<CEATEC JAPAN 2010レポート:前編>
NTTドコモ:最大75MbpsのLTEサービスを開始へ!
≪1≫2017年にトラフィックは200倍に増大(2007年比)
総務省の情報通信審議会の予測によれば、2017年に通信トラフィックは、2007年比で200倍に増大すると予測されている(写真①)。これは、ハイビジョン映像など高画質なトラフィックだけでなく、iPhoneやiPad、Android端末などの映像コンテンツを頻繁に使用するスマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及による影響も大きい。また、これらは、モバイル(あるいはクラウド)環境で使用されるケースが多いところから、次世代モバイル・ブロードンバンドへの期待が急速に高まってきている。
事業者別 | システム別 | 契約数 | PHS含む〔%〕 |
---|---|---|---|
NTTドコモ | PDC | 1,954,200 | 1.6 |
au | cdmaOne | 186,300 | 0.2 |
NTTドコモ | W-CDMA | 54,940,400 | 46.1 |
ソフトバンク | W-CDMA | 23,474,200 | 19.7 |
EMOBILE | W-CDMA | 2,740,800 | 2.3 |
au | CDMA2000 1x | 32,104,900 | 26.9 |
携帯電話総計 | 115,400,800 | (96.8) | |
PHS契約数総計 ウィルコム |
3,777,700 | 3.2 | |
携帯電話・PHS 契約数合計 | 119,178,500 | ||
BWA(WiMAX)契約数総計 UQコミュニケーションズ |
337,100 |
また、日本の市場だけを見ても、表1に示すように、携帯電話・PHS・WiMAXの契約数は日本の人口とほぼ同数の1億2千万に達しており、今後、自動販売機やITS、デジタル・カメラ、スマートグリッドなどにおけるマシン・ツー・マシン(M2M)・コミュニケーションの市場が立ち上がってくると、さらに加速度的にトラフィックの増大が予測される。
このような背景のもとに、3GPPやIEEE 802.16などモバイル関係の国際的な標準化組織では、次世代モバイル・ブロードバンド規格として、現在の10倍から100倍もの高速を実現する、LTEやLTE-Advanced、802.16m(WiMAX 2)などの標準化が精力的に進められてきた。
そして、2010年後半を迎えた今日、これらの標準化はいよいよ実用期を迎え、具体的なサービス提供の開始や、動態(トライアル)デモが行われるようになった。
CEATEC JAPAN 2010でも、NTTドコモとUQコミュニケーションズから次世代のモバイル・ブロードバンドの展示があり、大きな注目を集めたので2回に分けて紹介する。
≪2≫NTTドコモ:次世代モバイルサービス「Xi」(クロッシィ)をデモ
NTTドコモ(写真②)は、12月から提供する次世代モバイル・ブロードバンド「LTE」サービス「Xi」(クロッシィ)を、イメージ展示し注目を集めた。サービスインが間近い微妙な時期ということもあり、具体的な端末機器や料金体系の発表は、具体的にはなかったものの、LTEによる新しいモバイル・ブロードバンドのイメージを強くアピールした。
LTE(Long Term Evolution)は、光ファイバ並みの100Mbps以上の高速な次世代モバイル・ブロードバンドの実現を目指して、2008年12月に、3GPP(第3世代移動通信規格を策定する組織の一つ)で標準化された規格で、すでに2009年12月に開始されたスウェーデンのテリアソネラのサービス提供を皮切りに、今年から来年にかけて続々と世界各国で、LTEサービスが開始されようとしている。
NTTドコモの新しいLTEサービスのブランド名である「Xi」(クロッシィ)の「X」は、「人、物、情報のつながりや、無限の可能性」を意味し、「i」は「イノベーション(innovation)、私」を意味して命名された。
≪3≫FOMAエリアの上にLTEサービスを重ねて展開
「Xi」(クロッシィ)は、高速・大容量・低遅延(パケットが相手に届くまでの時間が小さいこと)を実現しており、12月からは、3GPPにおけるリリース8(2008年12月標準化)という仕様の「端末カテゴリー3」という規定に準拠し、下り最大75Mbps、上り最大37.5Mbpsの伝送速度のサービスが提供される予定となっている(写真③)。
この「Xi」(クロッシィ)は、既存のサービスであるWCDMAベースのFOMAのエリア上に重ねてサービスが展開されるため、「Xi」(クロッシィ)がサービスされているエリア内では、高速大容量(モバイル・ブロードバンド)通信が可能となる。なお、最新のFOMAハイスピードエリア内では、受信時(下り)最大7.2Mbps(HSDPA)、送信時(上り)最大5.7Mbps(HSUPA)の高速パケット通信が可能になっている。
今後のサービス展開は、写真④に示すように、まず2010年12月に、東京・名古屋・大阪地区からサービスを開始、2011年度中に県庁所在地級都市へ拡大(基地局:約5,000局)し、2012年度中に全国主要都市へエリア拡大(基地局:約15,000局)を予定している。
≪4≫150メガバイトのハイビジョン映像をダウンロード・再生のデモ
会場では、150メガバイトのサッカー・ダイジェスト版(ハイビジョン映像)を用いた大容量動画ファイルのダウンロード・再生のデモが行われた(写真⑤)。具体的なダウンロード時間は、ハイビジョン映像にもかかわらず、20秒程度と高速であった。このため、ユーザーが長距離移動時の前のわずかな空き時間に、フルハイビジョン映像を短時間にダウンロードして移動中にそれを見ることも可能となる。
「Xi」(クロッシィ)対応端末は、まずデータ通信端末の提供から開始され、2011年にはハンドセット型の提供が予定されている。
≪5≫クラウド環境で同時通訳サービスのデモを展開
以上のほか、今後、「Xi」(クロッシィ)の高速・大容量・低遅延の特性を生かしたいろいろなサービスが登場してくると期待されている。そこで会場では、今後、LTEが海外でも普及し、「Xi」(クロッシィ)の海外ローミングが行われることを想定し、クラウド(インターネット上のサーバ群)上にある同時通訳サービスを利用して、海外の本社(例:ロサンゼルス)と日本側のプロジェクトの進捗状況の報告を行うデモが行われた(写真⑥)。
端末に負荷をかけることなく、クラウド(サーバ)上での高速処理によって瞬時(ほぼ同時に)に翻訳が可能となるため、海外の本社と日本語によるコミュニケーションがスムースの行えることが現実的なってきたことを実感させた(写真⑦)。
なお、「Xi」(クロッシィ)は、今後、使用する周波数帯域幅を拡張するなどして、100Mbps以上の伝送速度が提供される予定となっている。
次回は、UQコミュニケーションズによる次世代の超高速な「WiMAX 2」(最大330Mbps)のデモを紹介する。
(つづく)