトロ・ノード間のコスト効率の高い接続を提供する。 |
トランスミッション(伝送)装置 | 光ファイバによる高速な通信インフラ装置(伝送装置)。21CNの全ノードだけでなく、MSAN、メトロ、コアの各ノードに接続され大量の信号を変換するための各機器の接続にも使用される。光ファイバによるインフラの大半がすでに構築されている。 |
iノード (IMSノード) |
NGNにおけるサービス提供するうえで中心的な役割を果たすIMS(IP Multimedia Subsystem)関連機器。NGNが提供するサービスを制御するためのサービス実行機能(イネーブラ)を備えている。 21CNでは、ソフト・スイッチ、ネットワーク・インテリジェンス、帯域幅管理機能などが含まれる。 |
■各通信機器メーカーは、どのような基準で選定されたのでしょうか。
キム これらのパートナーの選定に当たりましては、世界中で一番優れた会社を選定できるよう、BTはガイドラインやタイム・スケジュールを出し、Webにも掲載して、全世界に対して平等にしかも完全にオープンな形で行いました。このようなことから、英国の機器メーカーが入っていない結果ともなっています。パートナー(メーカー)のシステム構築への対応能力や機器の性能はもちろんのことですが、低コストという面からも、評価しました。図12に示す構成は、BTのNGN向けの基本的なモデルですが、これをベースにしてこれらのパートナーの方々とNGNシステムの全国的な構築を行っていく予定です。
≪2≫BTにおける「放送と通信融合」の取り組みとその課題
〔1〕BTは一般放送(地デジ)をNGNに取り込まない
■これからIPベースのNGNの展開しサービスを提供していく中で、放送と通信の融合という課題にも関心が高まっています。日本でも現在、NTTのNGNフィールドトライアルでは地上デジタル放送のIP再送信の実験を開始し、きれいなハイビジョン映像をNGNで流しています。NGNの中に放送サービスを取り込んでいくことについて、英国の規制も含めて、BTは、どう考えているのでしょうか。
キム 英国における放送と通信の課題は、オフコム(Ofcom:Office of Communications、英国情報通信庁)と呼ばれる機関が管轄しています。Ofcomは、英国における通信・放送などの監督を行う規制機関で、放送・通信の関連機関を統合して2003年12月に設立されました。このOfcomでは、放送も通信も、情報をお客様(ユーザー)に対して送り出す手段と見なされています。放送の情報(番組)は放送局から電波で、どんどん一般家庭に送信されていますが、BTとしてはそれをNGNに取り込もうとは思っていません。
BTでは、地デジ(地上デジタル放送)で放送されていないチャネルを取り込んでサービスしていこうと考えています。私たちが提供するIPTV(IPテレビ)のサービス(前回第2回の図10「BTビジョンの仕組み」参照)を見ていただきますと、その中には、いわゆる現在放送されている「IPではない放送のデジタル信号」と、ブロードバンドの「IPの信号」という2つの信号が、STB(セット・トップ・ボックス)統合されているという形になっています。このサービスは、ユーザーには、両者のインタフェースが1つのインタフェースに集約して提供されます。
■ということは、NGNでは、地デジは流さないということですか。
キム そうです。いわゆる一般放映されている地デジの番組は、通常、家庭のアンテナで受信し、それをSTB(セットトップ・ボックス)を経由して、家庭で見られるようになっています。また、セット・トップ・ボックスにレコーディング(録画)しておいて後から見ることもできるのです。したがって、それをわざわざBTが、NGNの側に取り込んでユーザーに提供する必然性はまったくないわけです。
しかし、例えばBTが特別に提供するブロードバンド経由で放映するプレミアつきのサッカーの試合などのような特別の番組を見たいという場合には、前回の図10に示すBTホーム・ハブ経由でSTBにくるプレミアつきのサッカー番組を、テレビ画面の映し出すことになります。また、その間、BTホーム・ハブに接続されたパソコンでは、ブロードバンド経由でWebサーフィンを楽しむことも可能となっています。
