[特集]

中国の最新インターネット事情(8):インターネットのアプリケーション事情(その3)

2011/03/02
(水)
陶 一智

この連載では、中国のインターネットの歴史や特徴、社会に与える影響などを中心に最新の情報をお伝えしています。前回の第7回では、中国におけるネット動画の視聴法とコンテンツ・サイトの分類をしました。その中で、とくに日本と中国の視聴スタイルの違いや、ネット動画の視聴方法とコンテンツ供給元によるサイトの分類を具体的に紹介しました。
今回は、まず、動画を見る場合の方法について、ウェブブラウザでの視聴と専用ソフトでの視聴する場合を紹介します。また、中国における代表的なP2P動画配信サービスや動画共有サイトを見ていきます。

≪1≫ウェブブラウザでの視聴と専用ソフトでの視聴

動画を見る場合には、ウェブサイトを訪れてウェブブラウザ上で視聴する場合と、専用のプレーヤーをダウンロードし、それをインストールして使う場合があります。例えば、CNTV(China Network Television、中国網絡電視台)は両方の形態のサービスを提供しており、利用者が選択することができます。図1は、前者の方法でライブ放送を見る画面です。図2は、後述するP2P技術を使った専用プレーヤーの画面です。

図1 ウェブブラウザ上でのCCTV(CNTV)の動画再生画面

図1 ウェブブラウザ上でのCCTV(CNTV)の動画再生画面


図2 CNTV専用プレーヤーの画面(CCTVRegOcx)

図2 CNTV専用プレーヤーの画面(CCTVRegOcx)


また、主に専用プレーヤーでサービスを提供しているP2Pによる配信サービスもあります。この代表的なものには、PPLive(http://www.pptv.com/)、QQLive(http://live.qq.com/)、PPStream(http://www.ppstream.com/)、UUSee(http://www.uusee.com/)などです。これらのサービスでは、CCTVや各省のテレビ局のチャンネル,中国や外国の映画,アニメなどが無料で視聴できます。これら以外にも、数えられないほどの非常に多数のサービスや専用動画プレーヤーがあります。

これらの専用動画プレーヤーは中国で開発されたもので、世界の他の国には見られないほどの種類があります。また、技術開発が非常に進んでいます。また、多くの実績があります。例えば、2006年にワールドカップドイツ大会をQQLiveで中国国内向けにストリーミング放送しました。また、PPLiveは、湖南省の衛星テレビ局と提携して”スーパーガールズ”コンテストを生放送しましたが、そのときはオンライン同時接続者数が100万人を超えたといわれています。

2006年1月には、UUseeがCCTVとの提携して春節晩会を生放送しましたが、このときのオンライン同時接続者数は40万を超えたと言われています。2008年には、PPLiveはCCTVと提携し、北京オリンピックの生中継を行っていますし、CNTVは2010年ワールドカップサッカーのライブ放送とVOD両方の放送ライセンス独占権を得てネット配信を行い、国内の事業者にもサブライセンスを行いました。このように、中国の若年層の間ではインターネットでテレビを見ることが普通になっています。

≪2≫中国における代表的なP2P動画配信サービス

表1に、中国における代表的なP2P動画配信サービスと運用している会社名、そして設立時期を示します。いずれも2005年ころにサービスが開始されています。QQliveは、メッセンジャーソフトとサービスの最大手QQで有名な腾讯(tencent)社の提供するプレーヤー(図3)とサービスです。このサービスを利用するためには、QQに登録したIDが必要です。これに対し、PPLIVE(図4)、PPSTREAM(図5)、UUSee(図6)は、IDを取得しなくとも使用できます。

どのプレーヤーとも、番組を選択する領域が画面の右か左の領域に用意されています。そして、真ん中は動画が表示される部分になります。また、広告が表示される欄や、番組の詳しい説明が表示される欄が用意されているものもあります。

