電力貯蔵以外の動き
2015年1月5日、カリフォルニア州のブラウン知事の第4期目の就任演説が州都サクラメントで行われた。ブラウン知事は1975〜1983年の1、2期と2011年から現在までの3、4期を務めており、2期から3期までの間は約30年を隔て就任した異例の知事である。
今回の就任演説では自らの言葉で7つの具体名を出して、エネルギー政策を推進していくことを発表した注10。
- 分散電源(More Distributed Power)
- ルーフトップソーラー(Expanded Rooftop Solar)
- マイクログリッド(Micro-Grids)
- インバランス市場(An energy imbalance market)
- 蓄電池(Battery Storage)
- ITと配電網の融合(The full integration of information technology and electrical distribution)
- 数百万台の電気自動車と低炭素車(Millions of electric and low-carbon vehicles)
カリフォルニア州は日照条件が良いこともあり、ルーフトップソーラーを利用したほうが電力会社から電気を買うよりも安くなっており(グリッドパリティ注11到達)、今後、さらなる普及が期待されている。2014年の全米ソーラーパネル導入量の半分は同州に集まっている。
また、カリフォルニア州は他国に比べ、停電時間が際立って長く、1軒あたりの停電時間は162分/年間に達する注12。ITを活用した配電網の強化は喫緊の課題となっている。筆者が同州に滞在した昨年(2014年)だけでも、日本で頻繁に起こる大雨で、簡単に2回も停電した。
同州では、街を歩くと至る所で目にするほど電気自動車(EV)が普及している。その理由として14の自動車会社にCO2を排出しない車(ZEV:Zero Emission Vehicle)の販売を義務付けており、2015年のZEVの比率は14%と定めている。これが未達の会社は100%ZEVを販売するテスラモーターズなどからクレジット(ZEV販売分)を購入する必要があり、メルセデスベンツやクライスラーは購入する側となっている。
現在、ハイブリッド自動車はZEVの1つとして見なされているが、2017年の販売モデルからは対象から外れるため、同州では更に電気自動車に追い風が吹く可能性がある。
今後の展開と課題
カリフォルニア州で電力貯蔵システムが技術性と経済性の両面において順調に機能することが証明されれば、他州へ展開する可能性は十分考えられる。また、再生可能エネルギーの導入加速やSCE社のように原発などの既存電源の代替の一部として機能すれば、重要な役割を果たすことになる。米国では、電力事業は州政府が規制しているため、州ごとにその地域特性に合わせながら電力貯蔵システムが導入されていくことは間違いない。
課題は経済性だと考えられる。カリフォルニア州では現在のところ、再生可能エネルギーの比率を上げても電気料金は上昇しておらず、順調に進んでいるが、電力貯蔵システムの導入によって電気料金を上昇させることは簡単に認められない。よって、電力貯蔵システムのコストダウンが最大の鍵となるだろう。
▼ 注10
http://gov.ca.gov/news.php?id=18828
▼ 注11
グリッドパリティ:太陽光発電や風力発電などの新しいエネルギー源による発電コストが、既存の系統電力の価格と同等となるか、もしくはその境界点のことをいう。
▼ 注12
出所:電気事業連合会、http://www.fepc.or.jp/enter-prise/supply/antei/sw_index_02/