[クローズアップ]

AllJoynを核にIoT/IoEを実現するAllSeenアライアンス ―Windows 10に標準装備されたAllJoynで家電も制御へ ―

2015/09/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

AllJoynメッシュネットワーク:プロキシマルネットワーク

〔1〕AllJoyn対応デバイスがお互いの能力を認識する

 次に、家庭環境で構築されるAllJoynメッシュネットワークである「プロキシマルネットワーク」に接続された、AllJoyn対応デバイスの動きを見てみよう。

 図4は、プロキシマルネットワークの構成例である。家の中に構築されたプロキシマルネットワークに接続された各AllJoyn対応デバイスは、このネットワークの通信路(仮想バス)上のサービスインタフェース経由で、各デバイスがもっている能力(例:メッセージを送信できる機能や表示できる機能など)が記述される。各デバイスは、この能力をお互いに認識することによって、相互に通信が可能になる。

図4 AllJoynメッシュネットワーク(プロキシマルネットワーク)に接続されたAllJoyn対応デバイス

図4 AllJoynメッシュネットワーク(プロキシマルネットワーク)に接続されたAllJoyn対応デバイス

〔出所 AllSeen Alliance :「An Open Source project building the framework for the Internet of Things (IoT)」、June 2015〕

 例えば、図4の左側上に示す洗濯機は、メッセージ送信機能やコントロールパネル、時刻インタフェースをもっていることがわかる(記述されている)。また、右下のオーディオ機器は、メッセージ送信機能とコントロールパネルをもっている。また、例えば電球には、リソースがあまりない(小さい)Thinクライアントなので、前述したThin(簡易)アプリケーションに対応したThinサービスフレームワークのモジュール搭載したAllJoynデバイスとなっている。

 これによって、AllJoyn対応デバイスAが近くの通信可能なAllJoyn対応デバイスBを発見したときに、AllJoyn対応デバイスBがどのような機能をもっているかを認識できるようになる。例えば、そのデバイスがライト(電灯)だったら明かりをつけるという能力がある、スピーカーであれば音を出すという能力があることがわかる。このような能力を知っていることによって、自分が使用しているAllJoyn対応スマートフォンあるいはタブレットから、電灯をオン・オフしたり、スピーカーの音量の調節を行ったりすることが可能になる。

 例えば、YさんのタブレットにAllJoynアプリケーション(コントロールアプリケーション)を入れたとすると、Yさんは家の中で接続されているAllJoyn対応のデバイスをすべて一覧(例:テレビ、洗濯機、スピーカー電灯等々)して見えるようになり、これらを自由にコントロールすることも可能となる。

 外出先からは、前述したセキュアなAllJoynゲートウェイともなる「AllJoyn Gateway Agent」経由で遠隔からの制御が可能となる。

〔2〕Windows 10にデフォルトでAllJoynを搭載

 また、注目すべきはことは、マイクロソフト(AllSeen Allianceのプレミアメンバー)が2015年7月29日にリリースしたばかりのOS「Windows 10」のすべてのエディションに、AllJoynがデフォルト(標準)で搭載されていることである。このため、Windows 10を搭載したパソコンは、家庭内のすべてのAllJoyn対応デバイスを制御可能になる。例えば、韓国LG社のAllJoyn対応のテレビや、米国ライフェックス(LIFX)社のLEDランプ、パナソニックのハイレゾ対応スピーカーなどを制御できるようになる。また、Windows 10のほか、Android端末やiPhone端末にもAllJoyn対応のアプリケーションをダウンロードすれば、iPhone端末やAndroid端末も、AllJoynコントローラになることができる。

 今後も、AllSeenアライアンスのメンバー企業注9からAllJoyn対応のデバイスが発表される予定となっており、AllJoynのエコシステムが急速に展開していくと期待されている。

クアルコムからAllJoyn対応ソリューションが登場

 クアルコムでは、AllJoyn上で動作する、家庭の各部屋に音楽を配信(マルチルーム配信)するプラットフォーム「AllPlay」を展開している。具体的には、AllPlayの機能を実装したWi-Fi対応モジュール「Smart Audio Module」を、スピーカーメーカーなどに提供している。パナソニックは、AllPlay対応のオーディオ機器を次々に発表し、注目されている。CDステレオシステム「SC-PMX100」(2015年5月発売)を皮切りに、2015年7月には、AllPlay/Wi-Fi対応のワイヤレススピーカーシステム「SC-ALL2」と、コンパクトステレオシステム「SC-ALL5CD」を発売した注10

 以上のほか、すでに、AllJoyn対応のLED電球に実装するためのSmart Lighting Moduleを提供し、米国LIFX社などによって採用されている。また、ロンシス社〔Longsys、中国・深圳(シンセン)〕が提供しているAllJoyn対応のWi-Fiモジュール「GT202」にも、クアルコム社が開発した低消費電力型のWi-Fiチップとなる「QCA4002」が採用されている。GT202は、中国の家電メーカであるハイアール(Haier)のスマートオーブンにも採用されている。

◎取材協力(敬称略)

Linuxファウンデーション 日本担当ディレクタ 福安 徳晃
クアルコムジャパン ディレクタ・エンジニアリング 内田 信行
クアルコムジャパン スタッフマネージャー・ビジネスディベロップメント 臼田 昌史


▼ 注9
日本はシャープ、ソニー、パナソニック、キヤノン、ルネサス、Kii、スキード(Skeed)などがメンバー。

▼ 注10
パナソニック:2015年6月30日付けプレスリリース、http://news.panasonic.com/press/news/data/2015/06/jn150630-1/jn150630-1.html

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