[スペシャルインタビュー]

NTTぷららのNGN/IPTV戦略を聞く(3):IPTVを牽引する「ひかりTV」と他のIPTVサービスの比較

2008/08/15
(金)
SmartGridニューズレター編集部

≪2≫「ひかりTV」はCATVとの競合ではなく、市場拡大の契機

■ CATVの場合はいかがですか。

板東 CATVの場合は、当社と同じように、トリプル・プレイということで映像、IP電話、インターネットの3つのサービスを提供しており、多チャンネル放送も強い面があると思います。これに対して、TVポータルやCSが提供しているのは、映像系サービスだけです。

ただ、CATVの場合、VoDサービスについては、ネットワーク・インフラの面で、当社のようなVoD5,000本を見放題といったサービスを提供するのは、すぐには難しいのではないかと思います。VoD見放題という話になれば、ユーザーからのアクセスが集中することがありますので、ネットワークの容量が問題になってきます。

■ そうすると、ひかりTVとCATVは、サービスが競合する領域が多いということですか。

板東 これは非常に大きな発見だったのですけれども、実際にユーザーにアンケート調査した結果、意外とそうでもないことがわかりました。図2に示したのは、アンケート調査の結果です。このアンケート調査は、既存の「4th MEDIA」のユーザー2,000人ぐらいを対象に行ったものです。


図2 NTTぷららによる放送サービスの利用状況についてのアンケート調査〔NTTぷらら資料より引用〕(クリックで拡大)


■ これはいつごろ行われた調査ですか。また、この調査結果を分析していただけますか。

板東 これは2007年秋ごろの調査です。「4th MEDIA」のユーザー2,000人にアンケート調査をした結果、過去にCS(衛星放送)とかCATVの多チャンネル放送をまったく使ったことがなく、「4th MEDIA」が初めて契約した多チャンネル放送だという人が7割もいました。一方、「4th MEDIA」の加入を契機に、それまで契約していたCSやCATVを解約した人は6%ぐらいしかいませんでした。また、「4th MEDIA」だけでなく、他の多チャンネル放送サービスとも契約しているという人は14%もいます。

このアンケート結果から想定できるのは、やはりIPTVのユーザーは、インターネットを中心としたユーザーが多く、CATVやCSのユーザーとは層が違うということです。

特に、「4th MEDIA」が初めて契約した多チャンネル放送だという人が7割もいることから、結果的に、当社がIPTVサービスを行うことによって、潜在需要や新しいユーザーを掘り起こしている面があるように思います。

■ 逆に、CATVが先細りになるという可能性がありませんか。

板東 CATVは、今までの長い間サービスを提供した経験による強みもあり、やはりCATVでなければというユーザーもかなりいると思います。また、コンテンツによっては、特定の事業者しか提供していないものありますので、あるコンテンツを楽しみたいという要求から、その事業者のサービスと契約するということもあります。そうなると、複数のサービスを同時に契約ということになります。

■ 映像系サービスというところでは、レンタル・ビデオ業者との関係についてはいかがでしょうか。

板東浩二氏(NTTぷらら 代表取締役社長)
板東浩二氏
(NTTぷらら
代表取締役社長)

板東 レンタル・ビデオとの関係は、今後、気になるところでもありますが、当社としてはIPTVならではの使い方やサービスを提供していきたいと考えています。例えば、「ひかりTV」では、見放題のVoDコンテンツを5,000本用意することにしています。

実は、「4th MEDIA」で提供していたサービス・プランに、レギュラープランというものがあります。これは、多チャンネル放送の約40チャンネルに加えて、VoDを月2本まで追加料金をなしで、無料で見られるというサービスです。

この2本という数値は、レンタルするビデオの本数平均が月に約2本だということが根拠になっています。ただ、「4th MEDIA」のユーザーは、実際には、月1本しか使わない方も多かったのです。無料視聴の期限が切れてしまう月末には、利用率がポンと上がるので、ユーザーがどのコンテンツを見ようかと選んでいるような形跡はあるのですが、1回見はじめてしまうと、面白くても面白くなくても、それでもう1本視聴したことになってしまうので、慎重に選ぶあまり月末になって時間切れになってしまうことが多い状況で、使いにくいところがあったためだと思います。

また、多チャンネル放送とVoDの同時接続率(ピーク時)を見ると、「VoD PPVタイプ」は大体2%ぐらいですが、「多チャンネル放送」のほうは多いときで10%ぐらいあります。一方、「VoD見放題タイプ」になると、利用率は「VoD PPVタイプ」よりももっと上がり、6%から7%ぐらいになってきます。見放題にすると、お金を気にしないで、見たいものを適当に選び、嫌だったらすぐやめればいいので、利用率が上がってくるのです。

そういうわけで、「ひかりTV」では、VoDで見放題のサービスを提供することにしたわけです。

■ 現在、日本のIPTV業界の中では、御社の「ひかりTV」のラインナップは同業他社に比べて突出しているとみていますか。

板東 そうですね。TVポータルとの違いでもありますが、IP放送とVoDをセットで提供していることが大きなポイントだと思います。このため、見逃し視聴とか、放送でやっているものに関連づけてVoDを提供するといった組み合わせができて、番組とかコンテンツの編成の幅が広がっている面があると思います。特にVoDについては約1万本をそろえて、なおかつ、その中の5,000本については見放題というのが、ユーザーに大きく受けていると思います。

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