[特別レポート]

NGNのIPv6接続サービス方式が「トンネル方式」と「ネイティブ方式」に決定

2009/08/28
(金)
SmartGridニューズレター編集部

総務省は2009年8月6日、情報通信行政・郵政行政審議会電気通信事業部会において、同年5月19日に認可申請されていたNGNのIPv6インターネット接続契約約款変更案について認可した。その結果、「トンネル方式」と「ネイティブ方式」の2つがIPv6インターネット接続方式となった。
ここでは、去る2009年6月15日に三菱総合研究所(東京都千代田区)で行われた「IPv6普及・高度化推進協議会」主催のIPv4アドレス枯渇対応タスクフォース アクセス網WG(ワーキンググループ)による報告会「日本におけるIPv6インターネット・アクセス網の提供方式について」の内容を紹介しながら、この2方式について整理してみる。

NGNのIPv6接続サービス方式が「トンネル方式」と「ネイティブ方式」に決定

IPv4枯渇対応を遅らせないため、正確な情報のオープンな共有を

江崎浩氏 江崎浩氏

報告会の冒頭では、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース代表の江崎浩氏(IPv6普及・高度化推進協議会専務理事/東京大学教授)が、アクセス網WGの検討状況を説明した。アクセス網WGは、2009年の発足以来、主にISPとキャリアである通信事業者にハードウェア・ベンダなどの関係者を交え、IPv6アクアセス網に関する技術の情報交換を行っている。

江崎氏は説明の中で、1日におけるAレコード(IPv4アドレス)とAAAAレコード(IPv6アドレス)によるクエリー数(問い合わせ数)の比較データを参照し、約30%のエンドステーションがすでにIPv6に対応しているが、アクセス網がIPv6に対応していないためにIPv6のトラフィックが少ないとし、IPv4とIPv6を同時にサポートするアクセス網システムを作る必要があると述べた。この現状を踏まえたうえで、アクセス網WGでは、アクセス網とSOHOルータの仕様に関する理解を正確に、そしてオープンに共有し、IPv4枯渇問題への対応に遅れを取らないようにしたいと締めくくった。

1日におけるAレコードとAAAAレコードのクエリー数
グリーンがAレコードのクエリー数、ピンクがAAAAレコードのクエリー数を示す(クリックで拡大)

1日におけるAレコードとAAAAレコードのクエリー数

JAIPAとNTTによる、NGNとISPとの接続方法の協議内容を初公開

木村孝氏 木村孝氏

続いて、IPv4枯渇対応タスクフォース アクセス網WG事務局の木村孝氏〔社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)会長補佐 NGN-WG主査〕により、JAIPAがNTT東西と進めてきたIPv6インターネット接続サービスに関する協議について説明が行われた。この協議は、2008年4月以来、非公開で行われていたため、今回の報告会が、協議内容を一般に広く周知する初めての機会となった。

まず、協議開始の経緯として、2008年2月に総務省が提示した「NTT東西はIPv4からIPv6への移行に伴う諸課題について、ISP事業者等との積極的な協議を行う」という認可条件、2008年3月に情報通信審議会の答申で提示された「NTT東西においても、ISP事業者が、インターネット接続サービスのために利用者に対しIPv6アドレスを提供可能となるように技術的問題の解消について早急に検討することが必要」という指摘を受け、2008年4月にJAIPAが「次世代ネットワークにおけるIPv6インターネット接続サービス提供のための技術的方策に係る提案」を発表して始まったと語った。

JAIPAとNTT東西との協議について(クリックで拡大)

JAIPAとNTT東西との協議について

また、JAIPAとNTT東西が協議しているIPv6インターネット接続方式の案2(※1 トンネル方式による接続、後述)についての課題として、ユーザー側としてはHGW(ホームゲートウェイ)の前にアダプタが必要になり負担になること、ISP側としては従来の集約装置が使えなくなってしまうことなどを指摘した。

