[特別レポート]

動き出したM2Mの新国際標準「oneM2Mリリース1」

― 日本初となる国際標準規格oneM2Mを使用したショーケースを展示 ―
2015/05/28
(木)
SmartGridニューズレター編集部

oneM2M正式版技術仕様書「リリース1」の概要

 oneM2M WG3(プロトコル分野)の副議長を務める富士通研究所の藤本真吾氏は、2015年1月30日に公開されたoneM2Mリリース1(正式版)の概要について講演した。リリース1については、2014年8月にCandidate Release版(外部からのコメントを受け付ける暫定版)が公表されており、本講演では、主に、正式版(リリース1)において更新された点と、今後の活動内容について説明が行われた。
 
写真8  oneM2M WG3(プロトコル)副議長 藤本真吾氏(富士通研究所)

①非同期通信仕様の強化
 電池で駆動するセンサーデバイスでは、駆動時間を長くするため、通信時間を短縮して、電力消費を抑えることが重要になる。そこで、リリース1では、デバイスが1度リクエストを送信し終わると、基本的には通信を終了してスリープ状態になる「非同期通信」をサポートしている(図8)。ただし、この仕様では、通信エラーがあった場合にはアラートが返ってきたり、もしくは、通信が成功したかどうかを発信側から確認したりすることもできる機能も備えている。

 
図8 非同期通信仕様の強化
〔出所 oneM2M WG3副議長 藤本真吾氏講演資料より〕
 
②データフォーマットの最適化
 リリース1では、より少ない文字数でデータをマッピング(対応付け)し、通信量を削減するため、JASON(JavaScript Object Notation、軽量なデータ記述言語の1つ)をサポートした(図9参照)。
また、M2Mシステムの多様な通信のプロトコルに対応するため、リリース1では、Candidate Release版の際にサポートしていたHTTP注2とCoAP注3に加えて、MQTT注4もサポートしている。
 
(注2)HTTP:Hypertext Transfer Protocol、WebブラウザとWebサーバの間でコンテンツの送受信行う通信プロトコル。
 
(注3)CoAP:Constrained Application Protocol、インターネット技術の標準化を推進するIETF(The Internet Engineering Task Force)で標準化されたM2M通信向けのプロトコル。CPU 能力が低く、メモリ容量が小さいセンサーなどの制約された環境下での利用に適したアプリケーションプロトコル。
 
(注4)MQTT:MQ Telemetry Transport、M2MやIoTに適したシンプルで軽量なプロトコル。
 
図9 同じ内容のリクエストをXML(上)とJSON(下)で記述した例
〔出所 oneM2M WG3副議長 藤本真吾氏講演資料より〕
 
③技術仕様書間の整合性確保
 Candidate Release版の内容を、関連するワーキンググループと共同で吟味し、技術仕様書間で整合性が取れていなかった箇所を修正している。
 
 
 藤本氏は、リリース1で発表した技術仕様は、M2Mを実現するための核となる部分のみであるため、今後は、医療や産業など、それぞれの分野ごとに特化した強化を行っていきたいと述べた。
 
 次期リリースとして検討が予定されている新機能としては、主に、
・セマンティックス(IoTデバイスの抽象化/共通モデル化)
・セキュリティ強化
・機器を共通プラットフォームに接続するまでの設定の簡略化
・工場など生産現場向けの拡張
などに取り組んでいくとした。
 
 同氏は講演の最後に、「デバイスメーカーの方々に正式版技術仕様書(リリース1)の内容をぜひ見てもらい、oneM2M標準規格では、いかに簡単にセンサーをネットワークに接続できるかを確認して欲しい」と締めくくった。
 
 ここまで、主な講演内容を見てきたが、同会場に展示されたoneM2Mショーケースでは、oneM2M規格準拠の通信技術を利用したソリューションの展示も行われ、来場者の多くが積極的に質問をしたり、議論を行ったりしていた(写真9)。
 oneM2Mによる、業界を横断したM2M/IoTの普及と活性化に大いに期待したい。
 
写真9 展示会場の様子

 

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