NTTら12社が核融合技術を開発する米CFSに出資
NTT株式会社(以下、NTT)などの日本企業12社で構成されるコンソーシアムは、核融合技術を開発する米Commonwealth Fusion Systems LLC(以下、CFS)に出資した。CFSは、2030年代前半に世界初となる商業用フュージョン(核融合)エネルギー発電炉の運転開始を計画している。同社からの知見をもとに、日本国内におけるフュージョンエネルギー発電の早期商用化・産業化へとつなげるのが狙い。NTTが2025年9月2日に発表した。
図1 米Commonwealth Fusion Systemsが開発を進める商用フュージョンエネルギー炉「ARC」のイメージ
出所 株式会社フジクラ プレスリリース 2025年9月2日、「フュージョンエネルギー炉の実証に取り組む米国CFS社への出資」
商用化プロジェクトの知見で国内の商用化・産業化を加速
フュージョンエネルギーは、原子核同士が融合して別の原子核に変わる際に放出されるエネルギーのこと。燃料1グラムで石油8トンの燃焼と同等のエネルギーを生みだすことができるという。燃料を海水から得ることができ、発電の過程で二酸化炭素も発生しない。さらに、原子力発電と異なり、高レベルの放射性廃棄物を発生しない。これらのことから、地球温暖化や環境問題への解決策として注目されている。日本では、政府が、2025年6月に改定した『フュージョンエネルギー・イノベーション戦略』に、2030年代の発電実証を目指すことを明記した。
投資先であるCFSは、マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンオフして2018年に設立し、フュージョンエネルギー分野ではリーディングカンパニーに位置付けられているという。強力な磁場で超高温のプラズマを閉じ込める磁場閉じ込め方式(トカマク型)によるフュージョンエネルギー炉の設計・開発を進めている。これは、ドーナツ状の真空容器内で燃料を超高温のプラズマ状態にし、強力な磁場によって容器の壁に触れないように閉じ込めて核融合反応を維持する、核融合炉の代表的な型式である。
現在、世界初となる商業用フュージョンエネルギー発電炉「ARC」を米国バージニア州に建設する計画を進めており、2030年代前半に運転開始すると発表している。2025年6月には、米GoogleがARCからの20万キロワット分の電力購入契約を締結したと発表した。
CFSに出資する日本コンソーシアムの参画企業は、NTT、株式会社フジクラ、三井物産株式会社、三菱商事株式会社、関西電力株式会社、株式会社JERA、株式会社商船三井、日揮株式会社、株式会社日本政策投資銀行、株式会社三井住友銀行、三井住友信託銀行株式会社、三井不動産株式会社の12社。
日本コンソーシアムの狙いは、CFS社が推進する商用化プロジェクトから、政策・規制への対応、ARCの開発・建設から運転・保守に至るまで、事業の全段階における技術的・商業的な知見を体系的に獲得することにある。海外の先行事例から得たノウハウを日本に持ち帰り、国内での早期商用化・産業化へとつなげたい考えだ。
参考サイト
NTT株式会社 プレスリリース 2025年9月2日、「Commonwealth Fusion Systemsへの出資参画について」
株式会社フジクラ プレスリリース 2025年9月2日、「フュージョンエネルギー炉の実証に取り組む米国CFS社への出資」
三井物産株式会社 プレスリリース 2025年9月2日、「フュージョン(核融合)関連のスタートアップ米Commonwealth Fusion Systems(CFS)社への出資参画」