≪1≫東芝がECHONET Lite対応のHEMSスマートハウスを展示
スマートグリッドを推進する東芝(写真1)は、スマートハウス(HEMS)やスマートビル(BEMS)などの展示デモなどを行った。とくに、写真2に示すスマートハウスでは、経済産業省(スマートハウス標準化検討会)が、2011年12月にHEMS用の推奨標準インタフェース規格として承認した「ECHONET Lite」(エコーネットコンソーシアムが策定)を搭載したHEMSである、
(1)エネルギー計測ユニット(ECHONET Lite対応、写真2)
(2)ITアクセスポイント(ECHONET Lite対応、写真3)
を展示し注目を集めた。無線通信方式には、Bluetooth Version 2.1+EDR(2.1Mbps)が採用されている。
このエネルギー計測ユニット(HEM-EM31A-B1、写真2の中央上部。写真3)は、写真2の中央左部の大きなボックス(分電盤)に電流センサを取り付けることによって、家庭内の消費電力量などを「見える化」する装置。また、ITアクセスポイント(BTR-4010AZ、写真2の中央。写真4)は、スマートハウス内のECHONET Lite対応あるいはECHONET対応の家電機器を相互接続してネットワークを構成、インターネット経由で写真2の左端に示すクラウド・サービスに接続するためのECHONET Lite対応のネットワーク機器である。
この2つの製品「ITアクセスポイントとエネルギー計測ユニット」は、「HEMS Bパック01(BTR12-B01)」として、東芝ライテックから販売された(2012年5月18日)。
なお、「HEMS Bパック01」(BTR12-B01)は、経済産業省の「平成23年度エネルギー管理システム導入促進事業(HEMS導入事業)」の補助金対象機器となっている。
(http://www.tlt.co.jp/tlt/press_release/p120528/p120528.htm)
≪2≫大崎電気:「マンション節電対策」にスマートメーターの新市場を
これまで一般のマンションでは、それぞれ各戸が電力会社と契約を結んで電力の供給を受けていた。しかし、ビルなど大口利用者の場合は、一般家庭よりも2~3割程度安い高圧電気の供給を受けて、ビル内の設備で低圧にして個々のテナントに配電している。これをマンションに適用し、マンション全体で大口利用者となり、マンションの各戸に低圧にして配電し、電力料金を安くする動きが活発化している。そのため、マンション全体を管理するMEMS(Mansion Energy Managemennt System、マンションエネルギー管理システム)が設置される。
スマートメーターの大手企業「大崎電気」は、このようなマンションの電力一括購入の動きをとらえ、電力会社に制約されないマンションの内側の各戸に設置されるスマートメーター市場のビジネスを目指した展示を行った(注)。
(注):電力会社の制約を受けるのはマンションと電力会社との接続口に設置されるスマートメーターのみ
写真5の左側は、高圧電気側(例:6600V)で、これをマンションの各戸に低圧(100V~200V)に降圧して配電する。このとき各戸の電力使用量などを管理するため、スマートメーター(電力会社の管理外)が設置される。
写真6は、マンション各戸に設置されるスマートメーターのイメージである。
スマートメーターの通信機能としては、写真6に示すように、
(1)分電盤との接続にはRS-485(10Mbps)インタフェースをもつ通信端末装置
(2)家電機器やHEMSとの接続には、
①有線のPLC(電力線通信)
②特小無線(例:920MHz帯の特定小電力無線)
が用意されている。
≪3≫富士電機:「北九州スマートコミュニティ創造事業」の取り組み
北九州市は、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」のひとつとして選定され、その取り組みである「北九州スマートコミュニティ創造事業」を推進している〔平成22(2010)年度~26(2014)年度の5年間〕。この「北九州市」の事業で富士電機は幹事会社として、地域内のエネルギーの需要と供給のバランスを調整し、エネルギーを効率的に運用するCEMS(Cluster/Community Energy Management System、地域エネルギー管理システム。地域節電所)などの構築・運営・管理を担っている。
富士電機ブースでは、同社が納入した北九州スマートコミュニティにおけるスマートメーターの役割を展示した。
写真7、写真8に示すように、各戸のスマートメーターは、本年(2012年)7月25日から全面開放される920MHz帯対応の特定小電力無線を用いて、マルチホップ・メッシュネットワークを構成。また、各戸からのスマートメーター情報を集約するコンセントレータ(集約装置)とも接続され、電力会社あるいはセンターへ送信される仕組みとなっている。
≪4≫GEエナジー:ANSI規格準拠の双方向通信スマートメーターを展示
GEエナジー(注)は、ANSI(米国規格協会)の規格に準拠した双方向通信が可能なスマートメーター(写真9)を展示。同機はすでに、日本電気計器検定所の型式認定を取得済みである〔輸入元:日本高圧電気(株)〕。
(注):富士電機システムズとGEエナジー・ジャパンは、2011年2月に「GE富士電機メーター(株)」を設立している。
このスマートメーターは、課金メーターとして、マンション(MEMS)内や工場(FEMS:Factory Energy Management System)内のローカル(電力会社の制約を受けない)な利用も可能であるため、この分野にも焦点を当ててビジネスを展開している。
同メーターは、写真10に示すように、軽量ボード、通信ボード、遠隔遮断スイッチなどが内蔵された一体型の汎用スマートメーターとなっているため、低コストで製造可能となっている。このほか、同社ではスマートメーターだけでなく通信インフラやシステムインフラのサービスも提供している。
