通信事業者の見解
このような現状を踏まえ、2015年7月9日に開催された第14回電気通信番号政策委員会では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信事業者3社とMVNO事業者としてインターネットイニシアティブ(IIJ)へのヒアリングが行われた(写真1)。
写真1 2015年7月9日に開催された第14回情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信番号政策委員会の様子
今回、焦点になったのは、大きく次の2点である。
- 「070」番号枯渇後の携帯電話番号(主に通話用途)の枯渇対策
- M2M専用番号の割り当てについて
この2つの検討項目と、それに付随する項目について、各社の回答はほぼ共通しており、まとめると次の通りとなる。
〔1〕携帯電話番号(主に通話用途)の枯渇対策について
- 携帯電話番号の利用については、「090」「080」「070」との連続性を保つため、「070」番号帯が枯渇した場合は、「060」番号帯を利用するのが妥当である。
- 現在11桁として運用している携帯電話番号の桁数を増やして指定可能番号を増やすという方法もあるが、通信事業者に大きな設備投資が必要であり、さらにエンドユーザーへの影響も大きいため避けるべきである。
〔2〕M2M専用番号について
- M2M専用番号の割り当てについては、現在の通話用携帯電話番号との混乱を避けるために「020」番号帯を利用するのが妥当である。
- 現状、すでに「090」「080」「070」番号帯でM2Mサービスに利用されている番号は、ユーザーへの負担をかけないために、M2M専用番号への移行は避けるべきである。
- M2M専用番号については、新たなサービスに必要な機器(センサーやスマートメーターなど)の急激な需要が予想されるため、番号の指定基準については、現行(過去の番号の使用実績に基づいた基準)よりも実際の需要に基づくなど柔軟な基準が必要である。
このほか、IIJからは、同社が展開しているマルチキャリア対応端末注2について、現状、1端末に複数のSIMカードを搭載し、複数の番号を消費しているが、1つの番号で各通信事業者に対応できるようになれば、番号をより有効に活用できるようになる、といった意見も述べられた。
新たな用途にも対応できる制度が必要
第14回の委員会では、そもそも「M2M」の機器とはどのように定義するのか、という質問も委員から各通信事業者に対して投げかけられた。これに対しソフトバンクは、人と人のコミュニケーション(H2H:Human to Human)を目的に利用される機器以外はM2M機器であると説明した。しかし、同時に、同社を含めた3通信事業者からは、「M2M」の用途の範囲を定めてしまったばかりに、今後新たなサービスで利用される可能性のあるM2M/IoT機器などに対して、専用番号が割り当てられないような制度にはならないよう注意する必要がある、という意見が述べられた。
今回の新たな電気通信番号に関する制度の検討については、今後、M2M/IoTサービスが社会に広く浸透するにしたがって、現行の制度や基準をどのように調整していくべきか、という課題を提起している。同委員会では、2015年12月までに答申を終え、検討の結果を公表する予定となっている。引き続き動向に注目していきたい。
◎取材協力
瀬島 千恵子(せじま ちえこ)
総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 電気通信技術システム課 番号企画室 課長補佐
▼ 注2
複数の通信事業者からネットワーク設備の貸し出しを受け、通信事業者の設備障害の際にこれらを切り替えて、通信を途絶えさせないようにするサービス。医療など、通信の断絶が重大な問題となる分野などに利用される。