西岡新理事長:IVIは何をするのか?
最後に、IVIの初代理事長となった法政大学 西岡教授から、IVIが目指す大きな目標のひとつである「ゆるやかな標準」を作るための「リファレンスモデルの作り方、使い方:IVIの資産とその活用方法」について解説が行われた。
〔1〕つながるしくみの再構築
西岡教授は、「IVIとは何をするところか?」という課題に対し、「境界を再定義すること」であると述べ、図6に示すIVIがめざす「つながるしくみの再構築」を提示した。
図6 IVIがめざすつながるしくみの再構築
〔出所 西岡靖之「リファレンスモデルの作り方、使い方」2015年6月18日、http://www.iv-i.org/docs/doc_150618_05.pdf〕
(1)デジタルとアナログの境界の再定義
現在、生産システム分野においてもデジタル化が進んでいるが、アナログも依然として残っている。このような状況において、企業ではどこまでデジタル化し、どこまでアナログを残すか、という極めて戦略的な課題が突きつけられている。必ずしもデジタル化することがすべてではないが、デジタルでなければシステムをつなげられないため、効率も悪い面がある。
(2)競争領域と協調領域の再定義
また、今後、従来のように大手製造業が何でも自分で抱え込む自前主義から脱却し、中小企業などと連携するような、競争領域と協調領域の境界領域を再定義することが重要である。そのためには、製造業界において、図6に示すような、「つながるしくみの再構築」が求められる。これを実現するには、リファレンスモデル(参照モデル)を策定することが重要となる。
リファレンスモデルを作るということは、つなげるための共通なルールづくりでもある(図7)。
〔2〕リファレンスモデル(参照モデル)の作成
このようにリファレンスモデル(参照モデル)は、IVIが目指す「ゆるやかな標準」を策定し「つながる工場」を実現のための技術的なキーワードである。リファレンスモデルとは、どのようなものであろうか。
例えば、図8に示すように、異なる2つの業務システム(AとB)をつなげる場合は、
(1)厳格な「標準仕様」策定し、その仕様に業務システム側を合わせるアプローチ
(2)各業務システムの共通点〔リファレンス(参照)点〕を探し、個別性を許容し、ノウハウを内在させながら、連携するための仕様(接続仕様)を検討するアプローチ(ゆるやかな標準化)
という、2つのアプローチがある。当然のことながら、(2)のほうが、めんどうである。「ゆるやかな標準化」では、このめんどうな作業をできるだけ面倒でなくするために、例えば、共通仕様を個々に作る際に、あらかじめひな形となるリファレンスモデルをいくつか用意し、それを組み合わせて作成するという方法が必要となる。
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誌面の都合からリファレンスモデルの詳細はIVIのWebサイト「標準化」(http://www.iv-i.org/standard.html)や図8に示すサイトを参照していただくとして、「ゆるやかな標準」をつくるには、このようなリファレンスモデルのほかに、「プロファイル」(機器や装置などの機能や構造に関する情報)や、現場の実態を整理した「業務シナリオ」が重要となる。さらに、セキュリティ面でどこまで実用性(信頼性)が求められるかなどについても、明確な指針が求められる。
IVIが、今後、CPSをベースとした次世代の「ものづくり」(フューチャーファクトリー)の分野で、日本がふたたび輝きを増し、世界をリードする役割を担うことに期待したい。