[特集]

BEAシステムズのNGN/SDP戦略(3):IMS上でサービスを提供するWLCPの具体的機能と位置づけ

2008/05/28
(水)
SmartGridニューズレター編集部

≪2≫通信事業者の新ビジネスの核となる「Network Gatekeeper」の具体的機能

■通信事業者のサービスを他の企業に貸し出すという「Network Gatekeeper」の具体的機能について説明してください。

高山 そうですね。具体例を説明しましょう。英国の通信事業者O2(オー・ツー)は、2004年に従来自分たちが提供してきたサービスを、他の企業でも使えるように開放し、貸し出し始めました。図2に挙げたのは、「位置」をベースとしたコンテンツ配信や、コール転送といったサービスを、ピザハットなどの企業に対して貸し出し、それによって収益を得るというモデルのイメージです。

位置をベースとしたコンテンツ配信であれば、他にもいろいろな例が考えられます。携帯電話会社がもっているユーザーの位置情報を、他の企業でも利用できるようにすることで、例えば、虎ノ門の駅に着いた瞬間に、駅の近くのコーヒーショップから100円の割引券を送られたり、あるいは、あるショッピング・モールが、3時に虎ノ門にいる会員にだけ100円の割引券を送るといったサービスです。

図2 O2のサービス・イメージ(クリックで拡大)

■キャリアが提供する位置情報とSMS(ショート・メッセージ・サービス)機能を利用するということですね。

高山 そうです。この場合、携帯電話の位置情報とショート・メッセージ(SMS)の配信システムを利用し、ショッピング・モールの会員のデータベースと組み合わせて、ユーザーにサービスを提供しているわけです。キャリアの位置情報を利用して、対象者に宛ててSMSで送付するということは、キャリアからすると、SMSのサービスと位置情報のサービスをコーヒーショップに貸し出しているわけですね。そうすることによって、キャリアはコーヒーショップからお金をもらいます。

別な例として、公園で花見をしている人がピザを注文するために宅配ピザの代表番号に電話をした際、電話がかかった瞬間に電話をした人の位置情報を吸い上げ、その位置情報をもとにしてしかるべき店舗に転送し、あとはその店舗と公園にいるユーザーが直接やり取りをするというシステムも可能です。この場合は、位置情報だけでなく、電話の転送機能も貸し出しているわけです。

このような電話の通話サービスや位置情報のサービスなどは、現在でも利用されている通信事業者のネットワーク上のサービスですので、NGNと直接の関係はないのですが、オープン化や電話のIP化などの流れに乗って、利用のされ方がどんどん発達している例です。現在でも使われているサービスを別なものと組みあわせたり、新しい見せ方をすることで、エンドユーザーからするとまったく新しいサービスに見えます。もちろん、収益モデルとしても新しいものです。

もう1つ、「Network Gatekeeper」の機能としては、管理機能も重要です。

■「Network Gatekeeper」の管理機能とはどういったものですか。

高山義泉氏(日本BEAシステムズ WLCPビジネスディベロップメント マネージャ)
高山義泉氏
(日本BEAシステムズ
WLCPビジネスディベロップメント
マネージャ)

SMS(ショート・メッセージ)を送ったり電話を鳴らしたり、あるいは位置情報を渡すというような、キャリアが旧来から持っているサービスを、宅配ピザやコーヒーショップなどのサードパーティ・アプリケーションに貸し出す場合、もともとのサービス自体の可用性を下げてしまってはいけません。また、貸し出しながらも、サードパーティからのアクセスをしっかりとコントロールしないといけません。

例えば、宅配ピザのA社は月に100万円をキャリアに払う代わりにSMSを1秒間に10回利用できる、あるいはコーヒーショップのB社は月200万円をキャリアに払う代わりに毎秒20回利用できるといったモデルです。この場合、SMSのやりとりのログをキャリア側で全部とっておいて何か問題があったときに見ることができるとか、電話をかけられる先を制限するといったことなどができます。また、SMSを1回使ったらいくらというような課金モデルももちろん可能です。

このように、キャリア・サービスとサードパーティ・アプリケーションの間に入って、相互を接続し、さらに管理までしっかりと行うのが「Network Gatekeeper」です。

図3に示されている、サービス開放管理とサービス合成の間のParlay X(※)のところも説明していただけますか。

Parlay X:通信事業者や通信機器メーカーなどによって設立(1998年)された「The Parlay Group」によって規定された、通信サービスを企業の業務アプリケーション側から利用できるようにしたAPIの仕様。現在、14個のAPIが規定され、Parlay X Web Service 2.1として公開

高山 図3は、「Network Gatekeeper」のサービス・モデルの図です。Parlay Xは、当社の「Network Gatekeeper」とサードパーティ・アプリケーションの間に位置づけられた標準プロトコルとして利用されています。

Parlay Xのベースになっている技術はWebサービスです。HTTP、SOAP(※)などのWebサービスの技術を使って、キャリアのSMSや位置情報などのいろいろなキャリアのサービスをどういうインタフェースで貸し出すか、開放するかを取り決めた標準インタフェース技術です。

最新バージョンはParlay X 2.1で、規定としては14個のインタフェースが定められています。例えば、位置情報や3PCC(サードパーティ・コール・コントロール、第3者による呼制御)など、サードパーティがキャリアのサービスを利用するために開放するインタフェースや、サービスをコントロールするためのコマンドなどが、細かく規定されています。このようにParlay Xは、SIPと同様に、当社の製品と深く関わるので、当社はParlay Xの標準化への取り組みについても、かなり力を入れています。

SOAP:Simple Object Access Protocol、ソープ。XMLやHTTPなどをベースとした、他のコンピュータにあるデータやサービスを呼び出すためのプロトコル

図3 「Network Gatekeeper」のサービス・モデルの図(クリックで拡大)
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