[2]「量子化」から「符号化」へ
取り出されたそれぞれの標本値(サンプル)は、アナログ信号ですから連続的な値で表現されますが、次に、これを必要なレベル数のデジタル表現(整数値)に変換します。これを「量子化」と言います。このとき、何ビットでデジタル化するか(これを量子化のレベルという)によって、音が粗くなったりきめ細かくなったりします。
例えば、標本化のレベルが、
1. 4ビットの場合は4ビット=24=16レベル(粗い音)
2. 8ビットの場合は8ビット=28=256レベル(ほどほどの音)
3. 16ビットの場合は16ビット=216=65536レベル(きめ細かい音)
というようになります。
ここでは、原理を理解するために図1-5(その2)の(3)に示すように、シンプルな4ビット(16レベル)で量子化する例を説明しましょう。音声や画像のそれぞれのアナログ標本値は、通常16レベル(16個)のデジタル代表値のうち、もっとも近いレベルの値を選ぶことによって、4ビットのデジタル値として表されます。このように数値化することを「符号化する」と言います。
アナログ標本値が、例えば図1-5(その2)の「[1]標本化」に示すレベル3とレベル4の間(図では「3.4」と仮定)にあるときは、3と4のいずれかに近いほうの値「3」が選択され、4ビットのデジタル値「0011」として「符号化」され、送信されます〔図1-5(その3)〕(この符号化された値「0011」は、画像の場合「画素値」となる)。
このとき、「3.4」という値を「3」というきちんとした整数値に整える(これを「丸める」という場合がある)ので、元の情報が削除されてしまい完全には復元できないように思われます。しかし、PCMでは、このような丸める処理をしても、実効上完全に元のアナログ信号に復元できるように、十分な量子化レベル数をとっています。
このように、デジタル化するということは、連続的なアナログ信号を時間方向(図1-5(その2)の、①、②、③、④、⑤……)にも、振幅方向(図1-5(その2)のレベル0、1、2、3、4……)にも、いずれの方向にも離散的な値(連続的ではなく、飛び飛びの値という意味)で表現する処理なのです。ただし、ここでは、先に述べたように、非圧縮のPCM方式でデジタル化していますから、デジタル信号は完全にアナログ信号に戻すこと(復元)ができることに注意してください。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:最新の情報圧縮技術〔H.264/AVC〕編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 H.264/AVC教科書」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。