最後に、ISPのサービスの提供イメージとして、2011年4月からIPv6サービスを提供する予定だとし、IPv4サービスについては、2011年4月以降は、現在使用中のサービスは継続できるものの、新規サービスは提供しない予定だとした。サービスの提供価格に関しては、IPv6サービスにユーザーにとっての顕著なメリットがない限りは、値上げは難しいだろうとの見解を示した。

ISPの提供イメージ(クリックで拡大)

ISPの提供イメージ

※1 2008年4月のJAIPA(日本インターネットプロバイダー協会)の提案は、
[案1](トンネル方式-1):ISPがNGNを使いトンネル方式でIPv6インターネット接続を提供する方式、
[案2](トンネル方式-2):NTT東西がトンネルを提供し、ISPがIPv6インターネット接続を提供する方式、
[案3](ネイティブ方式):ISPがNGNへIPv6インターネット接続をアウトソースする方式
の3案であった。最終的に協議対象は、[案2]のトンネル方式と[案3]を改訂した[案4]のネイティブ方式の2方式に絞られた。

NGNにおけるISP接続サービスの実現方式:「トンネル方式」(案2)

次に、NTT西日本 サービスクリエーション部 フレッツサービス部門 アクセスサービス担当 担当課長の小松原重之氏により、NTT東西が接続約款変更申請を行い(2009年5月19日)、NGNにおけるISP接続サービスの実現方式について詳しい説明が行われた。

小松原重之氏 小松原重之氏

案2のトンネル方式による接続方法をユーザー側から見ると、HGW(ホームゲートウェイ)の前にアダプタを設置し、IPv6のトンネルを別に作ることによって接続する方式となっている。小松原氏は、このアダプタは、市中にあればそれを利用できるようにしたいとしているが、存在しない場合は、NTTで開発し、レンタルもしくは発売する予定であるとした。また、利用できるセッション数に関しては、現状のフレッツ 光ネクストでは、基本料金の中で2セッションまで利用できるようになっており、IPv6においても、その2つのセッションの中から使えるようにサービスを拡張したいと述べた。

トンネル方式による接続方法をISP側から見てみると、IPv4網終端装置とIPv6用の網終端装置は仕様が異なるため、新たにIPv6用の網終端装置が必要になる。また、IPv6用の集約装置も必要になるが、この集約装置については、IPv6用の網終端装置に機能を組み込めるよう、仕様を検討中だとした。

トンネル方式のサービスは、ユーザー側の仕様(UNI:User Network Interface、ユーザーとネットワーク間のインタフェース)から見ると、多くの部分がIPv4のサービス仕様と共通化される予定となっている。アドレス払い出し方式がIPv6では「半固定的割り当て」と説明しているが、確かに固定式のほうがユーザーにとっては便利である一方、引越しなどの際はIPアドレスが変更になってしまうなどの問題も起きるため、現状のIPv4サービスと同じく「動的または静的」という仕様になりそうだと述べた。

ISP側から見たサービス仕様(NNI:Network Network Interface、事業者間同士のネットワークとネットワークの間のインタフェース)としては、アドレスの払い出し方法は、ISPのRADIUSが指定したアドレスに対して払い出すこととし、プレフィックス長は固定で、値は標準化の動向により決定したいと語った。

マルチプレフィックス問題への対処方法案

また、参考として、NTT東西から振られるNGN網内サービス用のIPv6アドレスと、プロバイダ(ISP)から振られるインターネット接続サービス用のIPv6アドレスという2つのアドレスを、通信の際にどのように使い分けるかが課題となっているマルチプレフィックス問題(※2)への対処ついても説明が行われた。現状では、マルチプレフィックス問題への対処方法として、①NAT(Network Address Translator、ネットワーク・アドレス変換機能)方式、②ポート分離方式、③ソフトウェア配布方式の3方式が検討されている。

