[スペシャルインタビュー]

NTTぷららのNGN/IPTV戦略を聞く(3):IPTVを牽引する「ひかりTV」と他のIPTVサービスの比較

2008/08/15
(金)
SmartGridニューズレター編集部

≪3≫課題となるコンテンツの確保

■ 2008年4月に放送法が改正・施行され、NHKの番組配信事業が認められるようになりましたね。今、埼玉県の川口市にあるNHKアーカイブスでは、コンテンツのデジタル化作業が進んでいます。2007年3月現在、「NHKアーカイブス」には、保存されている番組は61万2000番組、ニュースは397万7000項目におよぶというように、NHKはコンテンツの宝庫のようなところですが、NHKのコンテンツと御社の関係はどうなのでしょうか。

板東浩二氏(NTTぷらら 代表取締役社長)
板東浩二氏(NTTぷらら 代表取締役社長)

板東 NHKは、2008年12月に過去のドラマや大型ドキュメンタリー番組、見逃し番組を視聴できるVoDサービスを開始する予定であると発表しています。これらは非常に魅力的なサービスですから、ぜひ「ひかりTV」ユーザーに「NHKオンデマンド」のサービスを提供したいと考えています。

■ そうすると、「NHKオンデマンド」のサービスによって、年末から来年(2009年)にかけて、そのようなNHKのアーカイブがどんどん御社のサービス上で提供されることになりそうですね。

板東 そうですね。これは今、調整段階ですから、具体的なサービス提供形態や時期などについては明言できませんけれども、だんだんそういう話になっていくと思います。

■ 現在は、「ひかりTV」のラインナップは、かなり充実していますが、そうしたコンテンツを集める際に、いろいろと複雑な著作権処理の問題など複雑なことがあるのではないでしょうか。

板東 当社が映像サービスを始めた当初は、こうした業界について詳しいスタッフがおらず、ほんとうに素人集団という形からスタートしました。ハリウッドのようなところにパイプを持った人間もいなかったものですから、いわゆるコンテンツ・アグリゲータ(コンテンツ収集業者)というところに頼んで調達してきました。しかし、すぐに自分でやるべきだということに気づきましたので、必要な人材を集め、現在は、自分たちで調達できるようになっています。

少々時間はかかりましたが、人的なネットワークができてくると、調達のやり方とかコンテンツ業界のルールなどもわかってきました。このような努力も含めて、NTTぷららが今、IPTVでいろいろなコンテンツを集めているということも知っていただけるようになりました。現在、コンテンツ・ホルダーと良好な関係を築きつつ、適切なコンテンツを適切な料金で提供していただけるように努力をしているところです。

ただ、放送でもVoDでも同じですが、コンテンツはまだ外国のものが多い状況です。

■ 現在は、日本のコンテンツよりも外国のコンテンツが多いということですが、その理由は何でしょうか。

板東 例えば多チャンネル放送では、ドラマやエンタテイメントチャンネルの「AXN」「FOX」、海外ドラマ専門チャンネルの「スーパー!ドラマTV」など、全部外国のドラマが中心です。ディズニー・チャンネルもそうですし、ニュースにしても、日経CNBCはありますが、CNN(米国)とかBBCワールド(英国)とか、ドキュメンタリーにしてもディスカバリー・チャンネルとかナショナル・ジオグラフィックと、やっぱり外国ものが多くなっています。

コンテンツを充実させるためには必要なことですが、結果的に、国内よりも外国に多くのお金を払っているわけです。しかし、本当は、もっと日本のコンテンツ市場にお金を払い、新しいものを作って、IPTVなどの新しいプラットフォームで配信していきたいと願っています。そうすることによって、日本のコンテンツ市場そのものが大きくなっていく方向に発展するのではないかと考えています。

当社としても、今あるコンテンツだけを提供しているだけでは、市場は広がりませんので、コンテンツ制作のノウハウのあるようなところとアライアンスを組んで新しいものを作り、できたコンテンツを配信していきたい。

実際に、アライアンスを組んで制作した番組もあります。

■ 具体的にはどのような番組なのか詳しく教えていただけますか。

板東 例えば、図3に示すような、「ネコナデ」というドラマがあります。テレビ・ドラマ・シリーズのもので12話あります。千葉、埼玉、神奈川といったローカル局で放映され、人気番組となりました。「ひかりTV」では、放送終了後にこれをVoDで配信しました。放送を見逃した視聴者は、VoDで好きなときに見ることができたわけです。この「ネコナデ」は、映画化もされ、2008年6月から映画館で上映されています。


図3 NTTぷららが共同制作したコンテンツの例〔NTTぷらら資料より引用〕(クリックで拡大)


■ この番組のように、御社がコンテンツの共同制作に対して投資をして、コンテンツを作っていくという可能性は、今後も結構あるのでしょうか。

板東 それは大いにあります。これからも積極的にやっていきたいと思いますね。

■ ありがとうございました。

「第1回 NTTグループのIPTV戦略の核となる『ひかりTV』」

「第2回 地上デジタル放送IP再送信を実現した『ひかりTV』」


プロフィール

板東浩二氏(株式会社NTTぷらら 代表取締役社長)

板東 浩二(ばんどう こうじ)

現職:株式会社NTTぷらら 代表取締役社長

【略 歴】
1977年4月 日本電信電話公社(現NTT)入社
1991年2月 九州支社 ISDN推進室長
1993年3月 長距離事業本部 通信網システム部 担当部長
1996年3月 マルチメディアビジネス開発部 担当部長
1998年7月 現職就任

【表彰等】

2001年5月 社団法人 日本インターネットプロバイダー協会 常任理事
2003年5月 電気通信協会 IT事業奨励特別賞 受賞
2008年   ブロードバンド・アソシエーション 理事


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