しかし、今放映されている番組を見損ない、レコーディングもしていませんというときには、ブロードバンド経緯で、後からその番組をビデオ・オン・デマンド(VoD)で見ることができる仕組みとなっています。また、プレミアつきのサッカーの試合以外にも、例えば音楽コンサートの生中継のようなもので、アンテナ経由の放送では放映されていないような番組は、ブロードバンド経由で見ていただくことになります。これは、ペー・パー・ビュー(PPV:Pay Per View、見た分だけの料金を支払う)と同じような形態のサービスとなります。
〔2〕IPTV(IPテレビ)は標準化を待てない
■そのIPTVサービスについて、日本では、NTTやKDDIなどの通信事業者、NHKや民放6社などの放送事業者、および情報家電機器メーカーなどによって、2006年10月に「IPTVフォーラム」が発足しています。このフォーラムでは、放送番組その他コンテンツをIP配信する際の、受信機開発などに必要な技術要件や、運用に関わるルールづくりが行われています。また、ITU—Tのほうでも、IPTVの標準化が行われていますが、それについてはどういうお考えなんでしょう。
キム IPTV(IPテレビ)については、ITU—T のような国際標準機関における標準化が終わるのを待っていると、サービスの提供が遅れてしまいます。標準化を待っていたのでは遅過ぎるのです。これはNGNも同じで、すべてが標準化されるまでサービスを提供しないということでは遅すぎてしまいます。ですからBTのビジネス戦略としましては、NGNにしてもIPTVにしても、当面のサービスを機器のサプライヤーとパートナーシップを組みながら提供していき、グローバルな国際標準が完成したときは、適切な時期にそれに合わせていく、これがBTの基本的な立場です。
■なるほど。標準化の完成よりも、まず、サービスを提供していくと言うことですね。
キム そうです。国際標準化の流れをみながら、当面のビジネスをパートナーと手を組みながら、展開していく。その体験を標準化にも反映させながら、標準化が完了したときにはそれに対応していくという方針です。BTのシステムは、このような変更に対応できるように、大変柔軟なアーキテクチャーを採用していますので、新しい標準にも容易に対応できるのです。すべての標準化が完了するまで待っているということですと、ビジネス・チャンスを逃してしまうことにもなりかねないのです。
≪3≫21CNは「ビジネス変革」のプロジェクト
■そのような中で、実際に、BTは世界で最初にNGNの商用サービスを始めましたね。
キム これから、NTTも含めて世界のいろいろな国でNGNを展開していこうと取り組んでいます。しかし、どこの国の計画を見ましても、旧来の電話交換システムと新しいNGNシステム、すなわち新旧のシステムを同時に並行して走らせることを基本にしています。そういう状況の中で、BTは、唯一、古い交換機システムを捨ててしまい、まったく新しいシステム(NGN)と置きかえていくというやり方をとっている通信事業者だと思います。
■BTは、最初のお話だと6兆円の負債を抱え、その膨大な負債を返済し、黒字に転換したというお話がありました。再度、その中でのNGNの位置づけをお聞きしたいのですが。
キム BTのNGNサービスは、まだ全国的な展開ではなくウェールズ地方で商用サービスが始まったばかりです。現在は、NGNシステムへの運用やいろいろな対応が整ってきているという段階です。NGNというのは、朝起きたら、明日から全国同時に全部NGNでやりましょうというものではありません。つまりネットワークも変えなければならないことはもちろんのことですが、それには時間がかかる。また、オペレーションの変更にも、また組織の変更にも時間がかかるものなのです。
ですから、BTの21CN(21世紀ネットワーク)プロジェクトというのは、NGNそのものというのではなく、BTのビジネスの変えるということなのです。これを私たちは、「ビジネス・トランスフォーメション」(ビジネスの変革)と呼んでいます。
〔1〕通信業界に予測される重要な3つの変化
■BTのビジネスを転換させていく際に、何が重要な要素と考えていますか?