①のNAT方式は、NATでアドレスの変換を行う方式で、HGWがNATの機能を持ち、パソコンにISPのアドレスを渡すことによって解決する。②のポート分離方式は、HGWの物理的なポートを利用して、特定のポートの下に固定的にくくりつけ、特定のアドレスだけを払い出す方式である。この方式の問題としては、どちらのサービスも受けたい場合にポートの差し替えが必要になることで、サービスとして使い勝手が悪いと言える。③のソフトウェア配布方式は、パソコンのエンドソフトまで2つのアドレスを渡し、使い分けはソフトウェアで実現するという方式である。どのパソコンOSまでをカバーするかという問題などがあるため、実現は難しいとしている。

このように、マルチプレフィックス問題への対策は、これら3方式が考えられているが、一番実現可能性が高い①のNAT方式での検討が進んでいる。

※2 マルチプレフィックス問題:IPv6では、IPアドレスのネットワーク部はプレフィックスと呼ばれるが、このプレフィックスが、1つのノードに複数(マルチ)割り当てられることを、マルチプレフィックスと言う。ISPとNGNの両方が端末にそれぞれIPv6アドレスを配布する(複数のIPアドレスを配布する)ことで、正常に通信できなくなる現象が発生するが、これをマルチプレフィックス問題と言う。

マルチプレフィックス問題への対処方式(クリックで拡大)

マルチプレフィックス問題への対処方式

NGNにおけるISP接続サービスの実現方式:「ネイティブ方式」(案4)

次に、「トンネル方式」と同じく接続約款変更申請が行われている「ネイティブ方式」(案4)による接続の説明が行われた。

ネイティブ方式は、IPv4のISP接続を含む、既存のNGNサービスにオーバーレイするかたちで、接続事業者(3社)のアドレスをNGN網内のユーザーに直接割り振るという方法である。ユーザー側としては、接続事業者のどれか1つのアドレスが割り当てられるため、マルチプレフィックスの懸念がなく、NATが不要で、アダプタの設置も不要となる。なお、接続事業者数を3社としているのは、NGNと直接接続する接続事業者によるアドレスブロック数が増加すると、ルータで管理され経路情報数もあわせて増加することになり、4社以上になると、現在のひかり電話のQoS(Quality of Service、サービス品質)が保てなくなってしまうためだと言う。そのため、3社という接続事業者数は、現実的な数字となっている。

ネイティブ方式におけるNGNと直接接続する接続事業者数について(クリックで拡大)

ネイティブ方式におけるNGNと直接接続する接続事業者数について

ネイティブ方式のユーザー側のサービス仕様(UNI)としては、ISP契約をするユーザーは、NGN網内の通信、NGN網内の折り返しが可能となっている。また、ISP契約を行わない、インターネットは使わないというユーザーでも、NGN網内の折り返し通信は可能にする予定だと言う。このほか、事業者接続に関しては、今後、要望などを取り入れながら作っていきたいとしている。

ネイティブ方式のISP側の仕様(NNI)における接続場所は、NTT東日本・NTT西日本でそれぞれ1つとし、接続事業者のアドレス空間としては、収用可能な接続事業者は3社で、持ち込むアドレス空間は‘/23’としていると説明された。

IPv6家庭用ルータガイドライン

報告会の最後に、IPv6普及・高度化推進協議会 IPv4/IPv6共存WG IPv6家庭用ルータSWGの中川あきら氏(KDDI株式会社 IP統合技術本部IPネットワーク部統括グループ 課長補佐)によって、IPv6家庭用ルータガイドラインに関する説明が行われた。

中川あきら氏 中川あきら氏

IPv6家庭用ルータSWG(サブワーキンググループ)は、海外ではケーブルラボやブロードバンドフォーラム、IETFで検討が行われているのに対し、国内では業界内の各社が検討の必要性を感じているにもかかわらず、業界を横断した見当がされていないことが背景となり、設立に至ったと言う。SWGの目的は、インターネットの利用者がスムーズにIPv6環境に対応できるよう、ISPのIPv6サービス提供に必要な「家庭内ルータ機能のベースライン」をインターネット利用者の視点からまとめるため、家庭用ルータ・ベンダ、ISPおよびアクセス系事業者等の立場から検討し、国際的な動向を考慮することであると述べられた。

