なぜ、NGNインタフェースのオープン化が必要なのか?
—前回、NGNのトランスポート・ストラタム、およびサービス・ストラタムの各レベルをオープンにできるように規定することの重要性のお話がありましたが、具体的にはどのようなことでしょうか
青山 図1を見てください。まず図1の右側に示す3つのインタフェースであるANI(Application to Network Interface、アプリケーション・ネットワーク・インタフェース)、他の網とのインタフェースであるNNI(Network to Network Interface、網間インタフェース)、ユーザー端末とのインタフェースであるUNI(User to Network Interface、ユーザー・網インタフェース)のところをオープンなインタフェースとして規定する必要があると思います。
これらのインタフェースに加えて、図1の左側に示す、
(1) コンテンツとアプリケーションの部分
(2) アプリケーション・プラットフォームの部分
(3) ネットワーク・サービスの部分
など、レイヤごとのオープン化が重要と考えます。コンテンツとアプリケーションの部分は、デジタル・コンテンツの提供ビジネスのみならず、サード・パーティも含めたあらゆる事業者のビジネスが対象となります。
また、アプリケーション・プラットフォーム部分は、上位のコンテンツ・ビジネスのほか、コンテンツの認証、課金代行、ポータルなどのビジネスが可能です。さらに通信の利用者の認証や課金などを含む通信サービスのためのプラットフォーム(PF:Platform)機能、あるいは通信サービスの提供やインターネットへの接続機能を提供する、ネットワーク・サービスの部分が提供されるようになります。
このように、NGNのインタフェースがオープン化されることによって、競争環境が形成されるようになります。この結果、レイヤごとの役割に特化したサービスを提供する事業者が登場したり、異なる複数のレイヤの機能を保有して、エンド・ユーザーにワンストップ・サービスを行うプロバイダなどが登場する可能性が出てくると思います。
現状では、上記のANI、NNI、UNIインタフェースに加えて、どのようなインタフェースを規定するかはまだ具体的に決まっていませんが、新しいサービスを提供しようとする企業がどんどん参入できるような、オープン性というか、オープン・インタフェースの規定が必要ではないかと思うのです。
—もう少し具体的なお話をしていただけますか
青山 例えば、あるプロバイダ(ISP)が、QoS(サービス品質)をコントロールするサービスに関するビジネスを、NGN通信事業者(キャリア)のネットワークを使って(借りて)提供しようとするときに、NGNのサービス・ストラタムに関する必要な情報をキャリアがプロバイダに提供する仕組みが必要なのです。
つまり、両者がお互いにインタフェースを介して情報をやりとりしながらサービスを提供できることが重要なのです。このようなことが排除されたり、拒否されたりすると、新しいサービスの登場が不十分になってしまうのです。インターネットのオープン性がさまざまな新サービスの登場を可能にしてきたことを再認識する必要があります。
そこで、NGNをどこまでオープンにすることができるかが問われるのです。NGNでは、インターネットにはないネットワーク・コントロール機能をネットワーク・レイヤに入れようとしているわけですからね。そのコントロール機能を、NGNのキャリアだけしか利用できないということでは、発展性が阻害される恐れがあるのです。
NGNというのは、通信系ビジネスばかりではなく、IPプロトコルを使用して放送を行うIPTVのような放送系のビジネスも有望となりますから、これまでよりもはるかに大きい市場への影響力をもったネットワークなのです。
このため、競争の原理によって市場を活性化させる面からもオープンにしていく必要があります。これは、国の行政を担当する総務省としても、NGNのアーキテクチャにおける必要な部分のインタフェースをオープン化していく立場から、制度的な検討をされるのではないかと思います。