[特集]

発送電の法的分離直前!電力市場は何が変わったのか

― 電力レジリエンス小委員会が発足し新・電力網への課題も ―
2019/05/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

日本の電力システム改革は、当面、最終となる第3段階の送配電の法的分離(2020年)を目前に、大詰めを迎えている。電力システム改革については、すでに、第1段階の電力広域的運営推進機関(OCCTO)が発足し、第2段階の電気・ガスの小売全面自由化がスタートしている。その後、2018年7月3日に、第5次エネルギー基本計画が閣議決定され、2030年の長期エネルギー需給の見通しと、2050年を見据えて、脱炭素化社会の実現に向けた再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化などが盛り込まれた。
電力の小売全面自由化から3年が経過して何が変わったのか。2019年11月から始まるFIT(再エネの固定価格買取制度)終了以降の新ビジネスの展開や、4年目に突入したVPP構築実証事業の展開など、新時代に求められる新・電力網の構築に向けた課題は何か。政府の各委員会の動向も整理してレポートする。

間近に迫った発送電の法的分離

〔1〕日本の電力システム改革

 日本の電力のシステム改革は、表1、図1に示すように、2015年4月1日に第1段階として電力広域的運営推進機関(OCCTO)注1が設立され、続いて第2段階の電気とガスの小売全面自由化が行われた注2。さらに、第3段階の法的分離(2020年に送配電部門の法的分離、2022年にガス導管部門の法的分離)の実現を目指して動きが活発化してきた。

図1 電力・ガスに関するシステム改革のスケジュール(改革の各段階に合わせて、検証・詳細制度設計を行う)

図1 電力・ガスに関するシステム改革のスケジュール(改革の各段階に合わせて、検証・詳細制度設計を行う)

出所 資源エネルギー庁「ガスシステム改革の現状と今後の課題について」、2018年9月20日

表1 2022年までに3段階で行われる電力・ガスシステム改革と電気事業法

表1 2022年までに3段階で行われる電力・ガスシステム改革と電気事業法

※1:旧10電力会社:東京電力だけ先行して東京電力パワーグリッドを法的分離(2016年4月1日から一般送配電事業会社として発足)を完了
※2:ガス大手3社⇒東京ガス・大阪ガス・東邦ガス(3社で市場の約7割のガス導管を保有)の法的分離
出所 経済産業省 エネルギー庁「電気事業制度について」

〔2〕Utility 3.0の登場:2050年のエネルギー産業を展望

 ここでは、電気・ガス・水道・運輸などの公共事業〔Utility(ユーティリティ)と呼ばれる〕について、特に、電力・ガスの視点から大きく3つの時代に分類し、2050年を目指したシナリオについて見ていく。

 3つの時代とは、表2に示すように、

  1. Utility 1.0(1882年〜):地域独占・規制下のエネルギー事業
  2. Utility 2.0(2020年〜):電気・ガス会社の自由化・法的分離後のエネルギー事業
  3. Utility 3.0(2050年〜):5D(人口減少・脱炭素化・分散化・制度改革・デジタル化)による新・エネルギー事業

である。現在は、Utility 2.0時代へ突入している時点である。

表2 Utility 1.0からUtility 3.0への動きとエネルギー関係の当面の主な動き

表2 Utility 1.0からUtility 3.0への動きとエネルギー関係の当面の主な動き

1882年:エジソンは自身が開発した白熱電球を普及させるため、ニューヨーク市に設置した中央発電所から半径1kmほどの顧客を直流配電線でつないで、電灯約1000灯をともした年のこと
IRENA:International Renewable Energy Agency、国際再生可能エネルギー機関
出所 SmartGridニューズレター2019年1月号などの各種資料をもとに編集部で作成


▼ 注1
OCCTO:Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, JAPAN、電力広域的運営推進機関

▼ 注2
第1段階の電力広域的運営推進機関(OCCTO)の発足は2015年4月1日、第2段階の電気・ガスの小売完全自由化の開始は、電気が2016年4月1日、ガスが2017年4月1日。

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