IPv6家庭用ルータSWGの2008年度の成果物として、家庭用ルータガイドライン0.9版を2009年5月22日にウェブで公開したこと、また、5月22日〜6月3日の約2週間に渡りパブリックコメントの募集を行ったことが挙げられ、パブリックコメントは、約60件が集まったと発表された。

なお、パブリックコメントなどを反映した「IPv6家庭用ルータガイドライン【第1.0版】」は、下記のURLで公開している。

IPv6家庭用ルータガイドライン【第1.0版】http://www.v6pc.jp/jp/upload/pdf/v6hgw_Guideline_1.0.pdf

また、2009年の活動としては、「ガイドライン1.0版の啓蒙」「ガイドラインの2.0版への改版」「国際対応」を掲げている。

SWGの2009年の活動(案)(クリックで拡大)

SWGの2009年の活動(案)

以上が本報告会の内容であるが、報告会後に行われた質疑応答においても、登壇者には、参加者からの質問を真摯に受け止め、なるべく多くの意見を今後の協議に反映させていきたいという意気込みが感じられた。

ネイティブ接続事業者の選定は、2009年12月

これらの経緯を経て、総務省は8月6日、NTT東西のIPv6インターネット接続契約約款変更案の認可申請案どおり、「トンネル方式」(案2)と「ネイティブ方式」(案4)の2方式を、12の要望事項が付記されて認可した。ネイティブ接続事業者数は、前述したとおり3社と限定されるため、8月21日までに接続事業者からの申し込みを受け付け締め切られた。申し込みをした事業者は4社以上であったと言われるが(NTT東日本広報)、4社以上の場合には、選定が行われる(2009年12月予定)。

トンネル方式とネイティブ方式
〔情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会(第12回)配布資料「申請概要」より〕
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トンネル方式とネイティブ方式

両方式のIPv6アドレスの払出者と接続事業者数
〔情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会(第12回)配布資料「申請概要」より〕
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両方式のIPv6アドレスの払出者と接続事業者数

申し込んだ事業者は、2009年11月30日までに、2009年6月末日時点の「インターネット接続サービス契約数等と、その合計数」を申し込み書とともに提出しなければならないが、その合計数の多い順から3事業者が選定される。サービス開始時期は、2011年4月以降、準備が整い次第としている。

ネイティブ接続方式における今後のスケジュール
〔情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会(第12回)配布資料「申請概要」より〕
(クリックで拡大)

ネイティブ接続方式における今後のスケジュール

2008年4月のJAIPAの提案以降、NTT東西との協議を重ね、いよいよ「トンネル方式」と「ネイティブ方式」の並存というかたちで認可されたが、これらの方式が、より多くの事業者にとってフェアなものになり、普及が進んでいくことに期待したい。

参考

・IPv6普及・高度化推進協議会
http://www.v6pc.jp/jp/

・IIPv4アドレス枯渇対応タスクフォース
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/

・IIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースアクセス網WG報告会の発表資料
http://www.kokatsu.jp/blog/ipv4/data/wg.html

・I次世代ネットワークにおけるIPv6インターネット接続サービス提供のための技術的方策に係る提案
社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/ipv6/pdf/080401_2_si4-4.pdf

・I情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会(第12回)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/yusei/denki_tsusin/17369.html

・I東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の第一種指定電気通信設備に関する接続約款の変更の認可(総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/17360.html

・I次世代ネットワークに関する情報(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/info-st/mutial/ngn/index.html

・I技術情報_次世代ネットワークのインタフェース条件等(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/open/ngn/interface.html

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