[特集]

電力自由化で変わる電力取引! 改革を実施する日本卸電力取引所(JEPX) ― 取引形態を刷新し「1時間前市場」を導入へ ―

特集 パート3
2015/10/30
(金)
SmartGridニューズレター編集部

2016年4月からの一般家庭・コンビニなどへの電力小売全面自由化を目前に控えて、一般社団法人日本卸電力取引所(JEPX:Japan electric Power Exchange)では、大幅な改革が進められている。現在、電力供給事業者は、従来の一般電気事業者10社に加え、卸電気事業者、独立系事業者(IPP)、新電力(特定規模電気事業者、PPS)など多様な事業者が登場し、新規に電力市場に参入する新電力に至っては750社を超え(2015年10月現在)なお増加している。まさに、電力全面自由化幕開け時代である。ここでは、現在、卸電力取引所で推進されている5つの改革を中心に、その新しい展開を解説する。
なお本記事は、一般社団法人日本卸電力取引所 総務部長 岸本尚毅(きしもと なおき)氏への取材をベースに最新動向をまとめた注1。

電力自由化と日本卸電力取引所(JEPX)の設立

〔1〕卸電力取引所の4つの取引形態

 日本の電力事業は、戦後の電力事業再編によって国内が9つの地域(その後、沖縄電力が参加し10地域となった)に分割され、それぞれの地域で民間の電力会社が発送配電を行ってきた。しかし、世界の電力自由化の波が進展する一方、日本は90年代初頭の大不況によって電気料金の低減化が求められるようになったため、市場に競争原理を導入することによってその実現を目指した。その結果、図1に示すように、1995年に発電部門の自由化(独立系発電事業者の参入)を皮切りに、その後、段階的に電力の自由化が行われてきた注2

図1 日本の電力自由化と日本卸電力取引所(JEPX)の沿革

図1 日本の電力自由化と日本卸電力取引所(JEPX)の沿革

出所 日本卸電力取引所の資料より

 このような背景のもとに、日本では2003年11月、電気の売り手側と買い手側の会員によって電気の売買を行う「日本卸電力取引所」(以下、卸電力取引所)が設立された(http://www.jepx.org/aboutus/index.html)。

 この卸電力取引所では、基本的に表1に示すように、(1)スポット市場、(2)時間前市場、(3)先渡市場、(4)分散型・グリーン売電市場、の4つの取引形態で電力の売買が行われている。

表1 日本卸電力取引所の主な4つの取引形態

表1 日本卸電力取引所の主な4つの取引形態

出所 日本卸電力取引所の資料より

〔2〕会員数は45%増の119社へ、電気の取引量は20%増へ

 現在、卸電力取引所では、電力の小売全面自由化(2016年4月)を目前に控えていることもあり、ビジネスが活発化している。会員数は82社(2014年5月)から119社(2015年10月5日現在)へと45%も増加している。また、もっとも基本的な電気の取引であるスポット市場における取引量は、図2に示すように、右肩上がりとなっており、例えば、

図2 スポット市場における月別の取引約定量(取引する電気の量、単位:kWh)

図2 スポット市場における月別の取引約定量(取引する電気の量、単位:kWh)

出所 日本卸電力取引所の資料より

  • 平成25(2013)年度:約103億kWh(キロワット時)
  • 平成26(2014)年度:約126億kWh(キロワット時)

というように、2014年度の電気の取引量は2013年度に比べて20%以上も増大(126億kWh÷103億kWh)している。

 この年間約126億kWhの取引量は、1日分の取引量としてみると、約3,600万kWh/日(126億kWh÷365日。TTV:Total Transaction Volume、1日分の合計電力量)となっている注3

 また、日本の総電力量は約8,200億kWh(2014年度:出所 電気事業連合会サイトより)となっているため、卸電力取引所を経由して供給されている電気の量は、日本全体の1〜2%程度(126億kWh/年÷8,200億kWh)であり、海外に比べても取引所のシェアがかなり低いのが現状である。

 一方、卸電力の価格(システムプライス)は、2015年10月16日受渡分の24時間のkWh当たりの平均価格は、10円弱/kWhの水準となっている(表2)。〔DA-24:Day Ahead 24 hours。2015年10月16日は9.69円であった。日々変化している〕

表2 卸電力取引所(JEPX)のスポット市場における電気の取引量と価格

表2 卸電力取引所(JEPX)のスポット市場における電気の取引量と価格

参考:卸電力取引所(JEPX)の2015年10月16日の情報をもとに編集部作成、http://www.jepx.org/

〔3〕具体的な制度設計に関する検討

 前述したように2016年の4月から、一般家庭も含めた電力小売全面自由化を迎えるが、卸電力取引所は、直接、電気の小売をするのではではなく、小売事業者や発電事業者が卸の電力を取引する場を提供することをミッションとしている。

 2013年4月に閣議決定された「電力システム改革に関する改革方針」を受けて同年11月に第1段階の改正電気事業法注4が成立、現在、経済産業省において、卸電力市場の活性化なども含めた具体的な制度設計に関する検討・審議が行われており(電力システム改革小委員会 制度設計WG注5)、全面自由化に備えている。

 この検討にあわせて、卸電力取引所では図3に示すように、「1時間前市場」「新しいインバランス制度への対応」注6「預託金制度の見直し」などの検討が行われている(一部実施済み)。そのうちの2016年4月から解説される「1時間前市場」という新しい市場に関して、行われている5つの改革(図3)を中心に解説する。

図3 卸電力取引所(JEPX)における電気取引の改革

図3 卸電力取引所(JEPX)における電気取引の改革

出所 日本卸電力取引所の資料より


▼ 注1
日本卸電力取引所(JEPX)については、詳しくは、【SmartGridニューズレター2015、Vol.1 特別編集号[特集]新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力取引所」の役割と課題】を参照してください。http://sgforum.impress.co.jp/

▼ 注2
1995年:第一次制度改革、1999年:第二次制度改革、2003年:第三次制度改革、2008年:第四次制度改革、2013年:電力システムの改革方針(閣議決定)。具体的には、電気事業法の改正を行いながら、電気事業制度改革と電力自由化が行われてきた。

▼ 注3
卸電力取引所ホームページにおける、スポット取引インデックス情報(例:2015年10月16日受渡分の取引情報の数値。日々変化していることに注意)。⇒http://www.jepx.org/を参照のこと。

▼ 注4
①広域系統運用の拡大(2015年)、②小売および発電の全面自由化(2016年)、③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保(2020年)

▼ 注5
制度設計ワーキンググループ、http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#seido_sekkei_wg

▼ 注6
インバランス制度:電力は「需要と供給量」を一致(同時同量)させる必要がある。このとき、発電事業者や小売事業者が計画どおりに電力を確保できなかった場合や余らせた場合を「インバランス」と呼ぶ。発電事業者や小売事業者は同時同量を達成する義務があるが、過不足があった場合はインバランス料金が課せられることが、制度上定められている。

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