≪1≫ 重要な物理的ネットワークの多様性
〔1〕物理的なソリューションは1つではない
■ 次に、ITUあるいはTTCが目指す次世代に向けた標準テーマについてお伺いします。現在、バッググランドとして、通信と放送の融合があったり、有線と無線の統合が実現したりして、技術の連携や融合が急速に深まり、あらゆる分野で新しい歴史が拓かられようとしています。そのような中で、スマートグリッドをはじめ、クラウドコンピューティング、フューチャーネットワーク(FN)、スマートカー、次世代ホームネットワーク(HN)などの新しい分野がどんどん研究開発され、実用化され、新しい時代を迎えようとしていますが、どのようにとらえておられますか。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 まず、無線を使うか、有線を使うかは、ユーザーがネットワークにアクセスするときの物理手段ですから、歴史が語っていますように、日進月歩という形でどんどん進化発展していきます。そうすると現在、いくらベストだと思っても、3年や5年もたつと必ず次のアイデアやソリューションが出てくるので、何か物理的なソリューションを1個に決めるというのは結果的には無理があるのです。ですから、たとえ有線と無線の統合といっても、無線にも例えば、Wi-FiやWiMAX、LTEなどがありますし、有線でも光や同軸ケーブル、メタルなどがあります。また、それらにはいろいろな速度があり、要求条件によって使い分けられています。
〔2〕「どんな情報を流すか、情報をどう管理するか」が重要
前田 重要なことは、そういう物理的なネットワークは、いろいろと多様性のものを残しておくこと、そのうえでそれらの統合を実現する際には、結局、
(1)そこにどのような情報を流すのか
(2)それらの情報をどのように管理するか
というルールのほうが重要なのです。そこに横断的に横たわるのが、セキュリティのメカニズムや、電話の場合は電話番号、コンピュータの場合はID、インターネットではIPアドレスなどの要素なのです。統合に必要なのはそのような要素であって、物理的なネットワークなどは、最新のものをタイムリーに使用していけばよいのです。ところが、これらの位置づけが、中途半端であったり、どの省庁が管轄しているかなども含めて制度的なことからも、不明確のまま「統合、統合」と言われてきたのかなと思っています。
■ なるほど。
≪2≫デジュール機関「ITUとISO、IEC」の戦略的連携が重要
前田 そういう意味では、ITUにも標準化組織として、有線系のITU-Tと無線系のITU-Rがありますが、これらも有機的に役割分担を明確にしながら、さらに連携を深めていく必要があると思います。さらに、図1に示すように、ITU-Tと並ぶデジュール機関として、ISOとIECがありそれぞれ異なるミッションをもっていますが、私としては、国際連合のもとでのデジュール機関であるITUと、ISOやIECが同じ方向性のテーマを連携して戦略を立てることが、必要だと思います。その具体的なテーマとしては、例えば、スマートグリッドでも、スマートカーでもよいのです。
そのように戦略的に取り組んでいかないと、もう有線と無線のコンバージェンス(統合)などというのは、本質的に無理ではないかと思います。このようなことから、現在、私はSG15議長として、幸いにITU-Tの企画や戦略をサポートするマネジメント部門にかかわっているので、そういったISOやIECと共同で行う枠組みをバックアップするよう取り組んでいます。
現在、このような連携した活動が求められていますし、その中で今スマートグリッドやITS(スマートカー)などの自動車関係、さらに、IoT(Internet of Things)などの業際分野にも取り組んでいくつもりです。すなわち、これからは、ICT業界の人たちだけでなく、電力業界、自動車業界、家電業界などいろいろな業界の人たちも含めた業際的な分野の標準化を進めていく必要があるのです。そのためには、まず大きな上の傘のほうでは、ITUとISO、IECが連携して方向性を示し、その中で、それぞれが役割分担を果たしながら、「ほんとうのグローバル標準」を作り上げていくことが重要と思っています。
≪3≫デジュール機関とデファクト機関の連携
■ そのような連携を進める中で、ITUやISO、IECなどのデジュールの標準化組織との連携だけでなく、前述の図1に示すように、IETFやIEEE、W3Cなどのデファクト標準化組織の間ともうまく連携していく仕組みが重要と思います。とくに、スマートグリッドやクラウドコンピューティングのような、あらゆる産業に影響を与える標準化の場合は重要と思いますが、いかがでしょうか。
〔1〕ITU-TとIECの密接な連携
