風力発電と供給信頼性
〔1〕確定論的な考え方
また、このルール策定(グリッドコード)において、“再生可能エネルギーに対する優先度の考え方”も同様に重要と考えられる。
欧州各国では、風力発電の優先接続の規定が確固たるものとして定まっており、とにかく再生可能エネルギーを電力系統に取り込むことを、第一に推進するというポリシーが見える。
これに対して日本では、電力系統の品質、すなわち供給信頼度を重視する傾向があり、不確実な要因の強い風力発電の優先度は、相対的には高くないように感じられる。
このあたりの差異は、日本と海外における信頼性に対する考え方の差に起因しているのではないだろうか。日本の電力供給においては、「確定論的な考え方」が比較的強い印象がある。すなわち、現実的な範囲の中で最も過酷な事故や需給の条件を想定し、これに耐えられるように設備や運用を決定していく考え方である。
〔2〕確率論的な考え方
一方、生じ得る事象を確率的に捉え、統計的な考え方に基づいて信頼性を評価する考え方もある。
確定論的な概念に基づくほうが、より厳しい事象に耐えられる設備形成が進められるため信頼性は向上すると思われるが、当然コストも高くなるという問題も生じる。また、結果的に風力発電導入のためのハードルが高くなる。さらに、最も再生可能エネルギーの普及が進展した状態では電力系統の不確実性が増大するため、想定し得る“最過酷”についても大きな幅があると考えられる。
このため、今後は、確率論的な考え方が重要度を増してくることが想像できる(図4)。日本も欧米も、両者の考え方を適切に組み合わせていくことが重要であろう。
図4 再生可能エネルギーに対する優先度の考え方
日本型の持続可能なエネルギー社会を
いずれにしても、風力発電の普及拡大の可能性は、技術的な要件だけでなく、電力系統の設備形成・信頼度の概念や、これに基づいたルール面の制度内容に大きな影響を受けるという現実に目を向ける必要があろう。
ただし、前述した通り、日本の電力系統の供給信頼度は非常に高く、世界最高峰の水準であり、この点は日本が誇るべき高い技術力を示していることは間違いない。この強みを生かすことは、必ずしも風力発電との共生とは方向を同じくするものではないかもしれないが、日本の技術力がこの困難な課題を克服し、“日本型の持続可能なエネルギー社会”に向けた新しい展開が切り拓かれることを願うところである。