スマートメーター網(AMI)環境で検討されているプロトコル群
─スマートメーター(AMI)環境で検討されているプロトコル群については、具体的にはどのようなものが検討されているのでしょうか。
浅見:各通信プロトコルを実際のスマートメーター網に対応づけると、図2のようになります。
図2 電力会社とスマートメーターのデータフォーマットや通信プロトコルの例
図2のように、Aルートにおいては、スマートメーターから東電のMDMS(サーバ)注6に、家庭からの電力使用量などに関するデータを収集します。このとき、集めたデータを電力会社だけでなく第三者のサービスプロバイダなどが(ユーザーの了解のもとに)、その情報を使って省エネサービスなどを提供する場合が考えられます。その際、東電から第三者(サービスプロバイダなど)に提供するためのデータフォーマットやインタフェースも必要になります。具体的には、図2に示すプロトコル群が検討されています。
(1)MDMSとスマートメーター間のデータフォーマットには、ANSI C12.19規格やIEC 62056(DLMS/COSEM注7)
(2)MDMSとスマートメーター間の通信プロトコルには、ANSI C12.22規格やIEC 62056(DLMS/COSEM)
(3)電力会社と第三者のサービス事業者の間のインタフェースには、IEC 61968規格
─図2にある〜のプロトコル標準を簡単に説明していただけますか。
浅見:それでは、図表の順番どおりではありませんが、それぞれ簡単に説明しましょう。
【第1の標準】MDMSに関するインタフェース標準:IEC 61968
例えば、聞きなれないと思いますが、図2と表1に示すように、電力会社(MDMS)と第三者のサービス事業者間のデータの授受に関するインタフェースは、IEC 61968というIEC策定の国際標準規格が検討されています。これは、情報をどのようなフォーマットで送るかという規格で、CIM(共通情報モデル)とも言われています。すなわち、IEC 61968標準を使用して、国際標準に準拠したデータフォーマットで他のサービス事業者にデータ(電力会社のデータ)を渡せるようにすべきであるということです。これが第1の標準です。
表1 AMIで使用されるデータフォーマット標準と通信プロトコル標準
〔出所:http://www.csaj.jp/government/other/2009/090709_jetro1.pdf、http://www.itrco.jp/wordpress/?p=1082〕
【第2の標準】ANSI C12.19/ANSI C12.22もしくは、/IEC 62056(DLMS/COSEM)
第2の標準は、Aルート、すなわち家庭のスマートメーターから東電のMDMSまで、どのような方法でデータを集めるのかという標準仕様です。Aルートには図2のようなANSI C12.19/ANSI C12.22やIEC 62056(DLMS/COSEM)といったプロトコルが使用されます。
ANSI系のデータフォーマット標準には、XMLベースの「ANSI C12.19」を使用し、通信プロトコル標準には、IPベースの「ANSI C12.22」などを使うことが検討されています。/のIEC 62056(DLMS/COSEM)におけるXMLの採用は、今後の位置づけとなっています。詳しくは、表1に示す各URLを参照してください。
【第3の標準】ECHONET Lite
第3の標準は、スマートメーターと屋内のHEMS(家庭用エネルギー管理システム)の接続です。その標準インタフェースとしては、図3および表2に示す「ECHONET Lite」を使用します。ECHONET Liteは、経済産業省傘下のJSCA(スマートコミュニティアライアンス)内のスマートハウス標準化検討会がまとめた「スマートハウス標準化検討会中間取りまとめ」における提言をもとに、経済産業省で2012年2月24日に承認された規格注8です。
図3 スマートハウスにおけるECHONET Liteの位置づけ
〔出所 http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120224007/20120224007-3.pdf〕
ここでの留意点は、このECHONET Liteの部分だけが国際標準ではなく日本国内の標準仕様になっていることです。ただし、この場合はECHONET Liteのデータフォーマットを用いて、宅内でスマートメーターと家庭内のHEMSとの間で通信するだけですから、外部には影響を与えることはありません。今後は、NIST(米国国立標準技術研究所)が標準として採用を決定した「SEP 2」(Smart Energy Profile 2)注9との調整も検討課題となっています。
─かなり具体的なプロトコルが検討されているのですね。
浅見:はい。フォーラムベースでいろいろと検討されています。例えば、前出の図2に示したANSI C12.19/ANSI C12.22の対抗馬であるIEC 62056(DLMS/COSEM)は、IEC TC13 WG 14で規定はしていますが、実態はDLMS UA(DLMS-User Association)注10というフォーラム標準に基づいています。
どちらの仕様を使うかはともかくとして、国際標準的にはANSI系とIEC系の2通りがあります。それとは別に、東電の管轄外(東電の管轄はスマートメーターまでで、屋内は管轄外)では、「スマートメーターとHEMSについては“ECHONET Lite”で通信してください」ということです。正確に言うと、ANSIやIECに関しては東電の検討の範囲内にありましたが、このECHONET Liteについては最近承認された規格であり、さらに屋内でECHONET Liteを使用して通信することについては、東電としては2012年3月までは考えてなかった(管轄外)仕様だと思います。
▼ 注6
MDMS:Meter Data Management System、電力会社の検針データ管理システム。
▼ 注7
DLMS:Device Language Message Specification、IECのデバイス言語メッセージ仕様。
COSEM:Companion Specification for Energy Metering、IECのエネルギー計測関連仕様の1つ。
▼ 注8
http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120224007/20120224007-2.pdf
▼ 注9
AMI(スマートグリッド用スマートメーター基盤)やホームネットワーク(HAN)におけるIPベースの制御用の標準アプリケーションプロファイル。例えば、スマートハウスにおけるデマンドレスポンス(電力需給の制御)や負荷制御(家電やエアコン等の制御)、電力料金の課金、見える化、さらに電気自動車の充電管理などを行う。
▼ 注10
DLMS UA(本部:スイス)、メンバー数:268社(2012年10月時点)。
http://www.dlms.com/faqanswers/generalquestions/howcanijointhedlmsuserassociation.php