IPTV 放送と通信を連携させた新しい映像サービスを提供
DLNA Windows7やiPhoneで新ホームネットワークを構築
HD-PLC 電力線と情報網を統合してスマートグリッドを実現
≪1≫IPTVフォーラム:「放送通信連携IPTVサービス」の実証実験などをデモ
〔1〕放送局7社が「放送通信連携IPTVサービス」の実証実験
通信事業者、家電メーカー、放送事業者などによって設立され、IPTV受信機およびサービ氏の規格化とその普及を目指すIPTVフォーラム(2008年5月設立。社員・協賛会員74社)は、「テレビにネットをつなごう」をテーマに、「IPTVとは何か」から現在のサービスや近未来のサービスなどの展示を行った。IPTVとは、「テレビ」(放送)を「ネット」(通信:IPネットワーク)につないで、好きな時に映画や放送番組を視聴できるサービスである。
IPTVフォーラムは、各放送局(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、WOWOW)の協力を得て、近未来のIPTVサービスと言われる「放送通信連携IPTVサービス」の実証実験などを行った(写真1)。放送通信連携IPTVサービスとは、IPTV対応のデジタルテレビ受信機において、ブロードバンド通信回線経由で提供されるダウンロードやVODなどのオンデマンドサービスを、デジタル放送から提供される放送番組と連携させてコンテンツを楽しめるようにするサービスである。
例えば、気に入った連続ドラマを発見した場合に、地デジ対応TVリモコンの「d」ボタン(データ放送用ボタン)を押して、表示されたデータ放送画面から過去に放送された同じ連続ドラマ番組の過去回を選択し、VODで視聴できるようになるようなサービスである(データ放送はテレビ放送と同じチャンネルで放送されている)。
目前に迫った放送の完全デジタル化(2011年)とブロードバンドが織りなす新しいサービスとして大きな期待が寄せられている。
〔2〕CDN回線とインターネット回線によるIPTVサービスを展示・デモ
このIPTVサービスは、写真2に示すように、現在、2種類のネット回線によってサービスが提供されている。ひとつは、特定の通信事業者によって品質が管理され、閉じたネットワーク「CDN」(Content Delivery Network、コンテンツ配信網)と呼ばれるネット回線で、会場ではNTTぷららの「ひかりTV」がデモを行った。他のひとつは、オープンなベストエフォート型の品質の「インターネット」と呼ばれるネット回線で、会場では、Yahoo! JAPANとアクトビラがデモを行った。
すでに提供されている具体的なIPTVサービス例として、NTTぷらら(ひかりTV)がCDN回線による「IP再送信サービス」〔写真3(1)〕、「VODサービス」、「IP放送サービス」の展示・デモを行った。インターネット回線では、Yahoo! JAPANが「VODサービス」〔写真3(2)〕を、アクトビラが「ダウンロードサービス」〔写真3(3)〕と「VODサービス」などの展示・デモを行った。
例えば、写真4に示すように「IP放送サービス」とは、高速ネット回線(CDN)を用いて、衛星放送やCATVなどと同じように、多チャンネル放送を番組表の編成に沿って、視聴できるサービスである。このIP放送サービスには、「IPマルチキャスト」と呼ばれる技術が使用されている。なお、今回の各種のデモは、すでにIPTVフォーラムが策定した表1に示す技術仕様に基づいて行われた。
標準規格、運用規定(STD) | 仕様名 | 策定年月 |
---|---|---|
IPTVFJ STD-0001 | 概説1.1版 | 2009年9月16日策定 |
IPTVFJ STD-0002 | VOD仕様1.0版 | 2008年11月28日改定 |
IPTVFJ STD-0003 | ダウンロード仕様1.0版 | 2009年7月23日改定 |
IPTVFJ STD-0004 | IP放送仕様1.1版 | 2008年11月28日改定 |
IPTVFJ STD-0005 | 地上デジタルテレビジョン放送IP再送信運用規定1.1版 | 2008年11月28日改定 |
IPTVFJ STD-0006 | CDNスコープ サービスアプローチ仕様1.2版 | 2009年9月16日改定 |
IPTVFJ STD-0007 | インターネットスコープ サービスアプローチ仕様1.1版 | 2009年7月23日策定 |
IPTVFJ STD-0008 | 放送連携 サービスアプローチ仕様1.0版 | 2008年11月28日策定 |
