スマートグリッドと現在の電力システム
最初に、スマートグリッドと現在の電力システム(電力系統ともいわれる)注1の関係を整理してみる。
〔1〕電力システムの歴史
電力システムの歴史を簡単に見てみると、表1に示すように1879年に米国でエジソンが直流方式による白熱電灯を実用化し、1881年に電力事業を始めたのとほぼ同じ頃、日本でも、1882年に東京・銀座に日本初の電灯(アーク灯)が点灯された。
表1 黎明期の電力の歴史
その後、日本の電力システムは、例えば、130年前の1883年(明治16年)に設立された東京電燈(現・東京電力)や、1887年(明治20年)に設立された大阪電燈(現・関西電力)などの登場を契機に、小さな電力会社が寄り集まって大きく成長していった注2。
電力システムについては、単に供給側が需要側の要求に合わせて電気を送る従来のシステムから、供給側と需要側の両者の間で電力の需要と供給のバランスの最適化を行うスマートグリッドへと発展している。
〔2〕従来の電力システムからスマートグリッドへの発展
これを概略的に整理したものが、図1である。
図1 従来の電力システムからスマートグリッドへの発展イメージ
従来は電力会社が需要側の電力消費に合わせて発電量の制御のみを行っていた〔図1(1)参照〕。しかし、今後のスマートグリッドの環境では、制御が困難な太陽光や風力による発電などを取り込むとともに、需要側の電力消費も電力会社の発電量に見合うように誘導する(制御する)仕組みを具備していくようになる〔図1(2)参照〕。
このため、広義の電力システムは、前述したように、単に電力会社(供給側)が「電力を送るシステム」から、一般ユーザー(需要側)と連携して「電力の最適化を行うシステム」へと進化しているのである。
スマートグリッドのひとつの姿として、東光電気が提唱するエネルギーのプラットフォーム(T-STEP:Toko SmarT Energy open Platform)を図2に示す。この図から、電力が単に発電所から送電線で電力によって送っていた時代の頃のイメージから、電力システムが放射線状に広がりをもって発展しているイメージを見ていただける。
図2 スマートグリッドのひとつの姿:東光電気が提唱する革新的オープンプラットフォーム(T-STEP)のイメージ
T-STEP:Toko SmarT Energy open Platform
このような電力システムが、明確に情報通信技術と統合されるようになったことから、大きく国際的な流れとなり、本格的なスマートグリッド時代を迎えたのである。
現在、電力システムはさらに外側へと広がっている。実際に、陸上の電力システムだけでなく、洋上風力発電などの登場によって海上へと発展している。
▼ 注1
電力システム(電力系統):Electric Power System。電力の発生から家庭・工場などの消費に至るまでの電力供給システムのこと。具体的には、発電所から送電線、変電所、配電線、負荷(家庭の家電機器や工場の諸設備)等で構成されている。電力業界では「電力系統」と言われることが多いが、ここでは、情報通信関係者にも理解しやすいように、「電力システム」とする。
▼ 注2
日本の電力事業を歴史的に見ると、昭和7年(1932年)のピーク時には、電力会社の数が、約850社も乱立した過当競争時代もあり、今日でいう電力ベンチャー花盛りという時期もあった。その後、国家統制期を経て、今日の10電力会社による発送配(発電・送電・配電)一貫体制となった。また、1995年からは、一部電力の自由化が開始された。なお、昭和26年(1951年)以降、9電力体制になった後、2000年に沖縄電力を加えて10電力体制となっている。