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 はい。それではまずデジュールの世界から具体的にお話ししましょう。例えば、現在私が議長を務めているITU-T SG15(光伝送網およびアクセス網基盤)の標準化活動では、IECとの間で非常に密接な連携が行われています。
光ネットワークの分野には、光ファイバの規定や試験法をはじめ、光系モジュールなど多岐にわたる標準(規格)がIECで規定されています。ITU-T SG15としては、IECと重複する同じ標準を決めようという考えはまったくありません。ITU-Tとしては、システムサービス要求条件を明確にし、そのシステムの個々の中にIEC標準のデバイスや部品が使用されるという関係ですから目的が異なるのです。
〔2〕目的が重複する標準の場合:「MPEG-2」と「H.264」の例
■ 目的が重複する標準のような場合は、どうされるのでしょうか。
前田 そうですね、身近な例として画像圧縮方式(符号化方式)の例を見てみましょう。例えば、有名なMPEG-2やH.264などの画像圧縮については、
(1)通信の側(ネットワークの効率的利用)すなわちITU側からも、
(2)コンピュータの側(コンテンツの圧縮)すなわちISO側からも、
標準化が取り組まれました。デバイス的(オーディオ・ビジュアル機器等)なアプローチで使いたい人(ISO)もあれば、符号化方式(圧縮方式)をシステムとして規定したい人(ITU)たちもいるのです。
そこで、デバイス的アプローチを目指した人々は、ISOとIECが共同でJTC1(注1)を設立し「MPEG-2」(ISO/IEC 13818)を完成させましたが、これはITUでも必須の規格ですので、同じドキュメント(同じ仕様書)をITUでは「H.262」として標準化(勧告化)しました。
逆に、ITUが主体となって作成したMPEG-2の2倍以上の圧縮効率をもつ「H.264」という標準は、ISO/IECでは、ITU-Tの「H.264」と同じ仕様書をそのまま「MPEG-4 AVC」(ISO/IEC 14496-10)として、標準化されました。それぞれ「H.262」ではなく「MPEG-2」という用語で普及し、また「MPEG-4 AVC」ではなく「H.264」という用語で普及しているのも、このようないきさつもあるのです。
このように、同じ仕様書(スペック)を両方の組織でそれぞれの流儀で番号を決められて、使いあうというアプローチもあるわけです。標準化組織が対抗したり、競合するというのはユーザーにとって何のメリットもないことなので、そのようなコーディネーション(調整)をきっちりすることは、標準化組織のきわめて重要なミッションだと思います。
注1:ISO/IEC JTC1:ISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)とIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)という2つの国際標準化機関が合同で設立したJTC1(Joint Technical Committee 1、第1合同技術委員会)という組織。
〔3〕デジュール標準とデファクト標準
■ なるほど、デジュールの世界は理解できました。それでは、IETFやIEEEなどのデファクト標準の組織とITUやISO、IECなどのデジュール標準(国際標準)の間で、競合したり衝突するようなことはないのですか。
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 それは場合によってはありますね。ケースバイケースです。例えば、ADSLの場合です。ADSLは、今でこそ標準はすべてITUの国際標準(仕様)になりましたが、それ以前は、いろいろなフォーラムや、IEEEなどのグループが、いろいろとADSLやVDSLの統一仕様をつくろうと議論しましたが、結局決裂してしまったのです。その最終的な標準化の処理を行うため、ITUにみんなが集まって一本化されることになったのです。これは、標準化を目指す人々の知恵でもあったのです。
また、標準化については、例えば、IEEEの場で標準化するほうが標準化しやすい立場にいるベンダーや、あるいはビジネス展開をリードしたい人たちは、自分たちが一番動きやすい標準化組織をベースにして標準化を行うのがよいのです。もちろん、どのような標準化の場合も、途中の過程では一部バッティングはあると思いますが、基本的には、ユーザーから見て、複数の標準が混在しても相互接続が保証される標準(仕様)であれば、それは複数の仕様を容認すればよいのです。
≪4≫3つのPLC規格の乱立と次世代PLC「G.hn」の登場
■ 具体的に何か身近な例がありますか。
前田 例えば、PLC(Power Line Communication、電力線通信)規格などはそうですね。