キム 現在、この通信業界においては、今後に向けて大変重要な3つの変化というのが起こってきています。
- 1つ目の変化:距離に応じて追加料金を請求できないこと
まず1つ目の変化は、今後、距離に応じて追加料金を請求することはできないことです。このことは、地域内の電話とか、あるいは長距離電話、国際電話とかのような区別がなくなってくるということです。ですから将来的には距離に応じた料金設定することができないと予測しています。 - 2つ目の変化:通信時間に応じた料金の請求もできなくなること
それから2つ目の変化として、通信時間に応じた通信料金の請求もできなくなるということです。すなわち、電話で長く話したからといって余計に通信料金を請求することはできないということです。 - 3つ目の変化:伝送速度に応じた料金設定を変えられなくなること
また、パイプの太さ、すなわち伝送速度が速いとか遅いとかによって、通信料金の設定を変えることも、将来的にはできなくなるとみています。
しかし、この3つというのは、これまで通信ビジネスのまさに基盤であったわけです。このような、重要な基盤であったこの3つの項目が今変わりつつあるというわけですから、通信事業者各社としては、ほかにきちんと通信料金を請求できるものを見つけていかなければならないわけです。
■たしかに。なかなかきびしい状況ですね。
キム ですから、現在の通信ビジネスというのは、もはや時代の先頭を行くようなビジネスという位置づけではなくなってしまったのです。BTの通信料金の形態は、既に今申し上げたような変化ということを織り込んだ料金体系になっています。ですから、地域電話とか長距離電話とか、そういった区別がもはやBTの料金体系にはありませんし、あるいは通話時間に応じて料金が変わるというふうにもなっていないのです。
〔2〕サービスとアプリケーションで稼ぐ
■そうすると何で稼いでいくんですか。
キム サービスとアプリケーションです。
■サービスとアプリケーションの中で、とくに重要な分野というのはどういうところでしょうか。
キム 例として、図13に、モバイル・エクスプレスというサービスを示しています。真ん中にあるのがソフトウェアで、これをBTはお客様に販売しているのです。現状を見てみますと、例えば公衆無線LANスポットに行ったときに使われるIDやパスワードと、携帯電話との接続やパソコンとの接続などで使われるIDやパスワードは違っていますね。またホテルに行けば、ホテルで違うIDやパスワードが使われますが、これはユーザーにとって大変煩雑なことです。その解決策として、BTが提供しているのが「1つのIDと1つのパスワード」対応できるモバイル・エクスプレスというサービスです。
BTモバイルのサービスでは、IDもパスワードも1つだけお客様に提供されます。しかしBT側では、いろいろなネットワークときちんと契約した合意のもとに、セキュリティも考慮して接続ができるようになっているので、その「1つのIDと1つのパスワード」で、BTのどこのネットワークとでも接続できる形態になっています。この結果、お客さんは、BTのどのネットワークを使おうとか、どれを使ったらここに接続できるかというような心配をする必要がなくなるというわけです。
現在、このような大変便利なサービスをグローバルに提供していますが、このようなサービス(BTになってからは2年目。サービスそのものは10年前から存在している)を利便性が高く有用だと思えば、お客様もそうしたサービスに対して料金を支払ってくれると思います。これは、今後の将来像の1つの例です。このようなサービスを実現するために、BTは世界のいろいろな通信事業者と提携していますので、インフラ(通信基盤)などの必要な通信設備を、BTが自分たちでグローバルに構築する必要はないのです。
≪4≫NGNにおいて提供されるオープンなAPI
■なるほど。今、21CN(21世紀ネットワーク)プロジェクトのもとにNGNが推進されていますが、今後はどのように展開していくのでしょうか。
キム そうですね、当然のことですが、BTが現在構築しているインフラが、今後のNGNの重要なプラットフォームになっていきます。したがって、このプラットフォーム上で、BTだけではなく、BTのお客様やパートナーの方々も、新しいアプリケーションをどんどん開発し提供していただくことになるかと思います。
