≪1≫IPTV市場の展望とNTTぷららの戦略
■NGNの商用サービス開始を背景に、ITU-TのIPTV-GSI(※)におけるIPTVの勧告化への取り組み(※関連記事1)が大詰めを迎える一方、国内でもIPTVの国内仕様の策定を進める有限責任中間法人IPTVフォーラム(※)が発足(※関連記事2)するなど、IPTVの標準化は着々と進んでいます。NGNリリース2のキラーコンテンツと位置づけられているIPTVを取り巻く環境は整いつつあり、いよいよ本格的な市場が立ち上がろうとしています。そこで、IPTVの市場規模や御社の目指しているビジネスの方向性、あるいは業界の動向などをお聞きしたいのですが。
板東浩二氏
(NTTぷらら
代表取締役社長)
板東 今、まさにIPTVサービスのマーケットを拡大していくビジネス・チャンス到来ととらえています。当社はプロバイダ(ISP)事業もやっていますが、その事業は2008年3月末で会員数が265万人に達しており、そのうち光回線ユーザーが119万人と、光回線ユーザーの比率がすでに40%以上になってきていることが挙げられます。さらに、毎月、コンスタントに光回線ユーザーが増えており、50%を超えるのはもう時間の問題という状況です。図1に総務省の発表による国内のブロードバンド市場の伸びのグラフを示しました。図1よると、2008年3月末におけるブロードバンドサービスの契約数は2,875万、FTTHの契約数は1,215万となりました。
このように光のインフラが急ピッチで構築されていますので、IPTVのサービスを本格的に展開していく環境条件やビジネス条件が整ってきていると考えています。
※IPTV-GSI:ITU-TでIPTVの標準化を進める国際会議。2007年12月に解散されたFG IPTVの成果を受け継ぎ、勧告化へ向けた作業を行っている
※有限責任中間法人IPTVフォーラム:次世代ブロードバンドコンテンツ流通フォーラム内に2006年10月に設立され、2008年6月9日に解散された任意団体IPTVフォーラムの検討結果を引き継ぎ、新しいIPTVフォーラムが国内のIPTVの標準化を進めるため、2008年5月12日に法人登記された「有限責任中間法人」。放送、通信、家電メーカーなどの関連企業・団体・個人の17社・名が参加
※関連記事1「IPTVの標準化動向」:
ITUで進むIPTVの標準化会議をレポート。2006年7月の第1回FG IPTVから2008年4月の第2回IPTV-GSIまで掲載
※関連記事2「アクトビラからNGNにも対応する「IPTV」の統一規格を策定へ!」:
IPTVフォーラムの設立と、IPTVの国内標準の技術仕様の概要をレポート
■御社はADSLサービスも提供されていますね。ADSL向けの映像配信サービスはないのですか。
板東浩二氏
(NTTぷらら
代表取締役社長)
板東 現在では、ADSL向けのIPTV(映像配信)サービスは提供していません。
実は、4年ぐらい前に「4th MEDIA」というIPTV(映像配信)サービスを始めたのですが、その当時の当社のISPユーザーは、ADSLユーザーと光回線ユーザーの比率が9対1で、ADSLユーザーのほうが圧倒的に多い状況でした。このため、「4th MEDIA」でもADSLユーザー向けに帯域2.5MbpsのIPTV(映像配信)サービスを提供していました。
当初は、「4th MEDIA」のADSLと光ユーザーの比率は、ISPユーザーと同じ9:1の比率になると考えていましたが、実際にサービスを開始してみると、光回線のユーザーが9割でADSLユーザーは1割と、まったく逆の比率でした。
■IPTV(映像配信)サービスでは、ADSLと光回線のユーザーの割合が反対になったわけですね。
板東 そうです。結局、ADSLユーザー向けの「4th MEDIA」のサービスは、「4th MEDIA」を開始して1年あまりの頃、つまり今から3年ほど前に新規受付をやめ、その後半年ほどで提供をやめました。ですね。この経験から、IPTVというのは、光回線ユーザー向けのサービスであるというのがはっきりしました。
当時は、まだ光回線のユーザーは数が少なく、IPTVのユーザー数も伸び悩んでいましたが、ここに来てNTT東西の光回線ユーザーも1,000万人というところまできていますので、IPTVのサービスの中身をさらに充実させ、適正な料金で提供できれば、IPTVユーザーも確実に広がっていくのではないかと期待しています。
■IPTVの市場はどの程度のユーザー数まで拡大すると見込まれていますか。
板東 将来的にどれだけのユーザーを獲得できるのかというのは非常に難しいところですが、NTTグループの目標では、2010年に光回線を2,000万世帯にすることが目標となっていますので、IPTVユーザーとしては、そのうちの2割ぐらいはいくのではないかと予想しています。
■2割というと、400万世帯ですね。
板東 はい。全体では、それぐらいいくのではないかと思っています。
ただ、当社のIPTVのユーザー獲得計画では、図2に示すように2010年で110万人と見ています。この数字は、今後のビジネス環境がどう変化するか予測できない部分があることと、同時に、当社がIPTVサービスのビジネスを3年以内に黒字にするための損益分岐点が90万人という試算からきたものです。3年以内という期限で、2010年までに90万人をクリアし、さらに20万人をプラスをして110万人ということです。110万人を集めればビジネスとして確立できると考えています。
先ほども申しましたが、当社の期待としてはもっとユーザー数は増えていくとも思っていますので、この事業計画はビジネス環境を見ながら修正していくこともあります。
■先ほど、光回線ユーザー2,000万人の20%に当たる400万人がIPTVユーザーと見込まれるという話があったのですが、その400万とこの110万人は、どういう関係になるのですか。
板東 IPTVサービスは、当社だけがやっているサービスだけではなく、他社さんもサービスを提供していますので、市場全体の規模が400万ユーザーとみているということです。また、400万人というのは、あくまでも期待を込めた予測です。先ほど申し上げました通り、当社が目標とする110万人という数字は、ビジネス的な側面からいけば、90万人を超えれば黒字転換するということをベースに立てた目標です。