PLCについては、
(1)HomePlug方式:HomePlug Powerlineアライアンスが策定したPLC規格
(2)HD-PLC方式:HD-PLCアライアンスが策定したPLC規格
(3)UPA方式:UPA(Universal Powerline Association)で策定されたPLC規格などの規格
が、既存の技術として乱立していました。それぞれは素晴らしい方式かもしれませんが、ユーザーに不都合が生じる(不利益を与える)場合は、けんかしてでも統一ルールを決めないといけません。ITU-Tでは、これらの技術をもとに仕様を統一した次世代版PLCとして、ITU-T G.hn方式(ITU-Tで勧告化されたPLC規格)の仕様化を行いました。
〔1〕IEEE:「IEEE Std 1901-2010」標準を策定
これに対して、IEEEのIEEE P1901ワーキンググループは、2010年10月に、PLCをBPL(Broadband over Power Line、高速電力線通信、100Mbpsを超える物理速度)という名称で、HomePlug方式とHD-PLC方式の両方の方式を、「IEEE Std 1901-2010」として、次のように標準化しました。
この「IEEE Std 1901-2010」標準には、異なるPLC方式を共存可能とするISP(Inter-System Protocol、共存方式プロトコル)も標準化されています。
〔2〕ITU-T:次世代版PLC「G.hn」標準を策定(3つの勧告)
前田 一方、ITU-TのSG15でも2010年6月に、前述した次世代版のPLC規格を「G.hn(home network)」として、次の「G.9960」、「G.9961」、「G.9972」という3つの勧告(標準)を策定しました。
ここに示すように、このITU-Tの勧告にも、「IEEE Std 1901-2010」標準など、ほかのPLC規格とも共存可能となるように、「G.9972」勧告(共存プロトコル勧告)が策定されています。
〔3〕ITU-T:スマートグリッド管理用「G.hnem」標準(2つの勧告)を策定へ
前田 さらに、ITU-Tでは、2011年後半を目指して、スマートグリッド用のスマートメータ通信基盤(AMI)と有線HAN(Home Area Network、ホームネットワーク)の管理用規格(低速用PLC規格としても利用可)として、次のような、最大伝送速度1Mbpsの「G.hnem」(Home Networking Aspects of Energy Management)規格の策定を行っています。
これらの、ITU-TにおけるPLC標準の関連を示したものが図3で、各標準で使用される周波数帯の関連を示したのが図4です。
≪5≫「ITU-T G.hn」と「IEEE Std 1901-2010」の共存
前田 洋一氏
(TTC 専務理事)
前田 ここまでは、異なる標準化団体の規格が共存可能となるようにする標準化の仕組みを説明しました。具体的には、IEEE P1901で策定された、「ISP」(Inter-System Protocol、共存方式プロトコル)は、前述した2種類(HomePlug 方式とHD-PLC方式)のBPL(Broadband over Power Line、電力線通信)や、ITU-TのG.hn等を共存させることができるプロトコルです。一方、前述したように、IEEEのISPと同じ共存方式プロトコルが、ITU-T G.9972として勧告化されています。
したがって、具体的には、
(1)IEEE 1901機器にIEEE 1901標準のISPを実装させ、
(2)ITU-T G.hn機器にITU-T勧告G.9972を実装させれば、
IEEE 1901標準のホームネットワーク(PLC)とITU-T標準のホームネットワークが、同じ電力線上で、互いに干渉しあうことなく、同じ方式の機器間での通信ができるようになるということです。これは、最近の例ですが、今後も、ケースバイケースで、このような共存環境が実現されていくと思います。
■ これまで、ホームネットワークの環境は、それぞれの規格が乱立していたため、同じ家庭でも機器が異なると相互干渉をしたりして、普及しにくいところがありましたが、次世代ホームネットワークの環境では、共存できるような仕組みが出てくると期待が持てますね。
前田 今後、ぜひとも、ユーザーさんに喜ばれる、次世代ホームネットワークの仕様を提供していきたいと思います。TTCやITUの役割は、いろいろな技術や仕様を認める方向を許容しながら、共存できるようそれらに共通のもの(プロトコルなど)を規定することが必要な方向だと思っています。
≪6≫NISTのメンバーも迎えて活発化するITU-Tのスマートグリッド
■ ITU-Tにおけるスマートグリッドの審議はいかがでしょうか。