表1 代表的なP2P動画配信サービス
P2Pサービス名 PPLive PPStream QQLive UUSee
会社名 上海聚力伝媒技術有限公司 上海众源網絡有限公司 騰訊公司(tensent) 北京悠視互動科技有限公司
設立時期 2004年12月 2005年10月 2005年9月 2005年10月
〔出所:中国インターネット映像配信の現状報告、2007年3月、日本貿易振興機構(ジェトロ)、http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05001495/05001495_001_BUP_0.pdf


これらが提供する番組には、2種類のものがあります。一つは、“直播”(live)と呼ばれ、常に放送されていて、それをリアルタイムに視聴するものです。テレビ局の番組は、この一つです。もう一つは、“点播”と呼ばれます。これは、ビデオオンデマンドのことで、いつでもコンテンツを最初から見ることができます。映画はこのような形態で配信されます。PPliveやPPstreamでは、1000を越えるような番組が放送されています。これらは無料で使用できるのですが、広告を出すことによってビジネスが成り立っています。広告が邪魔な場合には、有料会員になれば、表示されません。

なお、迅雷看看(www.xunlei.com)のように、ウェブ画面上で動画を楽しめるのですが、それに加え、ダウンロードソフト迅雷が用意されており、その専用ソフトを使って自分のパソコンへ動画をダウンロードできるものもあります。

図3 QQliveプレーヤーの画面(CCTVRegOcx)

図3 QQliveプレーヤーの画面


図4 PPliveプレーヤーの画面

図4 PPliveプレーヤーの画面


図5 PPstreamプレーヤーの画面

図5 PPstreamプレーヤーの画面


図6 UUSeeプレーヤーの画面

図6 UUSeeプレーヤーの画面


≪3≫中国における動画共有サイト

一方、動画共有サイトは、ウェブサイトを訪れ、ウェブブラウザ上で動画を視聴するシステムです。中国では、YouTubeの登場に刺激され、2005年以降から始まっています。その後、2006年のGoogleによるYouTubeの買収を契機として、更に刺激され、数百もの数のサービスやサイトが登場しましたが、現在、これらは競争と淘汰の中にあります。表2に主な配信サイト名と運用会社名、そして運用開始時期を示します。この中には、コンテンツや著作権上の問題から、すでに閉鎖された魔方網(Mofile)があります。


表2 主な動画配信サイト
動画配信サイト名 土豆網(Tudou) 魔方網(Mofile) 優酷網(Youku) 酷溜(ku6)
会社名 上海全土豆網絡科技公司 上海高勤通信科技有限公司 合一網絡技術有限公司 酷溜網北京信息技術有
運営開始時期 2005年4月 2006年6月
2010年4月閉鎖
2006年12月 2006年7月17日
URL www.tudou.com www.mofile.com www.youku.com www.ku6.com
〔出所:中国インターネット映像配信の現状報告、2007年3月、日本貿易振興機構(ジェトロ)、http://www.jetro.go.jp/jfile/report/05001495/05001495_001_BUP_0.pdf


前回(第7回)の図1にも示したように、動画共有サイトは非常に人気のあるサイトとなっています。どのサイトもYouTubeに似た作りとなっています。図7に土豆のウェブページと図8に動画表示画面を示します。また、図9にすでに閉鎖された魔方、図10に優酷のウェブサイト、図11に優酷の動画再生画面を示します。図12に酷溜のウェブサイト、図13に酷溜の動画再生画面を示します。どのサイトも、使い方はYouTubeと同じようなものですので、ここでは説明を省きます。

図7 土豆網のウェブページ

図7 土豆網のウェブページ


図8 土豆網の動画再生画面

図8 土豆網の動画再生画面


図9 閉鎖された魔方網のウェブサイト

図9 閉鎖された魔方網のウェブサイト

http://tv.mofile.com/(閉鎖されていたのですが、現在、また、復活しています。)


図10 優酷網のウェブサイト

図10 優酷網のウェブサイト


図11 優酷網の動画再生画面

図11 優酷網の動画再生画面


図12 酷溜のウェブサイト

図12 酷溜のウェブサイト


図13 酷溜の動画再生画面

図13 酷溜の動画再生画面


(つづく)

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