[特別レポート]

Utility 2.0時代に求められる新サービスへの独創性

─European Utility Week 2014オープニングセッション ─
2014/12/01
(月)

欧州エネルギー産業の10年後の未来

また、パネルディスカッションの最後には、2つ目の質問である「これからの10年間で、電力産業はどのように変化するかを予測する」が投げかけられた。

この問いに対してIan Marchant氏は、今後10年間で、「欧州のすべての家庭が、自分たちのエネルギーの管理を自分たちで行えるようになる」と予測した。

Michael Weinhold氏は、Ian Marchant氏の意見に同調しながら、エネルギーの融通を行う最小単位が、現在のように比較的大きな「地域」というものから、コミュニティや大学のキャンパス、工場などのような小規模な「エネルギーセル」(Energy Cell)になると述べた(図1、2)。

図1 電力システムのイノベーションのステップ

図1 電力システムのイノベーションのステップ

〔出所 Michael Weinhold氏資料より〕

図2 「Energy Cell」の概念

図2 「Energy Cell」の概念

〔出所 Michael Weinhold氏資料より〕

また、Erwin van Laethem氏は、これからの10年で、「プラットフォーム」と「エコシステム」に大変革が起こると予測。同氏によれば、「プラットフォームの変革」とは、消費者が、家や車の売買と同じように、「こういった種類の電気がこれくらい買いたい/売りたい」という感覚でエネルギーを売買できるシステムが発達するということを意味している。一方の「エコシステムの変革」は、時代の変化とともに、スマートグリッドに関係する電力事業者やサービス事業者などが、それぞれの強さを活かし、協調しながらビジネスを行うようになることを示している。

これら登壇者から出た意見の総括として、Ian Marchant氏は、次の3点にまとめた。

  1. 今後、エネルギー産業は、消費者が中心になる
  2. 電力産業に携わる企業が、消費者ニーズを満たすために協調を行う必要がある
  3. 現在の電力産業に携わる企業が、エネルギー産業におけるこの大きな変化を受け入れる必要がある(これがもっとも重要)

加えて、同氏は、この変化を受け入れず、従来のモデルのエネルギー供給のビジネスを行っている電力会社は、生き残ることは難しいだろうと締めくくった。

Michael Weinhold氏は、同氏の講演の中で、電力事業者による発電と、再生可能エネルギー、マイクログリッドなどが融合し、さらに、電力の管理がデジタル化される時代のことを「Utility 2.0時代」と提唱した。このUtility 2.0時代における、独創的で新しいサービスの開発が期待される。


▼ 注1
ENTSO-E(エントソ・イー):European Network of Transmission System Operators for Electricity、欧州電力系統運用者ネットワーク

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