IPTVFJ STD-0009 | BSデジタル放送IP再送信運用規定1.0版 | 2009年9月16日策定 |
その他の公開書類(DOC) | ||
IPTVFJ DOC-0001 | CDNスコープ VOD・IP放送テスト仕様1.0版 (1)テスト項目表/(2)テストシナリオ |
2009年2月16日策定 |
≪2≫DLNAアライアンス:Windows7やIPhoneで盛り上がる
マイクロソフトの新しいWindows7の発表や、iPhoneなどの新しいモバイル端末の登場を背景に、DLNAアライアンス(注1)は、DLNAガイドラインv1.5を搭載した多彩な機器によるデモを展開した(写真5)。これによって、家庭内のホームネットワークに接続された機器を楽しむ環境が大幅に拡張されてきたことをアピールし、注目を集めた。このDLNAアライアンスによって認定(ICV:Independent Certification Vender、DLNA製品の認定ベンダが認定)された製品は、すでに全世界で5,500を超え、引き続き増え続けている。
(注1):DLNA(Digital Living Network Alliance)は、パソコンやデジタル家電機器、モバイル機器などを、ホームネットワークで相互接続し共有できる環境を実現するために2003 年の設立され、そのガイドラインを策定する業界団である。DLNAアライアンスには、世界中から多彩な業界に属する200社以上が加盟している。
DLNAアライアンスは、ガイドラインv1.0(2004年6月)に続いて、2006年3月にガイドラインv1.5を発表、さらにモバイル関連の機能を強化したガイドラインv2.0がほぼ固まり、2009年中にも発表される予定となっている。
今回展示の中心になったDLNAガイドライン・バージョン1.5(v1.5)は、v1.0では「デバイスクラス」(DLNAに接続される各種装置の機能)を定義したが、v1.5ではこの「デバイスクラス」を包含した新しい「デバイスカテゴリー」を定義して機能を拡張し、従来の据え置き機器(HND:Home Network Device)だけでなく、携帯(モバイル)機器(MHD:Mobile Handheld Devices)にも対応できるよう拡張したことが大きな特徴となっている。
〔1〕ロヴィ社:Windows7「Play To」に対応したDLNA製品をデモ
米国のロヴィ社(旧マクロヴィジョン社)は、DLNAv1.5対応の同社のメディアネットワーキングソフトウェア「コネクテッドプラットフォーム(Connected Platform)」を使用したデモを展開(写真6)。ユーザーは、Windows7の「Play To」(リモート再生)機能に対応した最新版の「Connected Platform」を搭載した各デバイスで、マイクロソフトの最新OS「Windows7」を搭載したパソコンに格納されている映画、テレビ番組、音楽、写真などのコンテンツを、検索したり、再生したりできる。
具体的には、2009年9月に発売されたWindows7対応の「Connected Platform」を搭載したオンキョーのオーディオアンプ(AVセンター)の新モデル「TX-NA5007」(今回はUSモデルを展示)を用いて、デモが行われた。このアンプはDLNA v1.5に対応し、世界で初めて「Compatible with Windows 7」認証を取得している。
通常は、オーディオアンプからサーバを見に行って、そのサーバからコンテンツ(曲)を探してプレイするのが従来のDLNAでの普通の使い方であった。Windows7に対応したことで、Windows7パソコンがコントローラ(DMC:Digital Media Controller)となり、Windows7パソコンから同じホームネットワークに接続されている各サーバ(Windows7パソコンも含む)にアクセスして、曲を選択することができ、さらにそれをどのプレーヤ(アンプあるいはスピーカなど)で再生させるかも選択できる。これによって、家庭の中にバラバラになって、いろいろな所(サーバ)に存在するコンテンツをすべてWindows7パソコンでコントロールして、オーディオアンプで再生できるようになった。
〔2〕アルファシステムズ:iPhoneの操作性で楽しむDLNAライフをデモ
アルファシステムズでは、iPhoneの操作性を活かしたDLNAライフのデモを展開し、注目を集めた。具体的には、iPhoneを使って、写真7(1)の右端に示す著作権保護技術「DTCP-IP」(注2)や地デジ/HDコンテンツ対応のメディアサーバ〔NASサーバ。写真7(2)(注3)〕に入っているコンテンツを、テレビ画面に同時に2本同時配信するなどをデモした。
