[特集]

Q&Aで学ぶH.264/AVC(14):H.264/AVCの優れている点は?

2008/07/25
(金)
大久保 榮

このコーナーでは、最新のICT(情報通信技術)のキーワードをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
ブロードバンド時代の急速な進展を背景に、通信と放送の融合が注目され、本格的な画像コミュニケーション時代が到来しています。このような時代の要請に対応して、新しい「H.264/AVC」という画像圧縮技術が標準化され、国際的な注目を集めています。今回は、他の圧縮技術と比べてH.264/AVCの優れている点について解説します。

Q&Aで学ぶH.264/AVC(14):H.264/AVCの優れている点は?
Q14

Q14:H.264/AVCの優れている点は?

H.264/AVCはこれまでの画像圧縮技術に比べて、どのような点が優れているのでしょうか。弱点はないのでしょうか。
また、他の画像圧縮技術と比べて、圧縮率はどの程度でしょうか? それぞれの標準規格の圧縮率の目安を教えてください。

A11

≪1≫H.264/AVCの優れた点

H.264/AVCの優れた点は、圧縮符号化効率(圧縮率)の高さです。

例えば、MPEG-2やMPEG-4などの2倍以上の圧縮率を実現しています。逆の見方をすると、このH.264/AVCの標準化作業の目標として、従来の圧縮符号化技術に比べて格段に優れた圧縮率を達成することを掲げてきましたので、それができていなければ、新たな標準として成立していないということになります。

H.264/AVCは、現在考えられるすべての工夫を取り入れて、優れた圧縮符号化効率を達成しています。弱点は? と問われれば、たくさんの工夫を取り入れたために、処理が重くなっていることでしょう。

しかし、時間が経つにつれCPUやDSP(Digital Signal Processor、デジタル信号処理専用に開発されたプロセッサ)の処理能力は、「LSIの集積度は18カ月で2倍になる」というムーアの法則に従って向上していますので、この問題は近い将来解消していきます。

H.264/AVCは、符号化効率の向上に重きを置いてできた新圧縮標準ですが、新しい世代の動画像圧縮符号化標準は、圧縮率の向上だけでなく、新たな機能を実現するためにも作られます。

例えば、MPEG-1からMPEG-2への展開は、プログレッシブ(順次走査)画像だけでなくインターレース(飛び越し走査)画像を扱えるようにしたことが大きな変化です(「改訂版 H.264/AVC教科書」コラム①参照)。また、MPEG-2からMPEG-4への展開は、1枚の画面全体をそのまま圧縮符号化するのではなく、画面を構成している個々の自動車や人、あるいは画面の背景など、一つ一つのオブジェクト単位(圧縮しようとする対象物ごと)で圧縮符号化できる機能を実現したことが大きな変化です。

≪2≫圧縮率は一世代ごとに2倍ずつ向上

さらに、動画像圧縮符号化技術の進展を見てみると、非常に大ざっぱな目安として、動画像圧縮符号化標準は、1世代ごとに圧縮率が2倍ずつ向上してきたと言えます。具体的な例として次のようなものがあります。

[1]オーディオ・ビジュアル通信の場合

オーディオ・ビジュアル通信に用いられる動画像圧縮符号化標準は、H.261、H.263、H.264と3世代展開してきましたので、例えば、最初の標準H.261では384kbpsで実現していた品質をH.264では、4分の1の96kbpsで得ることができます。

[2]テレビ放送の場合

テレビ放送用の動画像圧縮符号化標準は、MPEG-2(ITU-TではH.262)、MPEG-4 AVC(ITU-TではH.264)と展開してきました。現在のデジタル放送ではMPEG-2によって4?6 MbpsでSDTV画像(SDTV:Standard Definition Television、広く家庭に普及している標準テレビ)を送っていますが、MPEG-4 AVCでは、その2分の1の2Mbps程度で可能になります。

※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:最新の情報圧縮技術〔H.264/AVC〕編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 H.264/AVC教科書」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。

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