このプラットフォームを提供するということは、BTが業界やお客様やパートナーに対して、アプリケーション開発用のツール(ソフト)を提供し、それを使って業界の皆様が、NGNの環境で自分たち独自の新しい革新的なサービスを、たくさんつくっていただくことを期待しているからなのです。
このように、NGNというのは、いわばお客様を初めとする多くの方々のご協力をいただいて、ネットワーク上に演算能力、すなわちアプリケーションの開発能力をどんどん増大させていきましょうというようなものです。その演算能力の増加をどのようにして実現するかというと、やはりBTからソフトウェア開発キットとか、NGNとアプリケーションのインタフェース、すなわちAPI(Application Programming Interface、アプリケーション・プログラミング・インタフェース)などが重要になってきます。
このため、世界に向けてのいろいろなAPIの開発作業を、BTは現在も今後も重視して取り組んでいく方針です。そのようなAPIを使っていろいろなアプリケーションの革新を行っていただこうというのが私たちの考えなのです。これは、身近な例で申し上げますと、つまり、マイクロソフトがWindows OSを出し、APIをオープンにして、それを多くのサード・パーティやソフトの開発者をはじめ多くの人々が、新しいアプリケーションの開発をできるようにしてきたのと似た考え方になります。
すなわち、BTが業界に対して新しいAPIの開発をし、提供し続けていき、そのAPIを多くの人々に使っていただき、革新的なアプリケーションをつくり、新しいビジネスを展開していただくという流れになるわけです。したがって、BTがNGNの構築とともにやるべきことは、より多くの、よりよいAPIをつくっていくこと、それによってこの業界に新しいビジネスチャンスを創造し、さらなる革新をもたらすことができるようにすることなのす。
■日本のNTTの場合も、サード・パーティやISP(プロバイダ)あるいはいろいろな企業とのコラボレーション、あるいはオープンなSNI(Application Server-NetworkInterface)を提供していくことを発表しています。現在、BTのNGNの通常の商用サービスの中で、ANIなり、APIあるいはANIがオープンにされて、コラボレーションでサービスが提供されているような例はあるのでしょうか。
キム まず申し上げたいのは、ANIとAPIの両者には大きな違いがあるということです。APIのほうが幅広い機能をもっています。APIというのは、BTの考えではWeb2.0的なオープンな位置づけになります。BTでは、Webサービス・スターというグローバルなスタンダードを使っています。それは完全にオープンになっています。ですから、例えば図14をごらんください。
図14に示す上部の、エンドユーザー(顧客)が創るサービス、サード・パーティが創るサービス、BTのサービスなどがWebサイトとなります。このBTのWebサイトからはAPIも容易にダウンロードできますから、明日からでも使っていただくことができるのです。ですから、英国のNGN環境では、APIをダウンロードして、パートナーや顧客は容易に独自のアプリケーションをつくることができるのです。さらにBTは、APIをパートナーに対してだけオープンにするだけではなく、競合する相手に対してもすべて、完全にオープンにするというやり方をとっています。ですから皆様の誰もがこのWebサイトに行って、ダウンロードしていただくことも可能なのです。
≪5≫NGNの核心部分は「オープン・イノベーション」
■なるほど。本当に完全オープンということなのですね。最後に、BTが掲げているNGNにおける「オープン・イノベーション」についてお話をいただきたいのですが。
キム はい。BTのNGNの核心部分は、図15に示す「オープン・イノベーション戦略」というところなのです。その環境では、そのサービスを実現できるような、ネットワークの構成から、機器の組み立て、いろいろな機能の選択ができるようになっています
世界のほとんどの通信事業者は、先ほど申し上げたように、既存の古いスイッチング(電話交換機)のネットワークと、それから新しいIPネットワークを併存させてサービスを提供していく方針をとっています。このような混在環境の中で、IP電話サービスとかIPTVサービスを行おうという議論になっています。
