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組込み総合技術展(ET2012)に登場した ECHONET LiteベースのHEMSゲートウェイ

2013/01/01
(火)

組込み総合技術展(ET2012)に見るECHONET Lite関連の展示

ここでは、HEMS製品を含めサービスを想定した内容でデモンストレーションを披露していたインテルと日新システムズ、超低消費電力型のWi-Fi(無線LAN)環境で「ECHONET Lite」のデモ・展示を行ったユビキタスについて紹介する。

〔1〕インテルはHEMS/ECHONET Lite対応のゲートウェイを出展

米国におけるスマートグリッドビジネスに注力しているインテル(写真1)が、同社の主力製品にあたるATOMプロセッサ注1を用いてHEMS/ECHONET Lite対応ゲートウェイのデモを行った。実際にソリューションモデルを構築したのは、インテル社の代理店である岡谷エレクトロニクスであった。

写真1 インテルのATOMプロセッサ搭載のHEMSゲートウェイ(下)と4つのF-PLUG(右)のデモ。写真右下は、各F-PLUGの「電力」「照度」「温度」「湿度」の表示例

写真1  インテルのATOMプロセッサ搭載のHEMSゲートウェイ(下)と4つのF-PLUG(右)のデモ。写真右下は、各F-PLUGの「電力」「照度」「温度」「湿度」の表示例

デモは、ATOMプロセッサを搭載したHEMSゲートウェイにECHONET Liteソフトウェアを搭載し、スマートコンセント「F-PLUG」(富士通ビー・エス・シー製注2)間をBluetoothによって通信するというもの。F-PLUGに搭載されている「電流」「温度」「湿度」「照度」の4つのセンサーからのデータを、ECHONET Liteコマンドで測定し、その内容をHEMSゲートウェイに接続されたテレビモニターに表示していた。

岡谷エレクトロニクスでは、今後1軒のスマートハウスには、今回のデモンストレーションで利用した各種センサーが最低でも100個設置されると予測。これらの各種センサーからのデータを5秒サイクルで瞬時に測定し、その内容を解析したり表示させたりするには処理能力に優れたCPUが必要と判断し、インテルのATOMプロセッサを採用した。さらに、継続した事業展開を行うため、まずはHEMSゲートウェイ用の開発キットを2013年2月末日までに市場へ投入する計画とのこと。

〔2〕日新システムズはHEMSソリューションを出展

ECHONET Lite対応ソフトウェア製品を他に先駆けてリリースし、話題となった日新システムズは、すでに、このソフトウェアのライセンスビジネスやHEMSアプリケーションの受託開発ビジネスを展開している。さらに、現在ではビジネス領域を拡大させ、その枠をHEMSゲートウェイや無線対応CTモジュール注3、日本初の壁埋め込みタイプの電力測定機能付コンセント(以下、スマートコンセント)など、具体的なハードウェア製品の市場展開を進めている。

無線対応CTモジュールは、既設の分電盤(写真2の中央上部)への設置が可能となり、このCTモジュールを分電盤へ設置することによって、家庭全体の電力量の監視を行うことが可能となる。また、このCTモジュールから測定されたデータは、同社のHEMSサーバに保存したり、タブレット端末で電力・エネルギーの利用状況を「見える化」し、表示・確認したりすることも可能だ。

写真2 日新システムズのHEMSソリューションの展示

写真2  日新システムズのHEMSソリューションの展示

HEMS機器を市場に定着させ普及させていくには、従来のような家ごとスマートハウス化というアプローチから、同社が手掛けるスマートコンセントのような、手軽に導入できる機器がもう少し拡充されていくアプローチも必要になると思われる。

〔3〕ユビキタスがWi-Fi環境で「ECHONET Lite」を出展

ユビキタスは、超低消費電力型のWi-Fi環境で「ECHONET Lite」を動作させるデモを行い、注目を集めた。

同社が得意とする「小さく」「軽く」「速い」ネットワークソリューションの実績と技術を生かして、「ECHONET Lite仕様Version 1.01」に準拠したミドルウェアを、わずか10Kバイトから実装可能な極小サイズで開発。Marvellスマートエナジープラットフォームに向けて提供を開始し(2012年11月)、そのデモや展示を行った(写真3)。

写真3 ユビキタスが超低消費電力型のWi-Fi環境での「ECHONET Lite」を展示(右がMarvellスマートエナジープラットフォームのデモ)

写真3  ユビキタスが超低消費電力型のWi-Fi環境での「ECHONET Lite」を展示(右がMarvellスマートエナジープラットフォームのデモ)

米国Marvell社が提供するスマートエナジープラットフォームは、無線LAN(Wi-Fi)ドライバからユーザーアプリケーションまで、クラウド接続に必要なすべてのソフトウェアをスマートモジュールに内蔵したソリューションとなっている。これは、低消費電力なマイクロコントローラ「88MC200」とIEEE 802.11 a/b/g/nに対応した無線LANチップ「Avastar88W878X」で構成され、ZigBeeのSmart Energy Profile(SEP)にも対応している。

さらにユビキタスは、上記のECHONET Lite準拠のミドルウェアを、米国GainSpan社の超低消費電力型の無線LANチップ「GS1011」を搭載したモジュールに向けて提供を開始し、そのデモや展示も行っていた。

今後の展開

今後は、TTC(情報通信技術委員会)で2012年11月6日に策定された「ホームネットワーク通信インタフェース実装ガイドライン」(TR-1043)注4における、HEMSシステムのレイヤ4以下の検証を行いながら、新しいビジネスモデルを構築し、事業化が行われることになる。


▼ 注1
ATOMプロセッサ:携帯情報端末や組込みシステム向けのマイクロプロセッサ。

▼ 注2
F-PLUG:ARM Coretex-M3コアを搭載した富士通セミコンダクターのFM3ファミリ「MB9BF116N」を採用したスマートコンセント。

▼ 注3
CTモジュール:Current Transformerモジュール、電流検出用トランス・モジュール。配電線などにクランプして(挟んで)電流を検出するためのモジュール。会場では、新製品として2013年1月以降の市場投入(HEMS補助金対象の申請予定)を予定している既存の分電盤にも、簡単に設置できる無線対応のCTモジュールやスマートコンセントなどの製品を展示し、デモを行った。

▼ 注4
スマートコミュニケーションの実現に向けたTTC技術レポート TR-1043、「ホームネットワーク通信インタフェース実装ガイドライン」の制定(2012年11月9日、TTCプレスリリース)、http://www.ttc.or.jp/j/info/release/20121109/

Profile

織田 淳(おだ じゅん)

xEMSインテグレータ研究会

1986年から大手半導体ベンダにて通信プロトコルLSI(ISDN、Ethernet、ATMネットワーク)の商品企画、営業技術を担当。2000年から通信ソフトウェアベンダにて自動車メーカー向け車載端末用ブラウザの商品企画と事業推進を担当。2004年からオーバーレイネットワーク技術の研究開発を行い、2008年からホームICT向けのプラットフォーム事業やHEMSゲートウェイを含めたクラウド連携ビジネスの事業推進を担当。標準化組織でネットワークミドルウェアの研究にも従事。

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