前田 ITUのスマートグリッドへの取り組みは、正式には、2010年2月にスイスのジュネーブで開催されたITU-Tにおける電気通信標準化のアドバイザリーグループ「TSAG」(Telecommunication Standardization Advisory Group)の会合で、FG Smart(Focus Group on Smart Grid)を設立することが承認されました。このFG(フォーカスグループ)という組織は、ITU-Tの正式なSG(研究委員会)で標準化の審議を進める前に、スマートグリッドの課題等を検討し、整理する特別な組織です。
表1に示すように、FG Smartは、2010年6月の第1回会合を皮切りに、現在(2011年7月)まで7回ほど開催されています。また、表1に示すように、スマートグリッドについては米国のNIST(米国国立標準技術研究所)が国際的にも先進的な役割を果たしているところから、FG Smartの副議長としてダビッド・スー(David Su氏)が就任しています。David Su氏は、NISTのANTD(Advanced Network Technologies Division)のチーフであり、また、スマートグリッド関連の標準を開発するために、その優先順位を決める行動計画「PAP」(Priority Action Plans)でも活躍されています。FG Smartでの検討結果は、NISTとの整合化が図られたものになると期待しています。なお、図5に、ITU-T FG Smartで検討されているスマートグリッドの機能アーキテクチャを示します。
会合 | 開催日 | 内 容 |
---|---|---|
FG Smart設立承認 | 2010年2月 | スイスのジュネーブで開催されたITU-TのTSAG(Telecommunication Standardization Advisory Group)会合で、設立を承認。 |
第1回 | 2010年6月14~16日 | ジュネーブ。第1回会合で、米国NISTから副議長を迎え、副議長は4名体制となる。 •議長 : Les Brown(Lantiq、ドイツ) •副議長: Li Haihua(MIIT、中国) •副議長: Hyung-Soo(Hans)Kim(Korea Telecom、韓国) •副議長: 櫻井義人(日立、日本) •副議長: David Su(NIST、米国) |
第2回 | 2010年8月2~5日 | ジュネーブ。3つのWG(ワーキンググループ)を設置(各WGで成果文書を作成する) |
WG1 スマートグリッドのユースケース | ||
WG2 スマートグリッドの要求条件 | ||
WG3 スマートグリッドのアーキテクチャ | ||
第3回 | 2010年10月11~15日 | ジュネーブ |
第4回 | 2010年11月29日~12月3日 | 米国・シカゴ。SGIP/Grid-Interop2010との同時開催。(SGIP:Smart Grid Interoperability Panel。NIST が2009 年秋に立ち上げたスマートグリッド相互接続性パネル) |
第5回 | 2011年1月10~14日 | 日本・横浜(三菱電機がホスト役) |
第6回 | 2011年4月4~8日 | フランス・ソフィア・アンチポリス。ETSI Workshop on SmartGridと同時開催 |
第7回 | 2011年6月9~15日 | 韓国 済州島。各WGで成果文書(デリバラブル)の第0版完成が目標 |
第8回 | 2011年8月 | 開催予定 |
第9回 | 2011年12月 | 最終会合となる予定。2012年1月に開催される予定のTSAG会合で、FG Smart終了後のITU-T内での検討体制が、正式に決定される予定。 |
≪7≫日本のTTCのスマートグリッドへの取り組み
〔1〕TTC内にFG Smart WG(ワーキンググループ)が発足
■ TTCはどのような体制で進めているのでしょうか。
前田 ITU-TのFG Smartの活動内容に対応する国内での検討体制として,TTC内はすでに、2010年10月に「スマートグリッドアドバイザリグループ」〔略称:AG Smart、リーダー:富田二三彦(NICT/TTC)〕を設立しています。さらに、その活動を強化するため、2011年3月、アドバイザリグループ内に、FG Smart WG〔ITU-T Focus Group on Smart Grid対応ワーキンググループ(主査:丹康雄、北陸先端科学技術大学院大学)〕が設置されました。
その具体的な活動として、スマートグリッドに関する国内外のシステムの構築状況や標準化動向の調査や検討、相互接続性をいかに実現するか、さらに、ITU-TのFG Smartに対する日本からの標準化に関する提案活動(アップストリーム)などの準備などを行っています。
