■地図上でリアルタイムに送電網の状況を把握する「Venios Energy Solution」(VES)
ドイツのスタートアップ企業であるVenios(ヴェ二オス)社は、各家庭の電力負荷の情報と、位置情報(GIS:Geographic Information System)のデータを組み合わせることによって、送配電網の状態を可視化するサービスを提供している。
同サービスでは、各家庭からの自家発電や電力融通状況のデータを15分ごとに取得し、位置情報と組み合わせて地図上に表示する。
同社は、再生可能エネルギーや分散電源の増大によって、送配電網においては、従来の高圧配電から、中圧、低圧の送配電が重要になってくると見ている。このため、同システムを系統運用者やエネルギーインフラの開発企業に対して提供し、系統運用者などが、最適なタイミングや規模で、送電網のメンテナンスや拡張を行えるようにしたいとしている。
同社は、European Utility Week 2014に出展したスタートアップ企業の中で、優秀なサービスを選ぶInitiate Start Up Awardにおいて、グランプリに輝いた。
写真1 Venios Energy Solution(VES)の展示
■超音波でガスの用途と使用量を分析できる「Ultrasonic Measurement Technology」
Panasonicは、同社が開発している超音波式スマートガスメーターを実現するための技術である「Ultrasonic Measurement Technology」(超音波計測技術)を展示。
同技術は、同社の開発した「Ultrasonic Measurement Unit」と「Shut-off Valve」、「RF Board」などの製品によって構成されており、イタリアの2i Rete Gas社のスマートガスメーターに搭載されている。超音波を使用して、2秒ごとにガスメーター内のガスの流れを分析することで、例えば、「暖炉」「コンロ」「燃料電池」など、どの用途でどれだけのガスが使用されたかを分析し、可視化することが可能になっている。
写真2 Ultrasonic Measurement Technologyの仕組み
■街を1つの単位としてスマート化する「KNX City」ソリューション
KNX Associationは、ビルや家庭だけでなく、街自体をスマート化することを目標としたソリューション「KNX City」を紹介。
KNX AssociationのCTOであるJoost Demarest(ヨースト・デマレスト)氏への取材によると、KNXは、従来、ビルや家庭のスマート化を行うためのプロトコルとして認知されてきたが、「KNX City」ソリューションでは、ビルだけにとどまらず、電気自動車などのモビリティ(移動体)をはじめ、インフラ、マイクログリッドなどの発電設備もスマート化し、お互いを接続して管理することで、街全体を1つのグリッドとしてスマート化することを提案しているという(図1)。
これによって、例えば、グリッド内の発電設備の発電量が不足しそうな場合は、同じグリッド内にあるビルの電気使用量を下げ、電気料金の高騰を防ぐなどということも可能になる。このように、「KNX City」では、図2に示すように、ビルやそのほかの設備がそれぞれ個別にエネルギー管理を行うよりも、より大きな単位として、効率的なエネルギー管理を行うことが可能になる。
Joost Demarest氏による「KNX City」のさらに詳しい内容については、近日発売予定の『Smart Utility Week 2014報告書』(仮)にて解説する。ぜひ、そちらをご覧いただきたい。
写真3 KNX AssociationのCTO であるJoost Demarest氏
図1 KNX Cityの概念図
〔出所 KNX Association CTOのJoost Demarest氏資料より〕
図2 KNX Cityが可能にすること
※SGCP:Smart Grid Connection Point、スマートグリッドの境界線
M/441:Smart Metering、欧州(EU)におけるスマートメーターに関する指令
M/490: Smart Grid、欧州(EU)におけるスマートグリッドに関する指令
〔出所 KNX Association CTOのJoost Demarest氏資料より〕
■マルチ・ユーティリティ対応ソリューションの展示目立つ
エネルギー管理システムを開発しているItron(アイトロン)や、通信機器、スマートメーターの開発を行っているSagemcom(サジェムコム)などの各社では、電気メーターに加え、ガスメーター、水道メーターに関しても展示が行われていた。
また、これらのスマートメーターを実現する技術として、先に紹介したPanasonicのほかTI(Texas Instruments、テキサス・インスツルメンツ)でも、超音波でガスの流れや水の流れを測定する技術を開発しており、電気だけにとどまらないエネルギーインフラのスマート化は急速に進んでいる。
写真4 Itronのエネルギーの効率的、経済的利用を実現するソリューションの展示
写真5 SagemcomのEnd-to-End Multi-Energies Solution
写真6 Texas InstrumentsのUltrasonic Flow Meter(超音波ガス流量計)のデモ
なお、European Utility Week 2014のその他の展示内容については、『インプレスSmartGridニューズレター』2014年12月号(2014年11月30日発売)に掲載予定である。
ぜひ本誌をご覧いただきたい。
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