間近に迫った発送電の法的分離
〔1〕日本の電力システム改革
日本の電力のシステム改革は、表1、図1に示すように、2015年4月1日に第1段階として電力広域的運営推進機関(OCCTO)注1が設立され、続いて第2段階の電気とガスの小売全面自由化が行われた注2。さらに、第3段階の法的分離(2020年に送配電部門の法的分離、2022年にガス導管部門の法的分離)の実現を目指して動きが活発化してきた。
図1 電力・ガスに関するシステム改革のスケジュール(改革の各段階に合わせて、検証・詳細制度設計を行う)
表1 2022年までに3段階で行われる電力・ガスシステム改革と電気事業法
※1:旧10電力会社:東京電力だけ先行して東京電力パワーグリッドを法的分離(2016年4月1日から一般送配電事業会社として発足)を完了
※2:ガス大手3社⇒東京ガス・大阪ガス・東邦ガス(3社で市場の約7割のガス導管を保有)の法的分離
出所 経済産業省 エネルギー庁「電気事業制度について」
〔2〕Utility 3.0の登場:2050年のエネルギー産業を展望
ここでは、電気・ガス・水道・運輸などの公共事業〔Utility(ユーティリティ)と呼ばれる〕について、特に、電力・ガスの視点から大きく3つの時代に分類し、2050年を目指したシナリオについて見ていく。
3つの時代とは、表2に示すように、
- Utility 1.0(1882年〜):地域独占・規制下のエネルギー事業
- Utility 2.0(2020年〜):電気・ガス会社の自由化・法的分離後のエネルギー事業
- Utility 3.0(2050年〜):5D(人口減少・脱炭素化・分散化・制度改革・デジタル化)による新・エネルギー事業
である。現在は、Utility 2.0時代へ突入している時点である。
表2 Utility 1.0からUtility 3.0への動きとエネルギー関係の当面の主な動き
1882年:エジソンは自身が開発した白熱電球を普及させるため、ニューヨーク市に設置した中央発電所から半径1kmほどの顧客を直流配電線でつないで、電灯約1000灯をともした年のこと
IRENA:International Renewable Energy Agency、国際再生可能エネルギー機関
出所 SmartGridニューズレター2019年1月号などの各種資料をもとに編集部で作成
▼ 注1
OCCTO:Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, JAPAN、電力広域的運営推進機関
▼ 注2
第1段階の電力広域的運営推進機関(OCCTO)の発足は2015年4月1日、第2段階の電気・ガスの小売完全自由化の開始は、電気が2016年4月1日、ガスが2017年4月1日。