発電出力予測技術コンペ開催の経緯と意義
太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギー発電の出力は、気象条件によって大きく変動することから、大量導入に際して、需給バランス調整力の拡大や、送電線の強化によるシステム制御の広域化などの課題が挙げられている。これらを有効活用して電力システムを安定運用するため、気象予測にもとづく発電出力の予測技術が注目を浴びている。予測技術の種類について、系統の運用と、利用される手法を時間軸でまとめたものを図1に示す。
図1 系統運用に必要となる予測と予測手法
〔出所:電気学会技術報告「再生可能エネルギーの出力変動特性と予測」(2014年8月号)より〕
海外では、風力発電の出力予測技術に関してさまざまな手法が構築され、系統運用に利用されている。数多くの手法の中から精度・信頼性の高い予測手法を選定するには、データや条件などを統一し、同じ評価基準のもとで予測手法を比較する必要がある。
このような観点から、EWEA注1やIEEE PES Power
System Planning& Imple-mentation(PSPI)Committeeの発電出力予測のワーキンググループ注2などにおいて、太陽光発電や風力発電の出力予測に関するコンペが開催され、同一条件のもとでさまざまな手法の比較が行われている。
日本においても、日射/太陽光発電出力や風力発電出力に関してさまざまな研究開発が活発化していることから、それらを共通の予測対象を用いて比較し、さらなる精度向上につなげていくため、今回、日本初となる第1回目のコンペが開催された。
発電出力予測技術の主な仕組み
〔1〕利用できるデータ
翌日~数日先を対象とした発電予測は、基本的にはさまざまな気象要素の数値予報をもとに行われる。
現在、気象庁によって公開されている気象予報モデルを表1に示す。これらのモデルでは、数km~数10kmの格子点ごとに風速や雲量などが予測され、その格子点値はGPV注3と呼ばれている。表1のモデルのほか、NCEP注4が無償で公開している全球モデル(地球全体をカバーするモデル)の気象データなどが利用可能である。
表1 気象庁が運用する数値気象予報モデル
〔出所:気象庁サイトをもとに編集部作成、http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-4.html〕
〔2〕予測に使用するモデルと入力データ
表1の気象予報モデルは、大気の状態に関する複雑な連立方程式を解いて格子点ごとに将来の大気の状態を計算するものであり、物理モデルと呼ばれる。しかし、物理モデルのみでは必ずしも適切な予測が行えない場合もあることから、物理モデルにおける風速や雲量などの各種気象要素と、風力発電出力や太陽光発電出力の実績値との関係に関する機械学習モデルを併用し、予測精度の向上が図られている。機械学習モデルにおいて、どのような気象要素の情報をどのように利用するかにより、予測精度の差が出てくる。 次に、同コンペの概要を説明する。
▼ 注1
EWEA:The European Wind Energy Associa-tion、欧州風力エネルギー協会。
▼ 注2
PSPIの発電出力予測ワーキンググループによるGlobal Energy Forecasting Competition 2014 :http://www.drhongtao.com/gefcom
▼ 注3
Grid Point Value、格子点値。
▼ 注4
National Centers for Environmental Predic-tion、アメリカ国立環境予測センター。