≪1≫日本でFMCは実現するか
■FMCに向けた取り組みは、世界的に見て日本は遅れているといわれています。移動通信と固定通信を両方持っているKDDIにとしては、国内でFMCをもっとも実現しやすい環境にありますが、FMCへの取り組みの現状はいかがでしょうか。また、FMBCは現在、どのステージまで来ているのでしょうか。
安田 豊氏
(KDDI 執行役員 コア技術統括本部長)
安田 前にも申し上げましたように、KDDIは、ネットワーク・インフラをIPで統合し、固定通信のサービスも移動通信のサービスも、FMCとして、同じバックボーン・ネットワークで利用できるようにするための準備を進めています。それはユーザーからは直接見えない取り組みなので、ユーザーからは具体的なサービスを、実感としては感じられない状況です。
当社は、図1のように、FMCというサービスよりもFMBCという放送まで融合したサービスの提供を目指しています。そこで、FMBC全体で目指すところからすると、現在はまだ10%か20%ぐらいの到達点です。具体的なFMBCサービスとしては、PC-携帯連携のLISMOサービスおよび放送通信連携のFMケータイ/ワンセグのようなサービスです。それをもっと現実的に魅力があるサービスと思われるようにしていく必要があります。
現在提供しているサービスは、固定通信と移動通信と両方利用すると料金的なメリットを出すau携帯とメタルプラス電話・インターネットのセット割引サービスなどに限られていることもあります。本当の意味で融合したサービスはこれからとなります。2008年には、具体的にFMBCを実感できる新しいサービスを順次増やしていきます。
■KDDIは、FMBCという構想で、FMCからさらに一歩進んで放送との融合までサービスしようとしています。
安田 海外の通信事業者が提供するサービスに目を向けると、欧米では移動通信よりも固定通信のほうが収益性がよい状況も出てきています。その理由は、固定通信サービスのほうが、高画質なテレビやVoD(Video On Demand)などの映像系のサービスが充実しており、ヘビーユーザーをしっかりと取り込んでいるケースがあるからです。
日本ではまだ実現していませんが、欧州では放送した後に、見逃した番組をVoDでみるというサービスが通信回線で提供されており、ニーズも高いものがあります。こうしたサービスであれば、ユーザーは見たい番組はお金を払ってでも見ます。あるいは、放送される前の番組を見たい人もいますが、これは場合によってはサービスのプロモーションにもなるでしょう。一定の条件が整えば、前もって番組を見ることができるサービスという形ですが、これはVODで提供されるのです。
通信回線を使う一番のメリットは、個人個人のニーズに応えられることです。ユーザーがお金を払ってもいいと思えるサービスを充実させることができれば、日本でも固定系のブロードバンドでユーザーを増やすことができると思います。