WoTの利点
IoTと比較して、WoTには次のような利点がある。
- エコシステムを作りやすい
WoT同士であれば、企業や業界を越えてプラットフォーム同士を相互接続できるようになる。このため、大きなエコシステム(複数の企業によって開発された協業システム)を作りやすい。 - ロックインがない
特定の企業や業界だけのために、個別開発する必要がない。また、各企業やフォーラムなどで開発されたプロプライエタリな技術(独自技術)に、ロックインされる(依存しすぎた結果、乗り換えが困難になる)恐れがない。 - 技術者を確保しやすい
WoTは、W3Cで標準化されているWeb技術を採用していることや、インターネットの普及によってWeb技術者は人数が多いことから、優秀な技術者を確保しやすいメリットがある。 - マルチデバイスの対応が容易
Web技術は、ハードウェアやOSによらず、どのような環境でも動作することを目指しており、実績もあるため、マルチデバイスへの対応が容易である。
具体例で考える
図2 複数メーカーA、B、Cの製品を1つのアプリで制御できるWoT
出所 著者作成
〔1〕複数メーカーの製品を1つのアプリで制御
WoTの利点をさらに理解するために、ここで具体例を挙げて解説しよう。
例えば、IoTに関心が強いYさんが、家庭用電化製品をIoTで揃えたと仮定しよう。Yさんの購入した機器は、メーカーが提供するスマートフォン向けの専用の制御アプリで操作することができる。ただし、メーカーAの製品を制御するためにメーカーAが提供するアプリを、メーカーBの製品を制御するためにメーカーBが提供するアプリを、といった具合に、メーカー数と同じアプリをインストールする必要があり、Yさんはセットアップ(初期設定)時に面倒な思いをした。
もし、Yさんの購入した製品がWoT対応だった場合、Webのオープン標準技術を採用しているので、図2のように複数メーカーの製品を1つのアプリで制御することもできる。Yさん自身が開発しなくとも、対応製品やユーザー数がある程度多ければ、誰かが優れた制御アプリを開発してアプリストアで公開しているかもしれない。
この場合は、単にアプリのインストール回数を1回に減らせるだけではなく、複数の製品を連携させることもできるという利点もある。
例えば、次の一連の動作をするホームシアターアプリなどが考えられる。映画の再生開始ボタンを押すと、自動的にカーテンを閉め、照明を調整し、サウンドシステムとプロジェクタを起動し、再生リストの最初にある映画を再生するといった具合だ。
〔2〕オープン標準技術を利用することによるメリット
Yさんの製品がWoT対応ではない場合、次のような不幸なケースも考えられる。メーカーBは、IoTに挑戦するハードウェアベンチャーだったが、残念ながら倒産してしまったとしよう。倒産後、スマートフォン向けの専用アプリの配布が中止されてしまった。その結果、スマートフォンによって制御できていた照明器具をはじめエアコン、体重計、テレビなどが、スマートフォンで制御できなくなってしまった。
もし、WoT対応だったら、誰かが代わりに制御用のアプリを開発して公開してくれたかもしれない。