アムステルダムの次の一手
世界の各都市は、環境に配慮した低炭素都市「スマートシティ」の実現を目指して、いろいろなプロジェクトを立ち上げているが、これらのスマートシティプロジェクトでは、IoTがエネルギーの問題改善に役立つという理由から、その導入に積極的だ。このうち、オランダの首都アムステルダムでは、ヨーロッパの都市の中でも特に注目度の高いスマートシティプロジェクトを展開している。
アムステルダムという街の一般的なイメージとして「運河」や「自転車」といったキーワードが頭に浮かんでくる読者が多いのではないかと思うが、アムステルダムのこれまでの歩みに触れていくと、次第に「進歩的な街」という印象を強く受けるようになるという。
その理由の1つとして、古いところではまず「東インド会社」を挙げることができる。ご存知のとおり、東インド会社は株式会社の起源となった組織で、当時、イギリスやフランス、オランダなど各国に設立されたのだが、これらの東インド会社のうち、オランダ(アムステルダム)の東インド会社が世界で最初に設立された株式会社なのだ。
また、一昔前なら、「ヨーロッパで最初に米国とインターネット接続を行ったのもアムステルダム」だったというエピソードを挙げることができる。これはアムステルダムにある国立情報工学・数学研究所(以下:CWI)がヨーロッパで最初にインターネットの前身であるNSFNET※と接続を開始し、これを契機にヨーロッパ各地の大学や研究機関もインターネット接続するようになった。
そして、つい最近も、アムステルダムの「進歩的な街」を印象付けるニュースが流れていた。同市では、太陽光発電機能を備えた世界初の自転車専用道路を開通させたという。今回開通した自転車専用道路は「ソーラロード(SolaRoad)」と呼ばれていて、強化ガラスで覆われた太陽光電池パネルを利用した縦2.5メートル、横3.5メートルのコンクリート製モジュールが道路に貼り付けられていて、ガラスの表面には特殊な滑り止め加工が施されており、自転車がスリップしないよう施されている。(図1参照)
この仕組みは将来的には車道にも応用できるという。ここで得られた電力は、街路灯を点灯させるのに利用したり、路面から直接充電を行ったりすることで電動自転車や電気自動車を止めることなく運転しながら自動充電するアイデアなどが提案されている。
図1 SolaRoadイメージ
※ 全米科学財団(NSF:National Science Foundation)が米国内のスーパーコンピュータの相互利用を目的に構築したネットワーク。今日のインターネットの原型となった。