■ ということは、スマートグリッドに関しては、これから本格的な標準化活動に入るということでしょうか。
前田 そうですね。TTCとしては通常、ITU-TのSG(研究委員会)の場合ですと、TTCの専門委員会が対応するのですが、ITU-TでもSGの前段階の「FG Smart」での審議段階ですから、まだいわゆる本当の勧告(標準)をつくる組織(SG)という状況にはなっていません。ですから、TTCとしても専門委員会になる前のアドバイザリーグループを立ち上げて、日本としての対処をするようにしています。
〔2〕原点に立ち返って、日本のアイデアを付加したスマートグリッドを
前田 そこで現在、重要なことは、スマートグリッドというのは、まず米国のNISTにおける検討が話題を呼び、国際的に火がついたのですが、日本と米国の電力会社の状況や法制度も異なっていることです。また、「発電事業」と「送電事業」についても、米国では分離されていますが、日本では一体となっています。また、北米の場合は、ユーザーが、少しでも安い電力料金で使えるように電力会社を選択し、切りかえできるような仕掛けもありますが、日本ではそのような制度になっていません。このように、スマートグリッドといっても世界各国それぞれ事情が異なっています。ここは、重要なところです。
■ たしかに、世界各国の電力事情はかなり異なっていますね。
前田 ところが、今回の東日本大震災(2011年3月11日発生)では、災害のときの通信やICTのあり方が問われ、さらに電力危機の問題や節電のあり方に至るまで大きな問題となっています。日本で計画停電が行われることなどは想定もしていませんでした。ですから、スマートグリッドについても、北米の取り組みを契機として国際的に注目されるテーマになった側面はありますが、ここでやはり日本の立場や状況をもう一度見直して、「本当に何を検討すべきか」という原点に戻って考え直す必要があると思います。
今回の震災の経験を前向きにとらえ、現実に起こった厳しい計画停電や節電などを考慮したスマートな仕掛けという、スマートグリッドに「日本版のアイデア」を付加でき、今後、災害に強いスマートグリッドを世界にアピールできれば、「日本の産業の復興に大きな武器になる」ととらえるべきではないかなと思っています。
(第3回へつづく)
プロフィール
前田洋一(まえだ よういち)氏
現職:
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) 代表理事専務理事
【略歴】
1980年 静岡大学大学院 工学研究科電子工学専攻修了
1980年 NTT(当時、日本電信電話公社)の電気通信研究所入所。以来、広帯域伝送方式、光アクセス網システムの研究開発に従事。
1988年 1年間、英国BT研究所の交換研究員としてATM技術の研究に従事。
1989年から、ITU-TのSG13およびSG15会合に参加し、SDH、ATM、光アクセスなどの標準化に寄与。SG13におけるラポータ、SG13副議長を歴任。
2004年 SG15議長に就任。2008年10月にITU-TのWTSA総会にて、2009年から2012年までの第2期目のSG15議長に指名され、現在に至る。また、2000年から2004年には、光アクセスの推進を図るFSAN(Full service access Network)のWG議長も担当。
2006年 NTTを退職し、NTTアドバンステクノロジー(株) ネットワークテクノロジーセンタにて標準化戦略の主幹担当部長およびNTTのシニアアドバイザ(標準化)を担当。
2010年9月 NTTアドバンステクノロジー(株)を退職。
2010年10月 社団法人情報通信技術委員会(TTC)の専務理事に就任、現在に至る。
<学会関係>
IEEE会員。電子情報通信学会フェロー。
<主な表彰>
2002年 日本ITU協会賞 功績賞
2006年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)
<主な著書>
「Introduction to ATM Networks and B-ISDN」(1997, John Wiley &Sons)
「わかりやすいB-ISDN技術」(1993、オーム社)など
【バックナンバー】
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第1回)
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第2回)
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第3回)
スマートグリッド/クラウド/FNに挑むTTCとITU-Tの標準化戦略を聞く!(第4回)