(注2):DTCP-IP:Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol、IPネットワーク内で、DRM(著作権保護技術)で保護されたコンテンツを伝送するための技術
(注3):DLNAでは、メディアサーバ(NASサーバ)のことをDMS:Digital Media Serverという。
iPhoneは、NASサーバのコンテンツを再生するためのプレーヤ(DLNAではDMP:Digital Media Playerという)になる。そのため、iPhoneはアルファシステムズが開発した「メディアリンクプレーヤ(MLP)」(Media Link Player for iPhone)というソフトをApp Storeからダウンロードして使用する。これによってiPhoneは、DLNAのプレーヤ(DMP)となり、iPhoneの画面にNASサーバに格納されているいろいろなコンテンツを表示〔写真7(3)〕させて選択し、視聴したいコンテンツをテレビ画面に再生できる。
このMedia Link Player(MLP)は、iPhone 3G/iPod touch(OS2.0以降)上で動作し、DLNA v1.5 Mobile Digital Media Player(M-DMP)機能に対応した、メディアプレイヤー・アプリケーションである。iPhoneは、LAN上のDLNAサーバとはWi-Fi(無線LAN)で接続し、DLNA(NAS)サーバに蓄積されたデジタルコンテンツを再生することができる。対応のメディアフォーマットは、画像:JPEG、音声:MP3/AAC、映像:MP4となっている。現在、無料版のMedia Link Player LiteをApp Storeで配信中。なお、現在、Windows Mobile版を開発中とのこと。
≪3≫HD-PLCアライアンス:スマートグリッドもアピール
CEATECでは、国内外のアライアンス会員企業および「HD-PLC」を採用している企業が,HD-PLCアダプターやPLC関連機器などをアライアンスブース(写真8)に出展してアピールした。
HD-PLC(High Definition Power Line Communication、高速電力線通信)とは、家庭内にすでに配線されている電線とコンセントを、LAN配線の代わりに使用する通信方式で、2004年にパナソニックが提唱した、高速なPLC(電力線通信)方式の名称。現在の規格は最大210Mbpsの高速な規格となっている。また、HD-PLCアライアンスは、HD-PLCを普及拡大し通信の互換性の確保を目的として、2007年9月25日に設立され、2009年7月1日現在20社が加盟している。
HD-PLCのメインブースでは、パナソニックが中心となって、インターネット対応デジタルテレビと室内のルータの間をPLCで接続し、テレビでインターネット上のビデオ映像サービスを楽しむことができる「HD-PLC」の事例(写真9)を展示し、さらに電気自動車への活用例「HD-PLCホームリンク」や、今話題の「スマートグリッドの家庭内活用事例」(写真10)などのデモンストレーションも行われた。
会場には、参考出品ながらスマートグリッドを実現するために必要な、HD-PLC対応の電力メーターやHD-PLC小型モジュール「NMDPM235」シリーズ〔写真11(1)、表2〕、HD-PLC対応の柱上電力基地局〔写真11(2)〕などが展示された。柱上電力基地局は、電力会社の送電線と家庭への配電線の間の電柱上に設置される。さらに、HD-PLCのコンセントを用いて模型の電気自動車(写真12)のバッテリーへの充電状況や、バッテリーの寿命検査なども可能性となることもアピールした。
インタフェース | 項 目 | 内 容 |
---|---|---|
PLCインタフェース | 仕様周波数帯 | 2MHz~28MHz |
変調方式 | ウェーブレットOFDM方式 | |
通信速度(物理速度) | 最大210Mbps | |
誤り訂正方式 | 畳み込み符号とリードソロモンの連接符号 | |
通信可能距離 | 最大200m | |
実行通信速度 | UDP:最大90Mbpa、TCP:最大65Mbps | |
セキュリティ | AES(最長128ビット)での暗号化 | |
ネットワークに接続できるモジュールの数 | 最大16台(推奨):マスター1台、ターミナル15台 | |
LANインタフェース | IEEE802.3ほか多数の規格に準拠 |
--次回につづく--