[スペシャルインタビュー]

NGNの展望と課題を聞く(5):NGNのオープン化と放送・通信の融合

2007/01/31
(水)
SmartGridニューズレター編集部

NGN時代を迎えて、次世代ネットワーク(NGN=NXGN=Next Generation Network)と新世代ネットワーク(NWGN:New Generation Network)の混乱、NGNとインターネットの関係、NGNによるIPTVも含めたトリプル・プレイ・サービスの可能性、NGNと通信・放送の融合など、新しい課題の整理が求められています。そこで、現在慶應義塾大学 教授および独立行政法人情報通信研究機構(以下NICT)のプログラム・ディレクタとして、新世代ネットワーク・アーキテクチャなどの研究を進める青山友紀氏にお話をお聞きした。
≪テーマ1≫:次世代ネットワーク(NXGN)と新世代ネットワーク(NWGN)の違い
≪テーマ2≫:NGNは、アナログ電話網、ISDN、ATMによるB-ISDNに次ぐ4回目のチャレンジ
≪テーマ3≫:インターネットの課題とNGNのねらい
≪テーマ4≫: NGN実現へのアプローチ:IPv6ベースへの拡充・発展か、IPベースの新ネットワークか
に続いて、今回は、
≪テーマ5≫:NGNのオープン化と放送・通信の融合
について語っていただきました。(文中、敬称略)
聞き手:インプレスR&D 標準技術編集部

NGNの展望と課題を聞く!

なぜ、NGNインタフェースのオープン化が必要なのか?

—前回、NGNのトランスポート・ストラタム、およびサービス・ストラタムの各レベルをオープンにできるように規定することの重要性のお話がありましたが、具体的にはどのようなことでしょうか

青山 図1を見てください。まず図1の右側に示す3つのインタフェースであるANI(Application to Network Interface、アプリケーション・ネットワーク・インタフェース)、他の網とのインタフェースであるNNI(Network to Network Interface、網間インタフェース)、ユーザー端末とのインタフェースであるUNI(User to Network Interface、ユーザー・網インタフェース)のところをオープンなインタフェースとして規定する必要があると思います。

図1 NGNインタフェースのオープン化
図1 NGNインタフェースのオープン化(クリックで拡大)

これらのインタフェースに加えて、図1の左側に示す、

(1) コンテンツとアプリケーションの部分
(2) アプリケーション・プラットフォームの部分
(3) ネットワーク・サービスの部分

など、レイヤごとのオープン化が重要と考えます。コンテンツとアプリケーションの部分は、デジタル・コンテンツの提供ビジネスのみならず、サード・パーティも含めたあらゆる事業者のビジネスが対象となります。

また、アプリケーション・プラットフォーム部分は、上位のコンテンツ・ビジネスのほか、コンテンツの認証、課金代行、ポータルなどのビジネスが可能です。さらに通信の利用者の認証や課金などを含む通信サービスのためのプラットフォーム(PF:Platform)機能、あるいは通信サービスの提供やインターネットへの接続機能を提供する、ネットワーク・サービスの部分が提供されるようになります。

このように、NGNのインタフェースがオープン化されることによって、競争環境が形成されるようになります。この結果、レイヤごとの役割に特化したサービスを提供する事業者が登場したり、異なる複数のレイヤの機能を保有して、エンド・ユーザーにワンストップ・サービスを行うプロバイダなどが登場する可能性が出てくると思います。

現状では、上記のANI、NNI、UNIインタフェースに加えて、どのようなインタフェースを規定するかはまだ具体的に決まっていませんが、新しいサービスを提供しようとする企業がどんどん参入できるような、オープン性というか、オープン・インタフェースの規定が必要ではないかと思うのです。

—もう少し具体的なお話をしていただけますか

青山 例えば、あるプロバイダ(ISP)が、QoS(サービス品質)をコントロールするサービスに関するビジネスを、NGN通信事業者(キャリア)のネットワークを使って(借りて)提供しようとするときに、NGNのサービス・ストラタムに関する必要な情報をキャリアがプロバイダに提供する仕組みが必要なのです。

つまり、両者がお互いにインタフェースを介して情報をやりとりしながらサービスを提供できることが重要なのです。このようなことが排除されたり、拒否されたりすると、新しいサービスの登場が不十分になってしまうのです。インターネットのオープン性がさまざまな新サービスの登場を可能にしてきたことを再認識する必要があります。

そこで、NGNをどこまでオープンにすることができるかが問われるのです。NGNでは、インターネットにはないネットワーク・コントロール機能をネットワーク・レイヤに入れようとしているわけですからね。そのコントロール機能を、NGNのキャリアだけしか利用できないということでは、発展性が阻害される恐れがあるのです。

NGNというのは、通信系ビジネスばかりではなく、IPプロトコルを使用して放送を行うIPTVのような放送系のビジネスも有望となりますから、これまでよりもはるかに大きい市場への影響力をもったネットワークなのです。

このため、競争の原理によって市場を活性化させる面からもオープンにしていく必要があります。これは、国の行政を担当する総務省としても、NGNのアーキテクチャにおける必要な部分のインタフェースをオープン化していく立場から、制度的な検討をされるのではないかと思います。

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...