BTはそうではなくて、次世代のネットワーク「NGN」では、オープン・イノベーションという部分が一番肝心なところと思っています。まず、そのようなトータルなコンセプトがあって、それからどのようなサービスを、どのように提供していくかということを考える必要があると思うのです。ここが一番大事なところなのです。どの程度までオープンにするかという問題は、通信事業者は歴史的な背景もあり、昔からオープンにしてこない(できない)ところがありました。しかし、21CNを推進するBTは、完全にオープンにしていますので、前述したように競合する相手に対してもすべて、完全にオープンにしているのです。
■それは素晴らしいことです。
キム ですからこのような方針のもとに新しいサービスを取り込んで、NGNがコンピューターのOSのような機能を果たしていきながら、次の新しいサービスをどんどん創造していこうというのがBTの考え方なのです。これは相当長い期間かかると思いますが、これこそが次世代の新しいビジネスを発展させる原動力となるのです。
■もう少し具体的にお話いいただけますか。
キム 例えば、現在、マイクロソフトのWindows Application Developers Packageを、ダウンロードしていただきますと、その中にはすでにBTのAPIが入っているのです。すなわち、私たちはマイクロソフトともコラボレーションをやっていますので、BTのAPIをマイクロソフトのソフトウェアの中に組み込んでもらうという形になっているのです。
これは、昔のメインフレーム時代に、パートナーがいて、パートナーにのみオープンにして、限られた人々だけがソフトの開発をしているのと大きな違いです。BTが提唱するオープン・イノベーションの場合、例えばLinuxであるとか、あるいはマイクロソフトのWindows OSなどを使用して、だれでも、どんなアプリケーションでも開発することができる環境となっているのです。
そのうえ、アプリケーションやサービスの開発に当たっては、BTと特別なパートナーシップ契約などを結ぶ必要がないのです。それこそがまさにオープンであるということだと思います。これが大変重要なことであり、これができてこそ、まさにNGNというのが真の意味でオープンのシステムになるのです。
■なるほど。「NGNのオープン」という意味が理解できたような気がします。
キム ご理解いただきありがとうございます。BTがオープン・イノベーションを正しく発展させることが、英国全体の通信産業を活性化でき、さらに英国の産業全体にも大きな影響を与えていくことになると確信しています。
このようことを背景に、BTグループ全体としては、図16に示すよう21CN計画を含む基本戦略を推進しています。すなわち、これまで提供してきたサービスや製品のサービスを守るために、さまざまなイノベーションを今後も展開していきます。一方、前にも申し上げました、BTが「New Wave(ニュー・ウェーブ)」と命名した、ネットワークITサービス、ブロードバンド、移動通信など、急成長している新しい「デジタル・ネットワーク・サービス」の充実にも大きな力を注いでいきます。これらを、顧客との信頼関係を基本に長期的なパートナーシップを築き、展開していきたいと考えています。
■ご多忙のところありがとうございました。
(終わり)
プロフィール
ヨン キム(Yung Kim)
1956 年9 月8 日 韓国テグ市生まれ。英国国籍。
1980 年 ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジにおいて電気工学の学士号。
1981 年 同大学でマイクロ波工学および近代光学(Modern Optics)の修士号を取得。
1982 年 メッセージ・スイッチング・システムのテスト・エンジニアとしてBT に入社。
1985 年~1995 年 BT の技術研究所にて音声アプリケーション、ATM、インターネットサービスなどの開発に従事。
1998 年からの2 年半はBT ジャパンのテクノロジー担当責任者として日本で勤務。
2004 年5 月、BT グループCTO オフィスのテクノロジー&イノベーション担当副社長に
2004 年7 月より東京へ赴任。同時にBT グループ テクノロジー&イノベーション 副社長 日本・韓国担当に就任。現職