Wi-SUNアライアンス:スマートメーターからM2Mへ
〔1〕6つのワーキンググループ
一方、スマートグリッドの中心的な技術のひとつであるスマートメーター用の世界初の国際標準規格を策定および規格認証団体として、2012年1月に設立された「Wi-SUNアライアンス」注9も、次々に次世代技術の開発や標準化を行ってきた。具体的には図2に示すように、
- PHY WG(Physica Later Working Group、物理層WG)
- MAC WG(Media Access Control Working Group、MAC層WG)
の2つの要素技術WGを基本として、
- ECHONET WG(ECHONET Lite Working Group、ECHONET Lite関連WG)
- FAN WG(Field Area Network Working Group、地域通信網WG)
- JUTA WG(Japan UtilityTele-metering Association、ガス関連WG)
- RLMM WG(Resource Limited Monitoring and Management、M2M関連WG)
など、合計6つのWG(ワーキンググループ)が活動している。
図2 Wi-SUNアライアンスの6つのワーキンググループ(WG)
IJUTA:Japan Utility Telemetering Association、NPO法人テレメータリング推進協議会
〔出所 原田博司『スマート社会を支える次世代センサー/メータ/M2M用無線通信規格Wi-SUN』、2014年8月〕
〔2〕Wi-SUNアライアンスのプロトコル構成
これらの6つのWGで策定されてきたプロトコルは、図3に示すように、第1層の物理層「IEEE 802.15.4g」(SUN:Smart Utility Networks)と、それに対応して改訂された第2層のMAC層IEEE 802.15.4e標準規格(2012年3月)をベースに、第3層〜第4層に「Wi-SUNインタフェース部」を規定(2013年1月)し、多様なアプリケーションに対応できるようにした。
図3 Wi-SUNアライアンスで策定されたプロトコル構成(第1〜4層)
〔出所 原田博司『スマート社会を支える次世代センサー/メータ/M2M用無線通信規格Wi-SUN』、2014年8月〕
すなわち、ZigBeeアライアンスの場合(7階層を規定していること)と異なり、第4層までしか規定していないため、その上で走らせるアプリケーションには、例えばECHONETコンソーシアム、Open-ADRアライアンス、HGI(ホームゲートウェイイニシアティブ)、ZigBeeアライアンスなど他の多くのアライアンスや団体などと協力関係がつくりやすくなっている。このため、今後これらの多くのコンソーシアムなどで策定される多様なアプリケーションが、Wi-SUNプロトコル上で容易に走らせることが期待されている。
〔3〕TTC標準仕様「JJ-300.10」でも規定
さらに、TTC標準仕様「JJ-300.10」でも規定されているECHONET Lite用のWi-SUN規格は、東京電力の「Bルート」用無線通信方式としてスマートメーターに採用され、2,700万世帯を管轄する東京電力管内でその設置が開始された(2014年4月)。
また、ガス・スマートメータリングシステムの標準化を推進するテレメータリング推進協議会(JUTA)では、(Wi-SUNアライアンスと共同して)Wi-SUN方式をベースに、ガススマートメーター(電池駆動)の心臓部となる、U-Bus Air仕様(無線)とU-Bus仕様(有線)が策定されている。具体的には、U-Bus Air仕様の物理層にはIEEE 802.15.4gが採用され、現在、MAC層にIEEE 802.15.4eの採用が検討されている。
また、Wi-SUNアライアンスは、国際的な相互接続性を保証するため、国際的なテュフラインランド(TUV Rheinland、2013年11月)に続いて、一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター(TELEC)を公式認証テストラボとして指名した(2014年6月)。
〔4〕M2M対応のRLMM WGを発足
表3 NICTで開発されたWi-SUN搭載農業用のM2M向け15種類のセンサー
このような流れの中で、Wi-SUNアライアンスにとって画期的なことは、2014年9月に、Wi-SUNアライアンス内にM2M対応のRLMM WGを発足し、スマートメーターアプリケーションからM2Mアプリケーションの展開に向けて動き出したことである。
Wi-SUNアライアンスのリーダー的存在である日本のNICT(情報通信研究機構)では、エネルギー管理から防災、農業そして医療に至るまで、「期待される公共アプリケーションとその展開」として、多角的な検討が行われている。すでに、
- M2M防災用アプリケーション
- M2M農業用アプリケーション
- M2Mエネルギー管理(HEMS)用アプリケーション
- 仮想化コグニティブ無線注10ネットワークを用いたワイヤレスM2M共通基盤
などに関する具体的な実証試験が行われている。
このような実証試験を行うため、すでに、NICTでは、表3に示すようにWi-SUNを搭載した15種類の農業用M2M向けセンサーなどが開発されている。
▼ 注9
Wi-SUNアライアンス:Wireess Smart Utility Networks Alliance、オフィスは日本、米国ほか。参加会員56社組織(2014年8月末現在)。
▼ 注10
コグニティブ無線:無線の利用状況を認識(Cognitive)し、周波数の利用効率の向上を目指す技術。例えば、端末が周囲をセンシングし、空いている(利用されていない)周波数・時間を発見しそれを利用する無線方式。