広域機関の主な業務例
〔1〕電力需給ひっ迫時の対応
広域機関は、災害や電源トラブルによる電力需給のひっ迫時には、電気事業者に対して、前述したように、電源の焚き増し、需給調整契約の発動による需要抑制、電力融通等の指示などを実施するが、この指示に従わない場合は、広域機関から定款に基づき制裁(過怠金等注4)が科せられる(図2)。
図2 広域機関の主な業務例:需給ひっ迫時の対応
〔出所 http://www.koiki-kikan.jp/contents/20150128_aboutoccto.pdf〕
また、指示を受けた電気事業者が必要な措置を講じない場合などには、広域機関は国(経済産業大臣)にその旨を報告する。国は、その報告を受け、電気事業者に焚き増しなどを命令する(国が自らの発意で、電気事業者や卸供給事業者、特定自家発設置者にこうした命令や勧告を行うことも可能)。
〔2〕需給計画・系統整備計画の取りまとめ等
また、広域機関は、各電気事業者における需給計画・供給計画の取りまとめを行う。さらに、周波数変換設備(FC注5)、地域間連系線などの送電インフラの増強や、エリアを越えた全国大での系統運用などを図る(図3)。
図3 広域機関の主な業務例:電力の需給計画・全国大での系統運用
〔出所 http://www.koiki-kikan.jp/contents/20150128_aboutoccto.pdf〕
〔3〕系統アクセス業務
現在、新規の電源(発電設備)を送配電網に連系(接続し送電)する際は、一般電気事業者の送配電部門にて事前相談や接続(アクセス)検討を行っているが、広域機関でも受付を行うことになる(広域機関で受付を行うのは1万kW以上の発電設備に限る)。
このとき、図4に示すように、広域機関で受付した案件については、広域機関において一般電気事業者(送配電部門)からの回答内容(工事負担金等)の妥当性が確認・検証される。回答内容に不備があるような場合については、一般電気事業者に再検討を要請するなどの対応を行う。
図4 広域機関の主な業務例:系統アクセス業務(現行の仕組みとの比較)
〔出所 http://www.koiki-kikan.jp/contents/20150128_aboutoccto.pdf〕
〔4〕広域機関のスイッチング支援システム
今後、小売全面自由化制の開始に伴って、一般家庭やオフィスなどの電力需要家が電力会社との供給契約あるいは託送契約注6の切り替え(スイッチング)、あるいは小売電気事業者の低圧需要者への販促活動向けの需要者情報の収集などの、業務量の増加が想定される。広域機関では、これらの業務を支援するための「スイッチング支援システムを構築」(図5)し、小売電気事業者の業務を支援していく注7。
図5 広域機関のスイッチング支援システムの仕組み
▼ 注4
過怠金:かたいきん。義務違反に対する制裁金。
▼ 注5
周波数変換装置:Frequency Converter(FC)。周波数の異なる2つの交流系統の連系を目的とした変換装置。日本の場合、東日本では50Hz、西日本では60Hzと2つの周波数の電気が存在しており、その境界地帯にFCを設置することによって異周波数系統間の電力融通を可能としている。
▼ 注6
託送制度:電力会社と新規参入者の対等かつ公正な競争を確保するため、電力会社が所有している送配電網を、発電事業者やほかの電力小売り事業者が利用できる制度。
▼ 注7
広域機関と各電気事業者との関係:http://www.koiki-kikan.jp/contents/20150128_aboutoccto.pdf(送配電事業者は、現在は一般電気事業者の送配電部門)