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千代田化工建設と住友電工など、500mの直流超電導送電試験に成功

2015/08/06
(木)
SmartGridニューズレター編集部

2015年8月6日、石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(以下:i-SPOT、横浜市神奈川区、理事長:腰塚博美)※1は、経済産業省の委託事業※2にて北海道石狩市石狩湾新港地域に設置した高温超電導直流送電システムにおいて500mの超電導送電試験に成功したことを発表した。超電導直流送電では世界最長級の送電距離となる。i-SPOTでは2015年9月にはデータセンターへの送電試験開始を予定する。事業の概要や試験の成果については次の通り。

事業の目的
超電導送電は、極低温にすると電気抵抗がゼロとなる超電導体を用いて行う送電で、送電ロスの低減や送電容量の増大が可能となる。近年、絶対ゼロ度付近の極低温ではなく、液体窒素温度(-196℃)の比較的高温で超電導となる材料の開発が進み実用化に向けた研究開発が世界的に進められている。同本事業では、高温超電導直流送電システムを試作し、直流電力の実需用を有するデータセンターに対して送電を実際に行うことでさまざまな課題を抽出し、世界に先駆け次世代送電システムの実用化を目指す。

試験成果
超電導送電の実用化に重要となる3つの性能を達成した。

  1. 5kA、100MVAの送電能力を確認。これは約3万世帯分の電力に相当する。
     
  2. 国内で例のない超電導ケーブルの公道への埋設による敷設を実現。
     
  3. 新たな配管構造の採用により、送電路の熱損失を低減し、従来の約1/2※3を達成。また、液体窒素循環の損失を従来の約1/4※4とした。これを踏まえて、今後実施する1000mの実証試験では長距離化に向けた検証を行う。

※1 石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(i-SPOT):
超電導直流送電およびその関連技術に関する試験研究を共同で行うため、千代田化工建設株式会社、住友電気工業株式会社、学校法人中部大学、さくらインターネット株式会社により2014年1月に設立された技術研究組合法にもとづく非営利共益法人

※2 経済産業省の委託事業「高温超電導技術を用いた高効率送電システムの実証事業」:
高温超電導直流送電システムを石狩湾新港地域に設置し、さくらインターネットの石狩データセンターと太陽光発電間、および特殊試験用設備での送電を行い、送電システムとして実用化するためのさまざまな課題の検証を行う。

※3 熱損失:
従来構造、同サイズのもので比較。熱損失は1.5(W/m)以下(速報値)での比較数値。2015年9月に予定している試験にて、精密な測定を実施する予定。

※4 圧力損失:
従来のコルゲート管の同じサイズのもので比較、圧力損失が約30kPa(流量 40L/min時)。
 

■リンク
i-SPOT
千代田化工建設株式会社
住友電気工業株式会社
さくらインターネット株式会社
学校法人中部大学

 

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