例えばGEエナジーは、スマートメーターネットワーク、すなわちAMI(注1)を構築するために、ユニークなアクララ(Aclara)社のTWACS(注2)を提供している。このTWACSは、既設の電力線(PLC)を活用し、柱上変圧器を越えて長距離の通信(160㎞以上)が可能なため、リピータや補助の集約装置(コンセントレータ)などの機器が不要で、信頼性の高い通信ネットワークを構築することが可能となる。
(注1)AMI:Advanced Metering Infrastructure、高度メーター基盤。スマートメーターネットワークのこと。
(注2)TWACS:Two-Way Automatic Communication System、双方向自動通信システム
≪5≫CMエンジニアリング:920MHz 対応特小無線無線ソリューションを前面に
システムLSI設計と回路技術、検証サービスと評価技術、通信・無線設計サービス提供するにCMエンジニアリング(株)(写真11)は、2012年7月25日から全面開放される920MHz帯対応の「特小無線マイコン開発キット」(特小:特定小電力無線)を展示。さらに特小無線モジュールによって、太陽電池の発電量の監視や使用電流量の管理、屋外からのリモコン制御など、スマートハウス関連する特小無線ソリューションをアピールした。さらに、本年(2012年)3月に標準化されたスマートメーター用のIEEE 802.15.4g/4e標準(最大1Mbps、通信距離1㎞)対応の無線モジュールを開発していることを発表。
さらに、写真12に示すように、シグマデザインおよびZ-Waveアライアンスによって策定され、ITU-TのG.wnb(勧告番号Q.9959:無線ナローバンドトランシーバ規定)のAnnex(付帯規格)として承認された「Z-Wave」(スマートハウス用の近距離無線通信技術)の開発も推進している。
写真13に示した「920MHz対応ワイヤレスマイコン開発キット」は、ARIB(電波産業会)で2012年2月に策定された「ARIB STD-T108」(注1)に準拠し、データ伝送速度:76.8kbps、チャネル帯域幅:200kHz幅、変調方式はGFSK(注2)が採用されている。
(注1)ARIB STD-T108:『920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備標準規格』、2012年2月)(ARIB:Association of Radio Industries and Broadcast、社団法人電波産業会)
(注2)GFSK:Gaussian filtered frequency shift keying、ベースバンド信号をガウスフィルタで帯域制限した周波数変調方式
(注)IPコア:Intellectual Property Core、LSIなどを構成する回路情報で、機能単位でまとめられているものを指す。
≪6≫テレメータリング推進協会:920MHz、IEEE 802.15.4g 対応のスマートメーターをデモ
ガス企業やIT企業、電子機器企業などで構成され、エネルギー(ガス、水道、電気)使用量の「見える化」を推進する「NPO法人テレメータリング推進協会」〔平成6(1994)年4月設立〕は、新しいガス検針用のテレメータリング(遠隔計測)システムのために、
(1)新通信インタフェース
(2)新NCU(ネットワーク制御装置)
(3)新無線端末:「Uバス」、「Uバスエア」
など5種類の推奨仕様(現在920MHz帯対応のため改訂中)を策定し、ガスメーターのスマートメーター化を推進している(写真14)。
このテレメータリング推進協会は、スマートグリッド展2012で、スマートメーター用に2012年3月に標準化されたIEEE 802.15.4g(物理層)をベースに、新しい920MHz 帯(2012年に全面開放)に対応した特定小電力無線を用いてガススマートメーターの実証デモを行い注目された。この実証デモには、写真15に示す「都市ガス用超音波ガスメーター」(矢崎総業製)が使用された。
写真14に設置された3列4段(4階建てマンションを想定)のガススマートメーターは、
(1)左側の列が1ホップ(401~101号室)
(2)中央の列が2ホップ(402~102号室)
(3)右側の列が3ホップ(403~103号室)
として、基地局との間でマルチホップ通信が行われ、ガス使用量などのデータの収集(集中監視センター)が行われた。
写真15に、例として、301号室の超音波ガスメーターと、その左下に設置された富士電機製NCU(通信制御装置)「TK4K3420」を示す。このNCUは、すでにTELEC(Telecom Engineering Center、財団法人テレコムエンジニアリングセンター)の「技適」(技術基準適合証明)を、平成24(2012)年2月15日に取得。
このNCU「TK4K3420」は、有線のUバスおよび無線のUバスエア(920MHz対応)の両方のインタフェースを備えており、
(1)Uバスによってガスメーターと接続され
(2)ガスメーターからのガスの使用量を「U バスエア」(無線)によってNCUから基地局経由で、集中監視センターで収集する
というデモであった。
以上、スマートグリッド展2012のトピックをいくつか紹介したが、スマートグリッドを巡る内外の著しい進展は、今後の日本の国際競争力と輸出ビジネスをどのように発展させるか、その方向性のヒントを与えてくれた展示会であった。また、新しい推奨インタフェースECHONET Lite規格の登場に加え、日本がリードし標準化を実現したスマートメーター用通信規格「IEEE 802.15.4g」、さらに、2012年7月25日から全面的に開放される920MHz帯に対応する機器の開発などをはじめ、スマートハウス/スマートビルさらに地域的なスマートコミュニティへの取り組みは、新しい大きなビジネスチャンスと市場をつくりはじめている。
(終わり)
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