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デマンドレスポンスにおける「価格弾力性」

─これだけは押さえておきたいスマートグリッド基礎用語─
2013/06/01
(土)

近年、電気料金を時間帯ごとに変動させ、需要家(消費者)の電力消費のピークカット、ピークシフトを促すことを目的とするダイナミックプライシングの社会実証が国内において実施され、その成果が報告されている。その報告のなかで、「電力需要の価格弾力性は0.1」という文章を見かける。この「弾力性」とは経済学の基本用語の1つであるが、あまり馴染みのない言葉である。今回、弾力性とはどんな概念なのか、また弾力性がスマートグリッドやデマンドレスポンスにおいてどのような役割を果たすのかを紹介する。

弾力性とは何か?

例えば、週5回飲んでいたカフェラテ(ショート)の価格が、ある日340円から400円に値上げされると、ラテを好んで飲んでいた人は1週間の飲む回数(購入量)を減らすだろう。このように、ある財の価格が高くなればその財の購入量が減ること注3は多くの人が理解できることであるが、経済学では価格が340円から400円に変化すれば、ラテの購入量(需要量)がどれだけ変化するのかを調べることで、消費者の反応を明らかにする。それを調べる際に利用されるのが、「弾力性」という概念である。

このカフェラテの例やデマンドレスポンスにおいて登場する「弾力性」は、需要の価格弾力性であり、これはラテの価格の変化率とラテの需要量の変化率、または電気料金の変化率と電力消費の変化率を比較したものである。需要の価格弾力性を数式で定義すると、

となる。ここで、ラテの価格が340円から400円に上昇したとき、ラテの需要量が週5回から週3回に減る場合の需要の価格弾力性を計算してみよう。そのためにはまず、ラテの価格の変化率と需要量の変化率を次のように計算する必要がある。

これらが求まると、ラテの需要の価格弾力性は上記の定義より、

となる。この2.3という数字は、ラテの価格が上昇したときのラテの需要量の減少は相対的に大きいことを意味し、価格の変化に対する需要量の反応が大きいといえる。経済学では、このような場合を「弾力的な需要」と呼ぶ。

一方、冒頭で「電力需要の価格弾力性は0.1」と書いたが、この場合だと、電気料金の上昇より電力消費の減少のほうが相対的に小さいことを意味し、価格の変化に対する需要量の反応が小さいといえる。この場合は「非弾力的」と呼ばれる。経済学では、需要の価格弾力性が「1」より大きければ弾力的、「1」より小さければ非弾力的という。

電気やガス、水道などの、生活に欠かせない財・サービスは、価格が大きく上昇してもそれらを購入せざるを得ない場合が多いため、需要量を極端に多く減らすことは難しい。そのため需要の価格弾力性の値は小さくなる。

ここでグラフを使って需要の価格弾力性について整理してみると、下図の(a)、(b)のようになる。2つの右下がりのグラフは、ある財の価格と需要量の関係を表す需要曲線である。2つのグラフに注目すると大きな違いがグラフの傾きであることに気付くであろう。(a)の需要曲線は傾きが緩やかで、(b)の需要曲線は傾きが急である。このように、需要の価格弾力性の大小はグラフの傾きで示すことができる。

図では、価格の変化は(a)、(b)ともにP0からP1で同じあるが、数量の変化は(a)がQ0からQ1、(b)がQ’0からQ’1である。(a)は数量の変化が大きいので弾力的、(b)は小さいので非弾力的である。

図 価格弾力的な需要曲線と価格非弾力的な需要曲線

図  価格弾力的な需要曲線と価格非弾力的な需要曲線


▼ 注1
電力需要の変化に応じて電気料金を変動させることで、家庭や企業の電力利用の変化を促す仕組み。

▼ 注2
例えば、平成22(2010)年と平成23(2011)年の7〜9月に、東京電力と関西電力が実施した「負荷平準化機器導入効果実証事業」、平成24(2012)年の7〜9月に九州電力が実施した「電気料金による電力使用抑制効果に関する実証試験」の結果概要を参照。

▼ 注3
経済学では、このような経済現象を「需要の法則」と呼ぶ。

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